_高画質_いんよう_文字入り_

[文字起こし]いんよう! 第22回【人にオススメすること①】

今回はすっごく苦戦しそうなので、楽しかった19回と並行でぼちぼちと進めたいと思います。職場の休み時間と帰り道で2回、通しで聞いたけれど全然頭に入ってきません。

というのは、のっけからオシャレ音痴の私には大変苦手な「『カッコイイ』を言葉で語る」という場面が展開されるのに加え、後半では「双方が双方とも全力を尽くして手探りしながら思念をリアルタイムに言語化していく」みたいな……なんというか、大変面白いのだけど私ごときには非常に「脳みその体力」が要求される展開になっているからです……。

とりあえず今回は、あまり感情移入しないでシンプル通訳モードでちくちく起こしていきたいと思います。多分ですが、『はたらく細胞』がらみのときより格段にスピード落ちると思いますのであらかじめご了承のほど。

★2019年6月4日追記:やっと全部起こしました。お待たせしました。

(♪)
よう/アニソンをね……
いん/んふふっ(笑)いきなり……あははは(笑)
よう/(いっちーに)聞いてもらうようにしようかなと。
いん/はいはい。
よう/あの~、『うちのメイドがウザすぎる!』の、オープニングとエンディングの話をして……まあ結局、(曲も)聞いてもらってさ。で、何かしら、いっちーから「返り(反応)」があったから……
いん/ああ、ありましたありました。ええ、ありましたよ。

よう/で、まあ、なんていうかな。俺は、音楽自体には詳しくないけど、アニソンを、聴くわけじゃん。アニメを見ていると、必然的に。
いん/そうですね。
よう/で、好きな作品や、好きな曲があるから。それを音楽好きのいっちーに投げつけるっていうコーナーを、今回からやろうかなと思って。
いん/あっはっはっは(笑)……「今回から」ってことは、つまり今後もやるんですね。
よう/やるよ。定期的にやる。毎回やるかは、分からないけど。
で、いちおう何曲か選んで、聞いてもらって、そのうちの気になった曲について、感想をもらおうかと思って。
いん/なるほど。


よう/じゃあ今日は……俺が渡した曲のうち、どれについてやるんだっけ。
いん/あの、一番最初に聞いた、やたらとカッコイイ曲があるじゃないですか。あれ、なんて読むんですか? エーシーシーエー?
よう/ああ、はいはい。『ACCA(アッカ)13区監察課』っていう作品のオープニング曲なんだけど。

よう/曲をいっちーに渡すときにさ、何のひっかかりもないとちょっとアレかなと思って、曲のことにはまったく触れずに、アニメ作品のほうの簡単な解説だけを送って。「曲自体はフラットに(=事前情報を入れないで)状態で聞いてもらう」っていうふうにしたんだけど。
で、この曲のときに送った解説文が……

『Shadow and Truth』という、アニメ『ACCA13区監察課』のオープニング曲。
このアニメは、オノ・ナツメさんの同名マンガのアニメ化作品。
で、オノ・ナツメさんって、割とおしゃれというかカッコイイ男性がたくさん出てくるような作品を描いている方だと思うんだけど、この『ACCA13区監察課』もそう。
ACCAという架空の国家があって、そこで起こる政治劇をテーマにした作品。
とにかく「現代的なハードボイルド作品」というか、カッコイイ男性、シブい男性がいっぱい出てくるという……

いん/……なるほど。
よう/キャラクターもカッコイイし、おしゃれだし、あと画面がおしゃれ、服のセンスもオシャレで、小物がオシャレで会話がオシャレで、とにかくひたすらオシャレっていうね(笑)
いん/(ぼそりと)そうかあ……。
よう/今まで見た中では、俺の中で一番、オシャレな作品だね。アニメの中では。
いん/そうですか……ああ、そうなんですね~。なるほどね~。
よう/で、いっちーがどういうふうに思ったか?っていう……。
(約3分)

