Vtuber「犯罪学教室のかなえ先生」とまつ毛美容液「エマーキット」にまつわる問題
■まつ毛美容液の問題点
▼健康被害(副作用)のリスク
この動画において「エマーキット」がリスト入りしている。動画を見ていただいた方が早いとは思うのだが、「まつ毛美容液」の何が問題であるのか、ざっくりと説明をしていきたいと思う。
まつ毛美容液は、ルミガンと呼ばれる緑内障の治療薬(点眼液)の副次効果から派生したものと指摘されている。
僕は化学や薬学の専門家ではないのであくまで話半分に捉えてほしいのだが、ルミガンの副次効果(副作用)としては、色素沈着、目の周りの炎症・痒みなどがある。
その中に「まつ毛の増毛効果」も含まれていたと、そういう話なのだろう。
要はバイアグラみたいなものと考えればわかりやすい。バイアグラは元々心臓疾患(狭心症)の治療薬として開発された薬だ。
話を戻すと、このルミガンに含有される成分のうち「プロスタグランジン」と呼ばれる成分がまつ毛に対して増毛・育毛効果を及ぼすのだとされている。ただもちろん副作用もあって、それが色素沈着や炎症・痒みなどと言ったものらしい。
※僕は薬剤師でも医師でもないので、この点について断定は避けるが、その点はご了承いただきたい。
外部医薬品として販売・処方されるまつ毛育毛剤としては「ビマトプロスト」や「クラッシュビスタ」などがある。
かなえ先生と一緒に配信を行っていた「大蔦エル」が話題に出していた「海外のまつ毛美容液」は恐らく「クラッシュビスタ」のことであろう。一方の「ビマトプロスト」は医師が処方してくれることがあるものらしい。この辺りのことについては情報の精度が低いため、詳しくはわからないが。
実際に「エマーキット」に含有されている育毛効果がある(と思われる)成分は「イソプロピルクロプロステネート」と呼ばれる「プロスタグランジン」の類似物質だ。これも曖昧で申し訳ないのだが、分子構造が「プロスタグランジン」と酷似しており、化学や薬学の世界では事実上同一の物質として扱われているらしい。
今のところ日本では規制対象になっていないが、米国においてはこの成分を含有する化粧品によってトラブルが発生し、訴訟沙汰にまで発展している。結果としてFDA(アメリカ食品医薬品局)によって米国のほぼすべての州で、イソプロピルクロプロステネートは規制対象となっている。いつになるかはわからないが、日本においても今後同様の規制が行われる可能性は高いだろう。
また参考までに厚生労働省が発布している資料(PDFファイル)へのリンクも掲載したい。興味のある方はご覧いただきたい。
▼「エマーキット」には「リコール」された経緯がある
「エマーキット」について特筆すべき点として、2021年9月9日にリコール対象となっていることが挙げられる。原因は上記のイソプロピルクロプロステネートを成分表記していなかったことが原因だ。
下記にリコール概要についてのサイトを啓示するので、興味のある方はご覧になってほしい。
いずれにしても「本当にまつ毛が抜けて困っている」のなら、適切な診療科の医師に相談するのが良いだろう。美容皮膚科などが適切だと考えられるが、薬品には体質との相性もある。まずはかかりつけ医に相談し、診察・処方を受けることをお勧めしたいところだ。
■クーポンについての問題点
▼数か月続く「本日限り」のクーポン
かなえ先生は5月24日頃、「かなエル」名義で「エマーキット」とのコラボクーポンを「本日限り」と銘打って、当該サイトへのリンクをポストしている。
このポストなのだが、現時点でもポストが残っており、リンク先のサイト末尾からAmazonの購入ページに繋がる状態が保持されている。
つまるところ「5月24日からずっと『本日限り』のクーポンを配り続けている状態」が続いているのだ。僕はまつ毛美容液に用がないので購入はしていない。このため実際には割引が適用されないのかも知れないが、それならそれでなおのこと悪質である。
僕は法律の専門家ではないので断定はできない。このため対応としては消費者庁に報告するにとどめたが、これは「不当景品類及び不当表示防止法」第五条に抵触する恐れがある。
この問題については、上記サイトの「Viagogo」の事例に該当する可能性が高いかもしれない。
※かなえ先生へ
消費者庁にはスクリーンショット及び当該ポストhtmlファイルも添付して送付しておりますので、「今更消してもなかったことにはならない」です(笑)
■かなえ先生の「問題発言」
