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MOCAPベースのアニメーション作業はジェスチャードローイングに似ている

先日行われた3日間アニメーションマスタークラスで、こんな話題があった。

斜に構えた視点と構えない視点、2つの視点から物事を見ることで違った一面が見えてくる。

これはアニメーターのリチャードソン・幸さんの講義『Stay Creative! アート職を楽しみ続ける秘訣』で話題に上がった話。元ネタは下記の記事のようで、面白そうなので試しにやってみたら表題のような思わぬ発見があったのでノートにまとめることにした。

お題は「MOCAPベースのアニメーション作業」。
日本でCGアニメーターをやっていると多くの人がぶつかる悩みではないだろうか?もちろん、手付けばかりができる会社に転職できれば良いが、労働環境や給与、いろいろな問題で易々と転職できない場合もある。

そんな中、CGアニメーターとして「MOCAPベースのアニメーション作業」をすることで得られるメリットは何かを考え、少しでも手付けアニメーションに還元できる要素を見つけようというのが、今回の目的。

まずは斜に構えてみる

・カーブを綺麗にするだけの作業なんてつまらない!
・アニメーターの仕事じゃない!
・アクティングを考えるというアニメーターとしての1番の楽しみが削られる
・既に動いてしまっているため、アクティングの変更がしづらい
・キャラデザに合った動きをしていないため、大幅な調整が必要な場合も多々ある
・Butter Worthかけんぞ!
・We are Curve Cleaners!!

今度は斜に構えないでみる

・重心移動に集中して作業できる
日本では、リアリスティックなデザインだけでなく、2Dアニメ調のキャラデザでもMOCAPを使うことが多い。その場合、単純に人間の生の動きを重ねるだけでは頭部と身体の比率が違うため、違和感のある動きになる。これをキャラデザに合わせた動きに調整する作業は、重心移動の練習という面で非常に役立つ。

・体の部位やプロップなどに触れる複雑なアクティングの練習になる
手を地面に着く演技やプロップを触る演技は、手付でやるといろいろと面倒な作業が発生するため無意識に避けている人も多いのではと思う。それがMOCAPでは、そんな事情など知らない役者の演技によって撮影が行われるため、複雑な演技も躊躇いがない。0からで無いにしても、そういう複雑なアクティングを経験できることは、手付の作業でも役に立つのではないか。さらに言えば、自分とは全く別の人間によって生み出されたアイディアを元に作業をするため、いろいろなアイディアを見れる良い機会になる。

・キーポーズを探す練習になる
MOCAPベースのアニメーション作業とはいえ、キーポーズが大切という点では手付と変わない。フルベイクされたキーの中から、キーポーズを探して出して、より良いポーズに調整する必要がある。これはリファレンスからキーポーズを見つけ出す練習になるのではないかと思う。

・複雑な人体の動きを知れる
アニメーターになりたての頃は手付けをする際に、背骨のコントローラを複数選択して同時に動かしたり、胸のコントローラは使わずに背骨だけでポーズを付けたりと、オンラインスクールで習ったやり方を鵜呑みにして作業をしていた。でも、MOCAPベースの作業をする内に、人間の動きはそんなに単純ではないことに気が付く。

背骨の2つのコントローラは同じようなグラフをしていることは少なく、2つの内1つは、腰と背骨との動きを相殺するために違う動きをしていることが多い。

簡略化した作業が悪いというわけではなく、本来はどう動いているのかを知らずに、記号化された理解だけで作業することが問題だ。本来の動きを理解した上で、キャラクターのテイストに合わせてどう簡略化できるかを知れば、様々なテイストのアニメーションに応用ができる。

・ジェスチャードローイングに似ている
今回、斜に構える / 構えないをやってみて得られた1番大きな発見。
MOCAPベースのアニメーション作業は、ジェスチャードローイングに似ている。生身の動きは、デフォルメされたキャラクターと組み合わせると、動きにデフォルメがなく不自然な気持ち悪さが生まれてしまう。まるで生身の人間がキャラクターという着ぐるみを着て動いているような感じだ。それはとてもキャラクターが生きているとは言えない。

そこで、タイミングやポーズを調整するのだが、調整の際には中途半端なポーズをより伝わりやすいように誇張したり、シルエットを際立たせるためにネガティブスペースを意識したポーズに変更したり、「この動きはここを目立たせたいんだろうな」というのを想像しながら情報を整理したりと、まさにジェスチャードローイングさながらの思考が必要になる。

おわりに

MOCAPベースのアニメーション作業も実は学ぶべきところがたくさんあり、それは手付けアニメーションにも応用可能なものばかり。MOCAPベースの作業だからと腐らずに、手付けアニメーションに活かせるポイントをしっかりと意識し、大切な時間を無駄にしないようにしたい。

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