いん/え~とですね。リスナーの皆さんに、僕がどういう状況が分からないと思うんで説明すると、まあ先輩が買った曲が、僕にファイルで送られてくるんですね(笑)なかなか新しい経験で……「そういうこともあるんだ」と思うんですけど(笑)まあ、いい時代なんですね……。
よう/うん。
いん/で、その曲を聴く時に、ひとつずつ先輩のコメントが書いてあるわけですが、「まあ一番最初から見ていこう」思って。
よう/うん。
いん/「アッカ」とは読めなかったので「『ACCA(エーシーシーエー)』って何だ? まあ何かの略だべ」「『Shadow and Truth』? ありがち~」と思って、曲をかけるじゃないですか。
よう/うん。


いん/で、(先輩から)音楽についての情報はなかったんですけど、僕はパッと聞いて、「菅野よう子さんだ」と思ったんですよ。
よう/ああ~、はいはいはい、なるほどね。
いん/はい。で、僕はそんなに激しくアニメなどチェックしていないんですけど……僕の中で「スタイリッシュなアニメ」っていうと、2本しか知らなくて。『ルパンIII世』と『カウボーイビバップ』しかないんです。
よう/あ~、そうだね(笑)
いん/その2つしか、ない。
よう/そうだね(笑)それを差し置いて『ACCA13区監察課』が一番おしゃれだと言っている俺は、けっこう危険だけどね(笑)
いん/(笑)いや、それでですね。なぜその2つを今、アニメの話で出したかと言うと……僕は『ACCA』のアニメは見てないんですが、音楽の系列的に、「金管楽器を入れたジャズっぽい感じ」でオープニングがスタートするんですよ。
よう/うん。
いん/そこは、リスペクトなんですよ多分。今までのそういう系列のアニメ曲に対するリスペクトがあって、「このアニメは皆、構えて第1話を見なさい」という……リスペクトがあると思うんですけど。
よう/ああ。確かにあの曲調だと、ハードルは上がるよね。
いん/ええ。特に最初のハードルがすごい上がるんですけど……。
よう/うん。


いん/あのですね。アニメの曲を映像なしで見たことって、僕はなかったんですね。
よう/まあ、そうだよね。
いん/だいたい、映像と一緒に出るじゃないですか。
よう/いやいや、まあそうだよね。PV見るか、オープニング映像と一緒に見るか……まあ何かしら映像がついてるもんだからね。
いん/大体そうですよね。ところが……今回、映像を見ていないのに、序盤は菅野よう子テイストで、「は~そういうタイプのアニメが始まるのかな」と思ってたら、途中から、いきなりすごいここ2~3年の「打ち込みのメソッド」に入るんですよ。
よう/ああ~。バキバキのラップから始まるしね。
いん/あ、それもあるのかな……。なんかですね、音質が打ち込み系にちょっと入って……
よう/ああ。最初は金管なのに……
いん/そう。冒頭はジャズっぽくアレンジして入るのに、途中から突然、なんかボカロPみたいな編集に、グ~ッと寄るんですよ。
よう/ああ。これ最初、男性ラッパーがあって、曲自体は女性が歌っているというパターンだよね。そういうのは普通にポップスとかでもあるじゃん。
いん/あります。


よう/で、女性の歌声って……あれ、若干エフェクトがかかってるのかな?
いん/あれはですね。「選んで抜いてきたなー」っていう感じ。
よう/ああ、そういう感じなんだね。ふ~ん。
いん/「この人は本当に声優なんだろうか」と思ってしまうんですよ。アニソンだって言うから、てっきりアニメに出てくる女の人が歌うのかと思うんですけど……聞いてみると「これはアニソン寄りかもしれないけど、『ボーカリスト』だよね」っていう感じになって。
よう/うんうん。
いん/突然、世界観がアニメじゃなくなって、揺らぐんですよね。すご~く、ゆらぐ。
よう/うん、そうだね。
いん/で、「これはアニメの文法じゃなくて、どちらかというとハードボイルドの文法の中で聞けよ」っていう雰囲気と、「でも最新ので行くから。CGもちゃんと使っていくよ」みたいな雰囲気がでてる、っていうのが、アニソンのうまさなんですよね。
よう/ああ~、そうだな。