「かなえ先生」と「大蔦エル」が「エマーキット」について言及したのは以下動画の22分20秒頃からである。
大蔦エルは特に当たり障りのないPR文言を発しているが、かなえ先生側はかなり問題発言が多い。一つ一つ取り上げていきたいと思う。
▼「国民生活センターが問題ないとしている」
より詳しく発言を切り抜くと
という内容だ。
それでは実際に「国民生活センター」の当該サイトをご覧いただきたい。
少なくともこのサイトないにおいて、「固有商品名を指して特別これはいけない・これは問題ない」とする記述は存在しない。
国民生活センターは「エマーキット」についてその品質・効能・安全性について一切保証していない。これは他の「まつ毛美容液」に関しても同様だ。国民生活センターは「まつ毛美容液」を標榜する製品「すべて」について注意喚起を行っているのだ。
ではかなえ先生は、何を根拠として「問題なかった」と口走ったのだろうか。ぜひお答え願いたいものである。
続いて関連資料を提示する。
これは国民生活センターの調査レポートだ。
前述の通り、特定の製品について明示していないのもそうだがこちらに掲載されている画像をよくご覧いただきたい。
「エマーキット」がしっかりと撮影されているのだ。
これは国民生活センターの担当者から言質を取ったわけではないので断定はしない。断定はしないが、一つの状況証拠として「エマーキット」が国民生活センターの調査対象に含まれていたことは間違いないだろう。
その上で「エマーキット」を名指しして、国民生活センターが「何か」を言っているわけではないのだ。はっきりと言えるのは「まつ毛美容液」というカテゴリー製品全体の問題であり「エマーキット」もその中に含まれるという「事実」だけである。
▼「目の印象だけで(中略)この人ちゃんとしてるんだなって」
あくまで一般論なのだが、まつ毛がばっさばさなだけで「ちゃんとしている」と判断するものなのだろうか。その心理学的根拠はどこにあるのだろうか。
確かに人の第一印象は見た目が七割というのは聞いたことがある。また興味深い例として日本人は目で感情をやり取りするが、欧米においては口元で感情をやり取りするなどという言説(だから海外ではコロナのパンデミック発生時マスクが嫌厭されていたとか)も聞いたことがある。
だがそこに、まつ毛の量って関係あるか……?
これはかなえ先生の悪いクセだ。仮にも「学者」「先生」を名乗りながら、何かを語る時に、学術的論拠を提示しない。ひどい時では「面倒だから論文読まなかった」という信じられない発言を配信内で口走っていたこともある。
これが法に抵触するかと言えばノーだろうが、かなえ先生が「信用に値しない人物である」とする一つの根拠として挙げさせてもらった。
▼「13年間変わらない処方」
これについてはまず「処方」という言い回しが問題となるだろう。「エマーキット」はあくまで「化粧品」だが、「処方」という言い回しからは、(あくまで一般論ではあるが)「医薬品」を連想させる。
これは情報の受け取り手に対して誤解を招く可能性があり、かなえ先生は大いに反省すべきかと思う。
また「13年間変わらない処方」とのことだが、実際のところどうなのだろうか。
確かに「中身」は変わっていないのかも知れない。
しかし思い出してほしい。「エマーキット」は成分の表記漏れによってリコールが発生し、少なくとも「表記上の成分(かなえ先生が言うところの処方)」は変わっているのである。
揚げ足をとるような形になって恐縮ではあるが、これも情報の受け取りてに対して錯誤を招く言い方ではないか。それがかなえ先生のスタイルと言えば僕からは何も言えないが、仮にも「先生」を自称する人間としてどうなの、とは思う。
▼国民生活センターの回答
かなえ先生が国民生活センターの名前を出して「エマーキット」の品質を保証する発言を行っていた件について、僕は国民生活センターにメールで問い合わせた。
これは僕も驚いたのだが、翌日国民生活センターから電話にて回答があった。
いくつか開示できない(濁さないといけない)内容もあるが、簡潔にまとめると以下の通りである。
以上、要約である。
言い回しについて多少「もやっ」とした方もいるかも知れないが、まあ、同法人にも色々と事情があるのだろう。
ECサイトや動画、SNSなどによるPRの数に対して、人手は限られているのである。
▼おまけ
この動画において僕が最高におもしれーなと思ったのは、大蔦エルの以下の発言である。
「かなえ先生って心理学とか詳しいから(笑)」
お分かりいただけただろうか?
