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Negiccoは「ダイニチの石油ストーブ」になるべき(前編) ~48グループの新潟進出について~

きのう開催された「AKBリクエストアワー セットリストベスト」でAKBグループの新しいグループ「NGT48」が結成、今年10月に専用劇場がオープンすることが発表されました。(ナタリー記事) 

新潟といえば、「Negicco」や「RYUTist」など、地元を拠点とするアイドルグループが以前から活動し、ファンや市民に根付いている街だと言えます。 

奇しくもNGT48の結成が発表された同じ日、都内のライブハウスLIQUIDROOMではNegiccoがライブイベント「Negicco at LIQUIDROOM Road ofNegiiiiii ~Negicco One Man Show~ 2015 Winter」を開催、全国ツアーの日程が発表されました。(ナタリー記事) 

実は新潟よりも先に持ち上がっていた「SPR48」計画

AKB48グループは言わずと知れた東京・秋葉原を活動の拠点とするAKB48をヒエラルキーの頂点とし、日本各都市に姉妹グループ(通称:支店)を多く抱えています。名古屋・栄のSKE48、大阪・難波のNMB48、福岡・博多のHKT48といった具合に、各地域の最も大きな都市の中心部に専用劇場を構え、公演を行うスタイルとなっています。2011年に福岡・博多にHKT48が結成されて以降、次の48グループが一体どの都市になるのかということはアイドルファンの中でも話題になっていましたが、もっぱらの噂だったのは北海道・札幌のSPR48でした。実際にAKB48グループの秋元康総合プロデューサーは昨年9月にSPR48の誕生について言及しています。そのような経緯がある中で、なぜこのタイミングで「新潟」なのか?という疑問を解き明かしていきたいと思います。 

「地方創生」の旗の下で誕生することになった?NGT48

もう一度、新潟・NGT48について詳しく見ていくと、

“昨年12月ごろから、「新潟の活性化のために」と、地方創生に携わる開発業者からオファーが届いた”“ディベロッパーから「AKBの文化を広めたい」とのオファーがあった”

というコメントが表に出ており、AKB48グループ側からの話というよりは、「向こうからの打診に乗った」という経緯が正しいようです。新潟を選んだ理由は単に札幌よりもグループ立ち上げの条件が良かったというビジネス上の理由だけのような気がします。それにしても「地方創生」といえば、安倍内閣が現在掲げている重要施策のひとつ。なんとなく「自民党=秋元康」という関係という大人の事情の香りがそこなかとなくしてくるのは気のせいでしょうか…。 

 地域に育てられた地元生まれの「新潟発アイドル」

最初に述べたように、新潟には既に地元密着型のアイドルグループが多く存在しています。その中でも、人気・実力ともに突出している「Negicco」と「RYUTist」は、新潟のアイドルシーンを語るうえで欠かせないアイドルグループでしょう。

 <長い下積み時代を経てブレイクの兆し「Negicco」>

ローカルアイドルの急先鋒と言われる「Negicco」は、その名の通り「ネギ」をテーマにした3人組ユニットで、地元名産ネギ「やわ肌ねぎ」のPRキャンペーンのために2003年に結成され、その後の紆余曲折を経て、2011年にタワーレコード社長・嶺脇育夫氏の肝入で立ち上げた自社アイドルレーベル「T-PaletteRecords」の第1弾アーティストとなりメジャーデビュー。同郷のサウンドプロデューサーconnie氏のサポートも相まって、昨年12月にリリースしたシングル「光のシュプール」はオリコン週間ランキング5位を獲得するなど、今最も勢いのあるアイドルグループのひとつです。 


<地域活性化を掲げる正統派ローカルアイドル「RYUTist」>

「RYUTist」は、新潟県下において最大の繁華街である新潟市中央区・古町を拠点に活動を行っている4人組ユニットです。地区内に立地する「国際音楽エンタテイメント専門学校」がオーディションを実施し2011年に結成。古町の活性化を掲げ、ライブハウス「新潟SHOW!CASE!!」を拠点にライブ活動を行っています。一昨年の「アイドル楽曲大賞2013」インディーズ/地方アイドル楽曲部門では、同グループの2ndシングル「Beat Goes On! ~約束の場所~」が第2位を獲得し、メンバーのアイドル性だけでなく、高い楽曲性も評価されています。


空挺部隊による落下傘作戦の如きAKBグループの新潟来襲

このような地域密着の「ボトムアップ型」アイドルグループに対して、AKB48グループが今まで取ってきた手法というのは、対極の「トップダウン型」のアイドルグループだと言えます。AKB48の運営手法やノウハウをテンプレートとして、流通業界で例えれば「他店舗化」による「チェーン展開」が進められてきました。(詳細についてはチェーンストア理論をご参考下さい)

そしてヒエラルキーの頂点とするAKB48の有名メンバーを各支店に配分。人気の底上げを図るとともに、各支店で生まれた「おらが街のスター」をAKB48本体に還流させるというサイクルによって知名度の拡大を図ってきました。 

複数のアイドルグループを成立させる地勢的条件とは?

今回のNGT48に一番近いと思われるのは、48グループの中で最も後発となったHKT48の例が挙げられると思います。HKT48結成以前から福岡ではLinQやHRといったローカルアイドルがイベントや地元メディアへの露出を行ってきましたが、HKT48結成以降、それほど大きくはない地元メディアの「アイドル枠」を奪い合う形でそれぞれのグループが冠番組や地元制作番組のレギュラー出演などを持ち、互いにしのぎを削っている状況となっています。現在では、「千年に一人の逸材」というフレーズで話題となった橋本環奈率いるRev. from DVLも頭角を現してきています。

このようなアイドルグループの乱立が起きながらも破綻せずにここまでこれているのは、福岡という九州最大の都市における巨大な人口と経済の集約があるからであり、実際にこれらのアイドルグループのメンバーの多く、またアイドルファンは九州全域から集まっていると言われています。 

翻って、新潟の例を見てみると、一つの県にもかかわらず、北陸地方・長野県と接する上越、群馬県・福島県と接する世界的な豪雪地帯である中越、県都・新潟市を擁する北部の下越と県域が非常に大きく、経済的・文化的に異なっています。

(出所)Mapion(http://www.mapion.co.jp/)

また、HKT48が立地する福岡県と異なり、立地する地域を代表する拠点都市ではない、大規模経済圏と人口を持っていないという地勢的に不利な条件があります。(下記表を参照)

そのため、複数のアイドルグループを成立させるほどのキャパシティが狭義の新潟(新潟都市圏)や新潟県域には持ち合わせていないということになります。

巷の意見では、

Negiccoのファンは48グループのファンとかぶらないよ

という声が出ていますが、それは本質ではありません。

アイドルグループは定期的なライブ公演はもちろんのこと、イベントやメディア露出なども活動に含まれます。このよう活動についても上記で説明したような県内での限られた需要に対して、彼女らアイドルタレントの供給過多が進めば、ライブハウスに行けば見れるけど、街のイベントではめっきり目にすることが出来なくなった…というファンにとっては悲しいことが現実的に起き得るのです。

極端な例を言えば、イベントのプロモーターとつながりの強い広告代理店や事務所が特定のグループの寡占化を進めれば、政治的な力の弱いローカルアイドルたちは表舞台に上がることが難しくなるでしょう。

せっかく今まで積極的に活動を行ってきたのに、今までのようなかたちでは十分に行えなくなりそう…という近い未来がいまから見えてしまうのはちょっと悲しいですよね。 

次回は、県内企業における他の産業の事例を踏まえて、地元密着型のアイドルグループがNGT48と共存する方法を探っていきたいと思います。(つづく)    

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