いん/あのですね、昔……15年ぐらい前に『私立探偵 濱マイク』というドラマがあったんですよ。永瀬正敏が探偵役をやっていて。それと同居しているのが中島美嘉と……もう一人、顔は分かるけど名前が思い出せない人なんですが……ナントカっていう……
よう/情報が全く増えないね(笑)
いん/ごめんなさい、増えなかったですね……(笑)で、毎回すごい細かい感じで……。そのオープニング曲を「EGO-WRAPPIN'(エゴラッピン)」というのが歌っていたんですね。
よう/ああ、はいはい。
いん/あれがまあ、おしゃれでね……。次回予告を YOU がやるんですよ、YOU が。「こんばんは、ペネロペ・クルスです」とか言って入ってくるんですよ(笑)
よう/ああ、ちょっと気だるい感じで。
いん/そうそう(笑)「ペネロペ・クルスじゃねぇけどw」みたいな感じで。その雰囲気が、実は菅野よう子なんですけど。
よう/うんうん。
いん/そういう、ジャジーな、「オムニバス感があるけど世界観は統一している、しかもおしゃれ」で……視聴率が2%ぐらいの、大爆死した、すごく良いドラマだったんですけど……
よう/「大爆死した良いドラマ」だったんだね(笑)
いん/良いドラマなんですよ。映画化もして……っていうか、映画が先にあったんですけど。
で、(『Shadow and Truth』は)その雰囲気をちょっと匂わせながらも、「いやちょっと待ってくれよ、これはやっぱりアニメだし、ボカロの方にも行くし」みたいな、「全盛り」みたいな感じの曲で。とにかく1曲目が、あまりに完成度が高かった。


よう/うん、まあこれを1曲目に送ったのは、そういう意味だよね。「アニソンなめんなよ」っていうさ(笑)
いん/いや、ほんっとにそういう感じで……
よう/いわば、無駄な俺の煽り(笑)「一番端っこをまず送る」みたいな(笑)
いん/端っこというか……「これをやられていると知ると、大抵の人はちょっとショックを受けるだろうな」というアニソンでしたよね。
よう/そうそう。「端」といったのは、「一番かっこいいほうの端に寄せたもの」
いん/ああ……。
よう/こないだの、『うちのメイドがウザすぎる』の曲は、「一番、萌えの方にゴリゴリに寄せたもの」だったけど、これは逆のベクトルでゴリゴリのやつ。「アニソンには ここまでの幅があるよ」という意味で、送ってみたんだけどね。

いん/これを送られた人は、大体は感動すると思いますよ。
よう/いい曲だからね。これね、なんか「この曲の為に作られたユニット」みたいで。
いん/ほう!
よう/女性ボーカルの人は多分「ORESAMA(オレサマ)」っていう2人組ユニットの、PON さんっていう方が、歌っているのかな。
いん/はぁ~ん……じゃあ別のユニットからちょっと借りてきた、というわけですね。
よう/そうそう。で、この「ORESAMA」っていうユニットは、「渋谷を中心に活動しています」っていう……
いん/「広くない」みたいな(笑)
よう/うん、そういう文脈のバンド。まあアニメとかよりは、いわゆる「渋谷系」って言っていいのかな? そういうのでやってる人で。
いん/はあ、なるほど。


よう/ただ、「何でこの人が来たか」というのは……文脈としては……これ作品の流れが前後するからアレなんだけど……
いん/ほう。
よう/『アリスと蔵六』っていう原作が漫画のアニメ作品があってね、その主題歌を、この「ORESAMA」が歌ってたはずなんだよね。なんか見たことあると思ってたんだけどね。
いん/あ、そういう……。
よう/うん。だからもともと、「アニソンに関わりがある人」ではあるんだよね。アニソン歌手という感じではないけれど……ってことかな。
いん/ああ、なるほどですね。なんかすごく分かりましたよ。


