帝王切開も立派な出産と言うけれど。

私は、母親の腹を切って生まれました。

いわゆる「帝王切開」での出産。予定日よりも10日早く、普通分娩の兄よりも小さく生まれてきました。

母親の腹には横に傷跡がありました。

「これはどうしたの?」と聞けば、
「アンタが生まれた時の傷だよ」と言われました。

祖父母にも
「お前は母親の腹を切って生まれたんだよ」
と言われて育ちました。
その事実は確かに真実なのだけど、
それはまるでいけないことのような、
悪い事をしてしまったかのような、
そんな言葉たちでした。

その頃はちょうど、父と一緒に洋画にハマっていて
メン・イン・ブラックやマトリックスを
分からないながらに観ていました。
どこかの何かの映画で
エイリアンが腹を裂いて産まれてくる様子がありました。
「ヨヨと同じだね」
無邪気に言った父の言葉は、あまりに衝撃でした。

母とは性格が合わず、そのことも相まって
母からはエイリアンと言われました。


私が生まれてから20数年。
世間は変わり、帝王切開も立派な出産と言われている現代。
きっとあの頃より世論も出産育児の考え方も変わっていっている。

でも、残念ながらうちの母親はまだ生きている。
うちの祖父母も生きている。

それはつまり、また、私みたいな子どもが生まれて
祖父母や曾祖父母に私みたいなことを言われる子どもが
この日本のどこかにいるかもしれないということ。
その数は少なくなっていようが、
ゼロでは無いだろうということ。

どうか、小さな小さな子どもに聞かれたら、
腹を切った事実だけでなく、
生まれた喜びを必ず伝えて欲しい。

必要のない心の傷を小さな子どもが抱えないように
周りの大人に不幸だと言われたら
すぐに親が反論してほしい。
笑顔で諭すようではなく、
怒って声を荒らげて全力で。
子どもの心を守って欲しい。

私のように、人間を諦めて
エイリアンになってしまう子どもが
増えませんように。

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