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第2部

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第29回~
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#少子化

【29】性差は無くすべきなのか? 『ジェンダーと脳』批判(1)

 今回からが第2部である。これまでとは別のアカウントで書くことにしたのだが、これは、一つ目のアカウントが男女の生物学的な差異に焦点を当てた内容だったのに対し、ここから先は「その上でどう考えるか?」という思想的な話を中心とした、かなり性質の違うものになっていくからである。興味を持ってくれる人たちの層も多少違ってくるのではないかと思う。また、noteは仕様上、記事を増やすほど過去の記事が読まれにくくなるので、これまで書いたものが埋もれないよう一区切りつけた、というのもある。  

【30】「男か女か」という二分法の必然 『ジェンダーと脳』批判(2)

〔前回の続き〕   ダフナ・ジョエルの著書『ジェンダーと脳』、前半にあたる第1部と第2部ではこれまでとりあげてきた「モザイク脳」論について詳しく解説されており、ここまではよい。だが後半にあたる第3部と第4部では「ジェンダーというのは幻想であり、だからジェンダーのない世界を目指すべき」というラディカルな主張が展開され、読み進むにつれて「いや、そこまではついていけない… 」という気持ちになってくる。  人は男性も女性も個人ごとに多様な内面を持っているので「男性(女性)はこういう

【32】男性性も女性性も実在する 『ジェンダーと脳』批判(4)

〔前回の続き〕  2つ目の論拠からも、「幻想」だと言えるのは ① の意味での「ジェンダー」のみだろう。「脳は様々な外的要因の影響を受けて変化する」とは言っても、脳にどこまでも無限の可塑性(かそせい)があるとは到底考えられない。変化できる幅には限界があるだろうし、変化しやすい資質もあれば、しにくい資質もあるのではないだろうか。  個人レベルで考えても、人の内面というのは、生まれ持った資質がまずベースとしてあり、それに様々な外的要因が加わって形成されていくもの、というのが一般的