よう/まあそんな感じなので気になる人は聞いてみたらいいと……これ、Podcast だからね。音源は絶対流せないから……「言葉だけで音楽を語る」っていう、ちょっと無謀なことをやってる気もするんだけど。
いん/あっはっはっは(笑)それは視聴者の方に、ちょっとした……忸怩たる思いで聞いてもらえたら、いいんじゃないですかね。
よう/そうだね。まあ PV もあるから……
いん/あるんですか?
よう/あるある。全部は流れないけど、後半で一部は流れてるから。
いん/マジですか。
よう/うん。いっちーも、映像を見てみたら、もうちょっと深まるかもしれないよ。
いん/いやあ……曲名、『Shadow and Truth』でしたっけ?
よう/うん。
いん/これ、アニメに全く親和性がない人でも、聞けます。全然聞ける。
よう/ああ、そうそうそう。だから、いわゆる「アニソンという感じ」はしないんだ。だから多分、音楽性でアニソンを括ることは、もう不可能だと思う。
いん/いやあ、そうですね。すごく分かりました。そういう感じですよね。

よう/うん。で、まあこれを始めたのは、俺が毎回、冒頭のネタを考えなくていいっていう面もあるんだが……
いん/んっふふふ(笑)
よう/同時に、せっかく いっちー、音楽が好きなんだから、唯一、俺がちょっとだけ知ってる「アニソン」という分野を紹介して、興味を持ってもらおう、という意味で、「曲を投げつける」というプレイに出ている訳なんだけど……
いん/あははははは、なるほどね(笑)いや、どうぞどうぞ(笑)これ面白いですよ、この曲。送っていただいてありがとうございました。
よう/今ね、あと50曲ぐらい候補がある。
いん/ん?……多いな(笑)1年続くってことですよね。
よう/そうだね、全部やったらね(笑)
いん/50曲ね、いやあ大変なことになるな、なるほど……。


よう/もともと「いっちーが全然知らないジャンルの音楽」じゃないと思うんだ。いろんなジャンルの音楽が混じっているからさ。でも「こういう風に使われているんだ~」みたいな面白さはあるかなあと思って。
いん/ああ。
よう/もともと、いっちー音楽が好きだから「全く知らない分野を知る」っていうことにはならないんだけど……
いん/ん~(笑:何か言いたそうにしているが黙って笑っている)


よう/なんか、自分の好きな分野……まあ好きというか、例えば俺だったら「生命科学」を仕事にしているわけだけど。イッチーは「病理専門医」なわけでしょ。
いん/はいはい。そうですよ。
よう/特に、いっちーは「自分のアカウントで病理を広めていく」っていう使命を、自分に勝手に課してさ、マッチポンプをやってたんだよね。
いん/いや今はそうでもないけど(笑)
よう/(笑)まあ、Twitterを始めた頃は、ってことでね。『フラジャイル』が出てくるまではそうだったわけでしょ?
いん/そうです、そうです。
(13分34秒)

★本題「人にお勧めすること」

よう/要は、ざっくり大きく言うと「自分の好きなものを知らない人に勧める」っていう時に、どうすればいいんだろうな?……っていう話で。
いん/あれ? これ もしかして、もう本題に入ってます
よう/うん、入ってるよ。
いん/うはははは、なるほどね(笑)いやだって……あなた今「アニメの話」って言いましたけど。
よう/うん。
いん/「どうやって自分の好きなものを広げるか」という話のとっかかりとしては……まず、先輩が広げたいのはアニソンそのものなのか、アニメ本体なのか?……っていう話からしなきゃいかんかな、と僕は思いましたよ。
よう/それは、アニメ(本体)だね 。
いん/アニメなんですね。で、「そのとっかかりとしてアニソンを選ぶ」みたいなアプローチの仕方がある、と。
よう/そうそう。それは、いっちーに特化したやり方だけどね。「もともと音楽が好きなんだったら……」っていう。
いん/いやあの、そこちょっとハードル上げすぎですよ(笑)僕そんなに物凄く音楽に詳しいわけじゃないんですよ(笑)
よう/ああ、まあ「詳しいかどうか」は置いといてさ。
いん/うん。好きは好きですよ。
よう/日常的に音楽を聴いてるわけでしょ。
いん/はい。確かに診断中、ずっと聞いてますからね……。
よう/だから、そういう「相手の好きな物をとっかかりにする」という方法もあると思うんだけどさ。なんかこう……これ俺が考える時にいつも思うことで…… note に書いたこともあるんだけど。
いん/ほうほう。

