どぶさんの曲はそこまで悪くない

 どうも。霜月です。

 最近私はどぶウサギさん(dbu music)の曲にハマってます。CD買って聴いてます。
 原曲と同じようなメロディがシンセとギターでかき鳴らされる。とてもかっこいい。

 私も大きく影響を受けています。
『二色蓮花蝶 ~ Lotus Natural』が特に顕著。

酷評

 しかしそんなどぶさんの曲に対して、ネット上では電波?氏という方による酷評の意見(ただし15年前)がある。

 原曲超維持系ダンスロックアレンジ。最初から最後まで原曲メロをほぼそのまま音色を変えて流し、時々思い出したように構成をちょこっといじるというどぶウサギ氏のアレンジには、一時期この界隈でも賛否両論華々しかったように記憶している。
 改めてこの紅魔組アレンジを聴き終えての個人的な結論としては、何かのきっかけで東方アレンジに興味を持ったばかりの人は、とりあえず懐の余裕があれば買っておいてもいいけれど、他にいいものを買ってからにしたらどうか、というものだ。紅魔狂詩曲での氏の音色の選択のセンス、そして氏のアレンジ能力全般の感覚は致命的なまでに私の耳と合致しない。

 同じメロ+違う音色と違う響き、という組み合わせにより、原曲を通して漂う物悲しさや不安定さがかなり減殺されてしまっている。残響感を減らしたのも大きくマイナスに働いた。ラクトガールアレンジとルナ・ダイアルアレンジ、そしておてんば恋娘アレンジはその最たるものと評価せざるを得ない。おてんば恋娘アレンジの原曲との差は、同じメロを使っているのにここまで、と頭を抱えるほど、曲の空間的な広がりと情感、表現において残酷に現れている。加えて、ラクトガールは原曲にはないつなぎがマッチしていないこと、ルナ・ダイアルは導入部分が終わって直後の音の刻みを1音にしてしまったことも、つまりメロを徹頭徹尾同じものにしなかったことが、皮肉にも評価を下げる要因であった。
 明治十七年の上海アリスアレンジも上海紅茶館アレンジも、音色を変えた結果やはり全体的に平板になってしまい、もの悲しさがすっかりかき消えてしまった。
 ただ、オーエンロックアレンジでの、同じメロをただ速くしたような平凡な進行の中に突如として挿入された2分20秒からの10秒間、瞬間裏側が見えるような解釈は、進行として典型と言えるとはいえ、評価したい。

 こうして見ると、全体的に、同じメロをそのまま通して使う時の音色と構成の選択の危険性が如実に見える作品だと言わざるを得ない。すべきことをせず、余計なことをしてしまった。この一事は重く、私はこの作品を高く評価することは出来ない。

「弾奏結界 紅魔狂詩曲 Scarlet Rapsodia」電波?(再掲)

 原曲超維持系ダンスロックアレンジ。弾奏結界 紅魔狂詩曲 Scarlet Rapsodiaと同様、基本的に最初から最後まで原曲メロをほぼそのまま音色を変えて流し、時々思い出したように構成を少しいじるアレンジである。上記作品の私のレビューを参考にされるとより分かりやすいであろうが、幻葬旋律曲での氏の音色の選択のセンス、そして氏のアレンジ能力全般の感覚についても、やはり私の耳と合致しない。

 ドラムを強く入れ過ぎたりトランペットの音を妙にいじったりで原曲の空間的広がりと情緒がすっかり消えて退屈なギターとドラムがただ流れていく幽霊楽団アレンジ、原曲と同メロでべったりしたトランスシンセ音を使ったので原曲の緊張感がなくなったままギターが空しく響く広有射怪鳥事アレンジ、同じくべったりしたトランスシンセ音のせいで原曲の哀しさがきれいさっぱり取り払われてただノリがよい曲に成り下がった墨染アレンジ、どれをとっても、原曲からなくなった要素に代わるべき何か、アレンジャーの自分なりの解釈が付加されていない。ネクロファンタジアアレンジなどはただ速くしてギターとシンセ音とドラムを突っ込んだだけではないだろうか。

 敢えて明言するが、原曲に似たアレンジを聞きたいという需要さえもこのアルバムでは充足できないのではないかと思うほどに、残念な内容である。原曲を前にしていったい何をしたいのか、テクニックはあるのだろうから、もっと自分の解釈というものをしっかり立ててアレンジすることを切に希望したいアルバムであった。

「弾奏結界 幻葬旋律曲 Necromanza」電波?

 原曲超維持系ロックダンスアレンジ。弾奏結界 紅魔狂詩曲 Scarlet Rapsodiaや弾奏結界 幻葬旋律曲 Necromanzaでは基本的に最初から最後まで原曲メロをほぼそのまま音色を変えて流し、時々思い出したように構成を少しいじるアレンジであったが、弾奏結界 夢幻夜想曲 Eternal Nocturneでは自分の解釈を織り交ぜての展開を試みた意図が、不十分ながらも垣間見えた。本作品では、上記各作品の私のレビューも参考にされれば対比がよく分かるだろうが、残念ながら前2者と同様、アレンジャーとしての解釈が余り示されていない消化不良のものとなってしまっているようだ。

 魔法少女十字軍アレンジでは原曲のバックで駆け回る軽いドラムやビートがすっかりなくなり、代わりに入ったものは単調なギターとロック正調的ドラム。魔女達の舞踏会アレンジでも、単純に速くしてロックギターにべったりシンセ、ドラムを突っ込んだだけ。曲のタイトルを「舞踏」ではなく「舞闘」としたところにアレンジャーとしての解釈があることは分かるのでこれを無碍に否定するものではないが、それにしても何でもロックにしてギターを唸らせシンセを張り付かせドラムを打ち鳴らせばいいというものでもなかろう。
 アリスマエステラアレンジでは冒頭一番大切なメロのところでシャカシャカと目立ちすぎるドラム、そしてその後典型的ロック風味に入りやはりドカドカと単調に響くドラムが耳障りである。the Grimoire of Aliceアレンジも単純なロックアレンジで、メロをそのままギターに置き換えてドラムを打ち鳴らしていったい何がやりたかったのか、理解に苦しむ。