かなえ先生は大蔦エルから「心理学の専門家」と認識されていないのである。
それに気づかなかったのか、それともうまくあしらえなかったのか。どちらにしてもコミュ障が過ぎますよ。女の扱い苦手すぎでしょ。
車の運転とか下手そう(笑)
■販売元企業「水橋保寿堂製薬」の対応
▼送付した質問の内容
現在回答待ちの状況ではあるが、送付した質問内容だけ提示しておこうと思う。
水橋保寿堂製薬 ご担当者様 突然のメール失礼いたします。
この度は、御社製品である「エマーキット」について、Vtuber「犯罪学教室のかなえ先生」による公告・商品勧奨についていくつか疑義を持ったため、その点について確認をとらせていただきたく、メールをしたためております。
問題となる「かなえ先生」の発言は以下アドレスの、22:20秒頃となります。
https://www.youtube.com/watch?v=T7HkGkK_NUA&t=2s
1.「処方」という言い回しをすることで、本来化粧品である「エマーキット」を医薬品と消費者が誤認する可能性がある。この点について御社の見解をお伺いしたい。
2.「13年間変わらない処方」とかなえ先生は発言しているが、「エマーキット」は2021年9月9日、リコール対象となっている。リコール内容は成分表記についての誤記(記述漏れ)であり、実質的に含有されている成分内容は変わっていなくとも、表記上の成分内容は変化している。
これは虚偽または誤った情報の告知と言えるのではないか。どのような経緯でこのような発言に至ったのか御社は把握しておられるのか。御社の見解をお伺いしたい。
3.「かなえ先生」は「まつ毛による被害調査報告によってまつ毛美容液の使用を疑われてます。もちろん、このエマーキットは問題なかった」と発言している。しかしながら2019年8月、国民生活センターが発布した「まつ毛美容液の健康被害に関する注意喚起」において、当該WEBサイトにおいて「エマーキット」の効能および安全性を保障する文言は確認されていない。
上記について、事実関係を国民生活センターに確認したところ、「エマーキット」について国民生活センター効能および安全性を保障していないとの回答をいただいている。また国民生活センターが効能および安全性について確認をしている製品であっても、個別の製品について国民生活センターの名称を広告に使用することを、同センターは許可していないとの回答もいただいている。
またこのようなECサイトやYoutube、SNSなどにおけるPRにおいて、国民生活センターの名前が無断で使用されている場合に個別の対応を行うことは原則ないという旨の返事もいただいているため、この件について警告がないことを理由に、かなえ先生の上記発言が「問題ない」とすることはできないと思われる。
「かなえ先生」がどのような経緯でこのような発言に至ったのか御社は把握しておられるのか。国民生活センターの名前を無許可で使用していること、虚偽もしくは錯誤のある製品紹介についてどのように理解をしておられるのか。御社の見解をお伺いしたい。
4.「かなえ先生」の下記ツイートおよび https://x.com/towanokanae1984/status/1793874425387061612
下記アドレスのクーポンについて確認をさせていただきたい。’(アドレス略)
当該クーポンについて「本日限り」との記載があるが、5月24日時点にてポストされたかなえ先生の告知は現時点で削除されておらず、クーポンも閲覧可能、サイト末尾のリンクから「エマーキット」が購入可能な状態となっている。
消費者庁に報告済みではあるが、このクーポンについて「本日限り」と表記するのは消費者に対する優良誤認(錯誤)を招くのではないか。御社の見解をお伺いしたい。
6.上記すべての項目を踏まえて、「かなえ先生」による商品PRは不当景品類及び不当表示防止法第五条に抵触する可能性があるのではないか。御社の見解をお伺いしたい。
以上となります。
大変不躾な問い合わせとなりますが、ご回答をお待ちしております。
夜空睦(よぞらむつみ)
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