よう/いわゆる「サイエンス・コミュニケーション」をやります、と言うと、きちんと専門家の人が出てきて、分かりやすく科学の内容を話す。特に、「社会に関係があること」を。
いん/おお。
よう/特に、医療とか医学系は社会に直結してると思うんだけどさ。
いん/はい、そうですね。
よう/例えば「遺伝子診断っていうのは今どういう現状になっていて展望はどうなっている」とかさ。
いん/はいはいはい。
よう/要するに「皆に関わりがあること」だから、自分とはどういう関わりがあるんだろう?……というところをフックにしていくわけだよね。
いん/あー、そうですね。
よう/「自分が子供をもし作ることになったら」とかさ。あるいは、「病気になった時に、より正確な治療・診断をするために、オーダーメイド医療とかそういうものが出てきて、遺伝子を調べる」ということになるから……。
いん/はいはい。
よう/「自分に関係があることだから興味を持ちやすい」。そういうフックで話に入ってくるっていう……
いん/なるほどね。


よう/いわゆる「社会の関わり・社会の関心にとっかかりを持って、社会的に責任を果たしながら内容を伝える」。これが一番王道のサイエンス・コミュニケーションだよね。
いん/そうか、そこが王道……言われてみれば、全くその通りですね。聞き手が興味がありそうなところにまず、ワンフックかけておいて、そこから……というのが、「王道」なんですね。
よう/そうだと思うよ。それが特に社会的な関心の的だったら。
いん/なぁるほど。
よう/「社会にとって大事」あるいは「役に立つ」という言い方もできるんだけどさ。

いん/……例えば、ガンの話をするときに、「最近の人はだいたいこういう滑り出し」っていうのがあって。
よう/うん。
いん/「今や日本人の2人に1人が生涯に1度は癌にかかります」みたいなことを言いますね。これも同じ?
よう/ああ、まさにそれ。同じだと思うけどね。「皆さん知ってると思いますが、他人事ではありませんよね」という……。
いん/なるほどね。「あなたに関係があることですよ」みたいな。
よう/そうそう。今すぐ自分に関係がなくても、例えば親とか、年上の知人がそうなるかもしれないし……。
いん/あーあーあー……(うなずく雰囲気)わかるわかる。すごいわかる。他にありますか?

よう/他はね、「映像的なインパクトに訴える」。
いん/「映像的なインパクトに訴える」……?
よう/例えば、なんだろうな、よく子供向けのやつがまず思い浮かぶんだけど。
いん/はい。
よう/空気銃みたいな……空気砲っていうんだっけ。
いん/ほうほう。
よう/あと、すごい古典的な例で言うとさ……「熱いお味噌汁が入っているお椀を、水がついてる机の上に置くと滑る」みたいなのがあるじゃん。
いん/はいはい、わかりますよ。お椀の下の空気が膨らんで、スーって滑るやつでしょ。
よう/そうそう。そういう物理的な現象を利用した、「手品じゃないけどちょっと面白い現象」を見せるという実験。あれは映像的なインパクトだと思うんだよね。
いん/あ~……。そうか、その世界に興味があるなしを理屈で語る前に、「でんじろう先生が科学実験やる」みたいな感じで、「誰が見てもわかるような映像的にインパクトがあること」をまず用意して、そこから入っていく、みたいな。
よう/そうそう。あれは「エンタメ型」だと思うんだけどさ。「エンタメ型」のひとつだと思う。
いん/あ~、「エンタメ」ね。なるほどね。分かる分かる。
よう/びっくりさせると言うか……ショーだよね。エンターテイメントショー。
いん/なるほど……。あ~難しいな……。
よう/まあだから、人の生活上、「必要」という情報ではないんだけど、なんか、好奇心とか楽しいという気持ちに訴えるものというか。
いん/ああ、なるほど。

