ピースご飯の思い込み

ピースご飯が好きだ。
青臭さと甘さが混ざった香りが好きだし
噛んだ時の食感も好きだ。
青臭さとほんのりの甘さと少量の塩味が口の中で混ざり合って、飲み込むと同時に香りが鼻に抜けて行く。
何度も感じたい幸福感。

が、その大好きなピースご飯が食卓を飾る事はもう何年も…いや、十数年なかった。

何故なら、ある日大きくなった子供たちの口から「ピースご飯は好きじゃない」と、何の躊躇いもなく告白されたからだ。
君も?君もなの?

あれからパタリと作らなくなった。

ご飯は美味しい物を食べたい。
ご飯は好きな物を食べたい。
 
子供の頃、サツマイモご飯が嫌いだった。
サツマイモは大好きだが、お米と一緒に炊き込まれたサツマイモの喉越しが苦手だった。 
一緒に炊き込まれたサツマイモだけど、お米と一緒に食べず、サツマイモ単体で食べたものだ。 
子供らの気持ちが理解できた。
だから作らなくなったのだけど。

先日テレビでピースご飯を見た。
ピースご飯、食べたいな…とつい溢れた。

え?ピースご飯、好きなの?
パートナーは驚きと共にそう質問した。

うん、好きだよ。大好き。
でもあなた、好きじゃないでしょ?
だから、作らないの。

ちょっと待って、僕嫌いじゃないよ。
なんなら、好物だよ。

私は十数年越しに、大きな勘違いと思い込みをしている事に気づいた。
何故か、子供は好きじゃないのをパートナーもひっくるめて、私以外は全員ピースご飯が苦手なんだと決め込んでいた。

人の記憶はなんていい加減な事なのだろう。
勘違いと思い込みの記憶は、年月を増すごとに確固たる真実になり、そこに関して疑うことなど、1ミリもなかった。

私たちはそうやって、悪気なく、当てにならない記憶を元に、誰かを見ている事が沢山ある。

数日後、めでたく我が家の食卓にピースご飯が登場した。
そして、つい、食べ過ぎてしまった。

嗚呼、美味しい
鼻から抜ける香りと共にため息が漏れた。

yoyoko




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