 この作品では、ただ闇雲にロック調にするだけではアレンジとして立ち行かないということが浮き彫りになったのではないかと思う。更に言えば、原曲と同じメロであるがゆえに、ドラムパートの緻密さ、繊細さ、独特さでの格差が大きく出てしまっているという難点が最後まで抜けなかったように思える。弾奏結界 夢幻夜想曲 Eternal Nocturneで垣間見えた工夫を、味付けをもっともっと凝らして欲しかった。つくづく残念である。

「弾奏結界 追憶鎮魂曲 Nostalgic Requiem」電波?

確かに悪いが

 どぶさんの全部の曲が「最高!」と言われると、そうではない。
 特に「千年幻想郷 ~ the Brain of the Moon 」と「少女幻葬戦慄曲 ~ Necro Fantasia 」で顕著だが、サビ前の一瞬の溜めが削除され、そのままBメロなどからサビに移行するアレンジとなっている。
 「輝く針の小人族 ~ Descendant of the Hero」においても、サビのZUNペットがかき鳴らす高音が控えめになっている。
 音色の変更に文句はあまり言わないが、原曲の緊張感が欠けてしまうのは個人的に残念だ。特に曲の演出方面の魅力が削がれているように感じる。

 しかし、だ。
 引用元で電波?氏が述べていた「原曲と同メロでべったりしたトランスシンセ音」と「原曲の緊張感がなくなったままギター」「何でもロックにしてギターを唸らせシンセを張り付かせドラムを打ち鳴らせばいいというもの」こそ、どぶさんの曲の魅力だろう。

 どぶさんの曲の特徴は、原曲のZUN氏が作る曲にはほぼ当てはまらない特徴達だ。近年でこそZUN氏はギターをかなり多用するようになったが、ロックと呼ぶほどギターを使っているわけでもない。シンセサイザーもたまに使うが、ほんのり使用するくらいでどぶさんの曲ほどは使わない。

 迫力などはアレンジたるもの原曲に一歩劣る。それはそう。
 だが、原曲にはない疾走感や別の力強さをどぶさんの曲は持っている。ZUN氏の曲で響くトランペットが気持ちいいように、どぶさんの曲で響くシンセサイザーは気持ちいい。
 少なくとも、電波?氏ほど酷評する必要はないと思う。

 現代の東方アレンジでは原曲を崩すことが当たり前と化し、むしろ原曲崩壊させて曲名も原曲から変えて初めてアレンジとなる、という印象が強い。昔からかも。
 そんな時代だからこそ、どぶさんの超原曲主義のアレンジを大切にしたい。

ちなみに

 高速曲中心、原曲完全維持系原曲音色アレンジ、オリジナル入り。従来、ZUN氏の自曲アレンジは徹頭徹尾原曲維持、しかもメロディラインをほとんどいじらないものとなっており、新しい解釈というものはほとんど見えてこない。しかも、音色を変えたものの原曲にある迫力や幻想が減殺されてしまうという例も散見される。彼の発言や、敢えてやらないのか出来ないのかなどの事情は措いて、結果として我々が聴くことのできる作品のみに焦点を絞って誤解を恐れずに言うならば、物足りないという表現では足らず、ことアレンジという点においては大胆な音使いやアレンジという分野での表現力に欠け、技術が乏しいと思っていた。しかし、このアルバムでは、アレンジ曲に従来よりは味付けが施されている。そしてそれが当たっている。

 このアルバムのアレンジ曲は3つであるが、そのうち最も味付けがされているのがネクロファンタジアである。冒頭に一層不気味さを増す音色で原曲中途を切り取って入り、3分半過ぎから約30秒弱の原曲メロを取り混ぜつつもオリジナルで進行するピアノの高速パッセージは非常に彼らしい組み立てである。Demystify Feastのアレンジはそれぞれの音の輪郭が原曲よりはっきりしており、発狂ピアノが2周目に入ってもはや限界を超えるところが否応なく盛り上がりを加速する。東の国の眠らない夜アレンジは、上で述べたネクロファンタジアと同じようなピアノ進行が2分35秒あたりから少しだけ見られるが、総じて原曲メロのなぞりが多い。

 総合的に見れば「原曲を少し弄った」程度であり、私個人のアレンジについてのレビュー基準からすれば、もっともっとアレンジャーの意図と挑戦を見せて欲しいという思いを抱かざるを得ない。物足りない感は払拭されない。「作曲者自身のアレンジ」という観点から期待して買うと、やはり残念に思うのではないだろうか。しかし、アレンジ技術が全くないわけではないことは判明したので、今後は、せっかくオリジナルではなくアレンジという形式でCDに入れるならば、オリジナルの素晴らしい出来と比してトラック数補充とすら邪推してしまうような原曲そのままのアレンジを入れるのではなく、より大胆に、贅沢を言うならば作曲者しかできないような解釈を加えてくれることを期待している。それは余人にはできない、確実に作曲者の特権であるのだから。

「大空魔術 ~ Magical Astronomy」電波?

 この電波?氏であるが、なんと原曲のZUN氏のセルフアレンジにさえこのような評価をつけている。原曲者の「徹頭徹尾原曲維持」「原曲を少し弄った程度」のアレンジを批判しているように受け取れる。
 これは……


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