よう/あとは、サイクロトロンとか めっちゃデカいじゃん?
いん/あの電子を加速するやつ? はいはいはい。
よう/そうそう。あれ、デカいやつだと1周が 20km ぐらいあるんだよね。
いん/なんか、ちょっとした村を含んじゃうような、距離のある施設を作らないといけないんですよね。
よう/そうそう。あれは内部がめっちゃデカい洞窟やトンネルみたいになっていて、そこに色々な管が真ん中にあって電子や陽子が飛んでいる訳だけど。
いん/はいはい。
よう/その周りに、それを制御するためのすごいデカい電磁石とかコイルみたいなのがあって……ああいう、デカい建造物を見せるのも その手法だね。あれも映像的なインパクトだから。
いん/あっ、なるほど。
よう/「何をやっているのかは分からないけどなんかすげー!」みたいな。

いん/そうか。「でんじろう型」とはちょっと違うけど、とにかくなんか、「規模」で「すごいでしょう」っていう感じで見せていくと。
よう/うんうん。
いん/そこを入り口に、「何か凄そうなことをやっているぞ」という畏怖の気持ちみたいなものを、相手に抱かせるんですね。
よう/そうそう。「デカい加速器を見せる」っていうのと、「でんじろう型の、実験を使った手品っぽいものを見せる」っていうのは、俺の中では一緒なんだよね。
いん/ああ、なるほど。

よう/で、もうひとつ最後にあるのが、科学の現象とかそういう「モノの面白さ」ではなくて「科学をやっている人の面白さ」あるいは「そのジャンルに居る人の面白さ」
いん/……っはぁぁ~!!! 先輩、それ昨日今日考えた話じゃないぐらい、綺麗に分類されてますけど……
よう/うん。
いん/僕、今まで考えたことなかったですけど、なるほど納得ですね。あれでしょ、「語り手に魅力があるから、その人にが喋ることなら何でも聞いてみよう」っていう話でしょ?


よう/そうそう、そうだね。例えば「みうらじゅん」っていう人はさ……
いん/あはははは(笑)
よう/あの人は、めっちゃカリスマなわけじゃん。「あの人が語る分野だったら、どんな分野でもとりあえず聞いてみよう」っていう人がいるわけだよね。仏像のことだったり他のことでもさ。
いん/あ~、なるほどですね(笑)


よう/ああいうスターはちょっと措いとくとしても……「理系あるある」みたいな漫画とかだと、だいたい「変なキャラ」がいるじゃん。「普通の世の中にはいない感じのだけど、研究業界だとよく見る人」みたいな。
いん/ああ、なるほどなるほど。
よう/あの……『動物のお医者さん』って、そうだと思うんだよね。
いん/あの教授がそうでしょ(笑)
よう/そうそう(笑)漆原教授っていう、アフリカのお面みたいなのをいっぱい集めている人がいるけど……
いん/うふふふふ(笑)
よう/俺、本当に北大で……フィールドワークやってる人なんだけど、アフリカのお土産とかいっぱい、机の上に並べている教授を知ってるからね(笑)
いん/あははははは(笑)
よう/別にその人、『動物のお医者さん』に影響されてるわけないんだよ。もう結構な年配の方だから。素でそれが好きな人なんだよ。
いん/なるほどなるほど(笑)
よう/それで、キャラクター的には井上陽水みたいな話し方をするんだ、見た目は違うけど。
いん/あっははははは(笑)そうなんですか。
よう/うん、そう。ちょっと何考えてるかわかんない感じの(笑)若干、「ケンカ強そうだな、この人。ニコニコしてるけど」っていう感じの人(笑)
いん/あ~、「ケンカ強そう」ね……。
よう/うん。で、そういう人ってさ、「その分野ならではの面白い人」で……。「こんな人がいたらこの分野はもしかしたらちょっと面白いのかな」と思ってくれる人がいることを期待するわけ。

