洛中図

京都人の考える「京都」の範囲って?

月曜深夜にやっている「月曜から夜ふかし」という番組はいわゆる”地方ネタ”が多くて結構おもしがって見ているんですが、ちょうど今週は「京都」について取り上げられていて、様々な面で良く言われている京都をあえてdisる(批判する)という内容でした。(番組の内容はここらへんでまとめられてます)

京都は「女性が使うとかわいい方言ランキング」「付き合いたい都道府県ランキング」で1位、「都道府県別郷土愛ランキング」で3位、はたまた京都市が自ら「日本に、京都があってよかった」なんていう自画自賛ポスターを市内に掲示しちゃうようなよくも悪くも自己・他己評価ともに高い県民性だということは言えると思います。

今回の番組のなかでひとつ面白い現象があって、いわゆる「京都出身タレント」が出てきたときにTwitter上のTL(タイムライン)で

「○○は京都出身じゃない」

という反応を見せたユーザーが多く見られたんです。

自分自身も京都隣県に住んでいた時に似たようなセリフを聞いたことがあったので、彼らのそのツイート真意についてここ数日考えていました。

まず、いわゆる「京都出身タレント」の中で「○○は京都出身じゃない」と言われる代表格として、グラビアアイドルの安田美沙子さん、AKB48の横山由依さんなんかは、在京キー局の全国ネットの番組でも京都弁を使っていたりして、京都弁キャラとして定着している感がありますが、当の京都人にとって、彼女らは「京都出身じゃない」らしいのです。

安田美沙子さんは宇治市、横山由依さんは木津川市と、関西以外の人は分かりづらいと思いますが、いずれも京都市の南部に位置する地域出身の方で、彼らにしてみれば「半ば奈良の人」。(同じ理由で教徒の大学生の間では同志社大・京田辺キャンパスは奈良扱いされているw)

では、果たして彼らにとっての「京都」とは一帯どの地域を指すんだろうか?という疑問が湧きます。

話を聞いてみると、市内でずっと暮らし、育ってきた”純粋培養”の京都人にとって「本当」の京都は、京都市内の中でもごくごく一部らしく、中京区、上京区、下京区と北区の一部のエリアだという認識があるということでした。

確かに、中京区には京都市役所が、上京区には京都府庁が、下京区には玄関口の京都駅がそれぞれ絶妙なバランスで存在し、北区はそれら京都中心部に通勤通学する人たちが暮らすベッドタウン、高級住宅地となっています。

つまり、全国から見た広義の京都=京都市とその周辺、狭義の京都=京都市である一方、京都人にとっては広義の京都=京都市、狭義の京都=中京区、上京区、下京区+北区であるという意識のズレが見られるようなんです。

現に山科区や伏見区に住む人が京都中心市街地に行くことを(同じ市内にもかかわらず)「京都に行ってくる」と表現する場合も多い(らしい)。

そこで思い出されるのが、京都市中心部を指す言葉としての「洛中」というワード。京都人の指す「京都」はつまり「洛中」であるというふうに言い換えられます。

「京都十代、東京三代、大阪一代」(その土地の人間となるのに、京都は十代かかるが、東京は三代、大阪は一代でよい、十代住み続けて、はじめて京都人として認められる)」

という言葉があるように、古くからこの「洛中」に住む京都の人々は前述のような持ち前の県民性も相まって、それなりの自負を持ちながら暮らしているということなんだと思います。だから、京都人が認める”京都出身”というハードルは高く厳しい。半端に東京で京都弁を話したからって簡単には認めてくれないのです。

ちなみに、この「洛中」の範囲というのは、諸説あり、豊臣秀吉が外敵に備えるため、また鴨川の氾濫から街を守るために築いた「御土居」と呼ばれる土塁(土を積み上げた堤防)の内側だとされている説や、旧京都市電外周線(東山線、北大路線、西大路線、九条線の総称)と呼ばれる、北大路通、西大路通、九条通、東大路通に囲まれた範囲を指すという説などがあるそうです。

今回調べていく中で、「洛中」という概念のみが多くの京都人の中に今も生き続けているっていうことがなかなか歴史ある京都らしいエピソードだなと感じました。

一方で、洛南、洛北という呼び名は高校の名前として現役ですし、洛西ニュータウンという地域名も存在するなど、洛中の外側にあたる地域についてはバリバリの「生きた」言葉として明確に残っています。

そんな対称的な感じがなんとも不思議な感じがいかにも京都という街の奥深さを物語っているようで面白いですね。

こういった背景を踏まえて、もう一度、秋の京都を散策したくなりました。(終わり)

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