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ららマジ ノベライズ ~調律師とアインヘリャルの少女達~ 感想

※この記事は「ららマジ ノベライズ ~調律師とアインヘリャルの少女達~」の本編の内容に関する記述があります。
未読の方はご注意ください。



ゲームとしてのサービス終了後、突如立ち上がったノベライズ版のクラウドファンディング。

先月頭に到着して1週間ほど前に読了。
久しぶりにららマジのストーリーに触れて感情が昂ってしまったので読後の感想をまとめておこうと思います。

ららマジの優しさ

読み始めて改めて感じたのがららマジの世界観の優しさでした。
優しさという形容が正しいのかと言われると難しいのですが、今持っている言葉の引き出しの中だと優しさが一番しっくりきます。

器楽部員達が抱える「傷」として様々なエピソードが描かれていますが、そのいずれも本質というか根本的な部分は思春期であれば誰もが大なり小なり抱えるような苦悩や挫折、葛藤といったありふれた悩みじゃないですか。
それらを一つ一つちゃんと重大なものとして受け止め、真正面から描いてくれる姿勢がまず大きな優しさだなと。

そしてその「傷」を乗り越えるための「救い」。
この救いの扱いも優しいというか繊細で。チューナーが救いを与えるのではなく、ディスコードによって隠されてしまった救いを取り返すという筋書きになっているのがいい。
チューナーによって救われるのではなく、自分で手に入れた心の中にある救いを見つけ出してもらう、というこのバランスがすごく好みなんです。
傷がありふれた悩みだからこそ、救いを得るのはあくまで本人。その見失ってしまった救いもちゃんと自分の中にあるという筋書きがベースになっているのが本当に素敵。

そしてもう一つ、救いの内容が千差万別なところも大きな優しさだなと。
千差万別なのはそりゃそうなんですけど、具体的に言うと必ずしも悩みが解決するわけではないという点。必ずしも劇的な解決を迎えるわけではないという点。
ありふれた悩みに対して、「何か一つのきっかけで悩みが解決するとは限らない、そもそも悩みが解決するとは限らない、だけど一つの区切りをつけて前に進むことはできる」という解答を示してあげる救いの描写。
何かに悩むあらゆる人へのエールのようなこの「傷」と「救い」の描き方が私がららマジの一番好きなところと言っても過言ではありません。
ノベライズでもその部分はちゃんと残っていて、改めてららマジの物語に触れることができてよかったなとしみじみしていました。

「いばら姫」と「アマデウス」はららマジ始めた直後にこいつはやべえぞ……と思わされた名シナリオで、改めて読んでもその感動は色褪せませんでした。
先ほど「救いが劇的なものと限らないのがいい」と述べましたが、この劇的な救いがあったからこそ劇的じゃない救いが対比で輝いて見えるという側面もあると思います。
で、「どうにもとまらない」でまさに劇的でない救いが描かれていて、前2幕との対比でららマジの世界観の振れ幅の大きさというか懐の広さをここで強く感じました。

ということを思い出しながら読んでいました。
この最初の3幕があったからこそららマジが好きになったんだろうなと改めて感じました。

マランドリーノ

一番お気に入りのエピソード紹介をしようと思ったんですけど、これちょっと恥ずかしいですね。
というのもメインストーリーの軸が少女たちの悩みである以上、好きなエピソードや共感したエピソードを挙げるのって自分の胸の内を曝け出すような恥ずかしさがあるんですよね。

まあ喋るんですけど……(恥知らず)

第7幕「マランドリーノ」。
当時から一番好きなメインストーリーで今回改めて読んでもやっぱり一番と言っていいくらい好きなお話でした。
兄のようになろうと努力して、その兄に自分みたいにならない方がいいと言われ、何を目指していいのかわからなくなって。自分に似ているかもしれない人、自分がなりたい人はいても自分が誰なのかはよくわからないままで。
という凛先輩の苦悩、そういうことで悩むことってあるよねとめちゃくちゃ共感してしまった。
救いの中の退部届が吹き飛ばされるシーン。悩みに悩んで出した結論が夜空に吹き飛ばされて、少し肩の力が抜けたというか。
状況は多分大して変わってないんですよ。凛先輩の悩みは解決してない。だけど、悩みの大きさはちょっと小さくなっている。
「悩みが解決しなくても悩みが占める心の割合が小さくなることで少しだけ生きやすくなる」という結論がなんかぐっと来てしまって、ゲームで初めて読んだ当時からずっと好きなんですよね。

おわりに

本ノベライズの最終幕「Come As You Are」の最終盤。
学園を覆う結界内でヨルムンガンドと戦い無事に追い返すことに成功。しかし、グラウンドは浸水、校舎は崩壊。チューナーの片手も動かない。
最後の菜々美とチューナーのやり取りまで含めて、まるでららマジというコンテンツの今とこれからを暗示しているようで喪失感とそれを上回るような達成感と期待感を抱きました。

ゲームとしての展開はいったん終了してしまいましたが、こうしてノベライズやクラファン達成イベント、ポップアップストアなどまだまだ各種展開が続いているららマジ。
クラウドファンディングのページにも

今回のプロジェクトにご好評いただけた場合は、さらに続編のノベライズ企画も考えたいと思っております。

という心強い記載があったので今後の展開にも期待が増すばかりです。

ノベライズを読んでららマジ熱が再燃してきてしまったのでノベライズの続報が楽しみで仕方ないです。

どうかららマジの行く末が明るいものでありますように。



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