いん/……いやぁ、先輩、それはですね……。最初の3つは僕、ある程度有機的に話せたと思うんですけど……最後の1コが強すぎるんですよね……。
よう/そうだね。……個人的には、一番最後のが好きなんだけど。
いん/ああ、「好き」なんだ。
よう/うん。
いん/ああ……うぅ~ん。いやこれは……ちょっと、2週にわたってやらないと、だめかもしれない。このテーマ、重いなぁ……。
よう/そうだね(笑)
いん/サイエンス・コミュニケーションの話って、我々ふたりの共通した興味なので……
よう/うん。
いん/ちょっと、一番最後の「語り手の魅力がすべてをひっくり返すパターン」って、それだけで1週、使えるんですよね。
よう/そうだね。
(23分47秒)

よう/なんか、「サイエンスショーみたいなやつをすごくちゃんと考えて、構成して、やる」って言うのは、効果があるし、良いと思うんだけど……個人的にはあんまり見ようと思わないんだよね。俺の思考形態としては。好みの問題だけど。
いん/あ~、なるほどですね。
よう/「それは、サイエンスの面白さとはちょっと違わないか?」と思っちゃうんだよね。ただ、それをきっかけに、実際「こんな面白い現象があるんだ、なんでだろう?」って言って入ってくる人がいるのは分かるから……
いん/うん、子供とかそうですよね。子供とか!
よう/そうだね。あと知的好奇心が強い人とか。だから、そういう方法は絶対誰かがやらなきゃダメだし、うまくやっている人がいると、そのままそういうのが続いていくといいなあと思ってる。
いん/あ~、うん……。(ずっとうなりながら聞いている)
よう/で、「社会的な責任を果たすためにやる」って言うのは、サイエンスのド真ん中にいる人がやればいいじゃん。
いん/そうですね。
よう/要は偉い先生がやればいいんだよ。偉い先生の中で、喋れる人を捕まえてきてやればいいんだよね。
いん/なるほどなるほど。分かるわかる。
よう/本当は3つとも出来る人がいればいいんだけど、そんな人はいないからさ。
いん/そうですね~……。
よう/……だから、免疫のことなんか、これから本庶先生が発信していけばいいんだよ、ほんとに。ものっすごい影響力なわけだからさ。
いん/そうですね。あの人……全部、持ってるもんね。

よう/きちんと情報を発信していってくれれば、いいわけだよね。
いん/いやあ、そこなんですけど……僕いま(考えてるのが)、ひとりの発信じゃなくて、もう1コ「同じように発信力のある人に刺さるためのプレゼン」。そういう技能があるんですよ。
よう/あー!それは、いかにも SNS っぽいね!
いん/そうでしょ。僕いま、この話にすごく興味があって。「子供向けのプレゼンを作れる人」は、タレント(才能がある人)なんですよ、やっぱり。すごく才能が必要で……。
よう/うん、確かにね。
いん/「これから(将来)どの方向に行ってもいい」っていう、カン細胞みたいな存在の子供をですね……
よう/あ、えーと……この場合のカン細胞っていうのは、stem cell(ステムセル=幹細胞)の方だよね。「何の細胞にでもなれる」っていう細胞。なんだっけ、山中先生が作った万能細胞みたいな……そういうのをイメージして言ってるわけね。
いん/そうそうそう(笑)
よう/俺らがふたりで居酒屋で喋ってるんじゃないんだからさ(笑)
いん/あははは、ほとんど変わんねえって(笑)いや、まあそういう「子供たちに刺さる」ような、でんじろう先生とかがサイエンス・コミュニケーションをやって「面白いでしょ?」「わぁっ♪」っていうのは、ひとつの巨大なタレントなんですよ。
よう/本当にそうだよね。


いん/ただ、最近ちょっと思うのは、「『こいつを仲間にしたら、きっと自分と同じか それ以上に活躍して、広報を一緒にやってくれるぜ』と思える人」に刺さる言葉を使うのも、結構大事なんだよねってこと。
よう/うん。それはサイエンス・コミュニケーションの種類ではなくて、具体的にやる時の、まあ「戦術」とか「戦略」とかっていう話だよね。
いん/いや僕、最初はそれが戦術や戦略だと思っていたんですけど、世の中の大半は子供じゃなくて、大人なので……。
よう/うん。
いん/「大人に刺さるやり方も、あんまり無視できないな」っていうのが、いま僕の中にある考え方なんですよね。
よう/そうだね。子供向けにちゃんと出来る巨大な才能を持っている人もいる一方で、大人向けにちゃんとできる人もいなきゃダメっていう話だよね。


いん/そう。それで、大人向けに刺さる言葉を言うためには、メソッドとしてやるんじゃなくて……
よう/うん。
いん/大人って、そういうひねくれたところもありつつ、「いざ味方にしたら こっちに肩入れして一緒に行ってくれるぜ」っていうのが、大人の性質としてあるんですよね。
よう/あ~、そうかそうか。人を集めて話を聞いてもらったり、同じところに興味を持ってもらうための方法なんだよね、サイエンス・コミュニケーションって。
いん/そうそう。

よう/サイエンスに限らず……う~ん。「対象をどうしゃべるか」よりも……それは、「人間力学」に近いよね。
いん/ああ~、そんな言葉あるんだ! いや本当にそれです、まさにそれ。そうなんです。
よう/広~い意味でいう「政治」だよね。
いん/そう、そうです。広い意味でいう政治。いや「よく次から次へとポンポン出るなあ」と今思いましたけど、本当にそこです。
あのですね。例えば「今、こういう面白い話があったよ」っていう話を「子供」にしたら、「わー面白い」って言って興味を持ってくれたらそれで「ゴール」なんですけど……。
でも「大人」の時って、「わあ面白い。そんな話し方ができるんだ。そんな世界を面白いと思って、大の大人が人に伝えたいと思うんだ。へ~、じゃあ俺もそっち側に回ってみたい」というような、複雑な価値付けの後で、結果的に、その人の中で科学力がついて行くんですよね。
よう/そうだね。
いん/なんかこの、「一筋縄でいかない」というか、「なんか見せないと科学の気持ちにならない大人」を動かすためにと、そっちに目標をターゲッティングすると、子供とは違う手法が必要だなって、最近ずっと考えてたんですよね。あ~、でもこれ、マニアックすぎるな。言っててふわふわになる……う~む(ぶつくさ)


よう/……まあ、来週、続きを話すかもしれませんし、話さないかもしれませんけど(笑)
いん/話さないかも(笑)この話は繰り返しやりたい……。サイエンス・コミュニケーションの核のところで、いま悩んでいるところがあるよっていうことです。
よう/そうだね。だから、明確な結論はないんだけど……
いん/そうですね。
よう/まあ、リスナーの皆さんも含めて「考えてくれればいいかな」みたいなさ……。

いん/そうですね。いや、ここ興味あるんですよ今、本当に。
よう/……そうですね。〆の言葉を思いつかないんで、今週はこれで……(笑)
いん/(笑)いいですかね、「次回」ということで。
よう/いや ACCA のことで、何かちょっと言おうかなと思ったんだけど、俺「やっぱ、萌えが入ってないと発言が思いつかない」っていうことにいま気がついて、愕然としてるんだけどさ。
いん/……僕はむしろ、今のその発言を聞いて愕然としてるんですけど(笑)何ですかそりゃ(笑)
よう/男性キャラクターが多くて……あ、でもモーヴ本部長という、田中敦子さんがやっているキャラクターは、超かっこよかった!
いん/……萌えがないと、〆められないのね。
よう/そう、何も思いつかない(笑)
いん/はい……(笑)
よう/はい、じゃあ今週はこれで。以上です。ありがとうございました。
いん/ありがとうございました。
(30分25秒)
(♪)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?