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[文字起こし]いんよう! 第20回【哲学との距離の取り方】

新年あけましておめでとうございます。今年は穏やかに晴れた元旦でした。
まだ神宮(伊勢)に行ったことがないという人を外宮に案内し、お神酒をいただき、伊勢うどんも初体験させてあげたので、今年はきっといいことが起こると信じたい(ゲンキンな)。

そして久しぶりの人混みに疲れて帰ってきたら、なんと『いんよう!』最新回アップという素敵なお年玉が!(告知を見逃していたので当日まで存じませんでした)……というわけで、ちょっとYP(やる気ポイント)が少し復活したのでいそいそと(唐突に最新回を)起こし始めた次第です。聴こえない『いんよう』ファンにも、たまにはリアルタイム(に近いタイミングで)楽しんでいただけたらと思います。(ここまでの過去回が起こせてないので、そこに言及している部分については申し訳ないのですが……)

※ちょっと今回、小見出し(兼・参考リンク)を間に入れるという試みをしてみました。もしお邪魔でしたら別のやり方(文末にまとめるとか)を考えますので、ご感想あればTwitterかnoteでコメントを頂ければ幸いです。

(♪)

よう/あの、先週さ。イッチーがSNSについて、いろんなこと話してくれたけどさ。
いん/うん(笑)
よう/「インプットする方法」みたいなのが、主な内容だったかな~と思うんだよね。
いん/ああ、そうですね、インプットの話になりましたね。
よう/うん。それで「どう世界を広げるか」っていう、さ。
で、「アウトプットするってことは、基本的にはインプットの先にあるんだ」っていう思想なわけでしょ?
いん/そうです、僕は。
よう/その「インプットをアウトプットに変換する」っていうところのさ、「個性」っていうか「自分の資質」みたいなものが……まあ、あると思うんだけど、それもある程度、インプットする中で鍛えられる……っていう話だったと思うんだけどさ。
いん/うん。
よう/なんか、ちょっと前にnoteで俺が書いたことがあって……
いん/はい。
よう/「新しい世界を知るって、めんどくせえな」って思うことが、よくあって。
いん/ああ~、うん、うん!
よう/「もういいよ、この手持ちで」って思うんだよね。だけど、ずーっと「この手持ち」のままでいくと、だんだん、置いてけぼりにされていくような、不安感もあるわけ。
いん/なるほどなぁ……。
よう/うん。だから、めんどくさいけど、でもやっぱり新しい……「あ、これちょっと面白そうだから、これならいけそうだな」とかさ、なんか割とこう、消極的な理由で、新しいものに触れることが、個人的には多いんだよね。
いん/ああ……。
よう/で、そういう思いを込めて、途中でイッチーに「イッチーって、元気だよね」って言ったんだよ。
いん/……そういうつながり方をするんですね。なるほどな……。
よう/そうそう。もう(イッチーは)「新しいものへ、新しいものへ」ってどんどん……。まあもちろん、最初は「病理のことを伝えたい」っていう情熱がベースにあってやっていたわけだから、そのおかげで、一番最初の苦しい……「ゼロをイチにする」っていうか「フォロワー数を増やす」段階が通り抜けられたのかもしれないけど。
いん/はい。
よう/なんか、そういうモチベーションがないときだとさ、特にさ……なかなか「新しいものに触れる」っていうのも、しんどい瞬間があるのかな~って思うんだよね。
いん/ありますよね、ええ。あるでしょうね。
(1分57秒)

◆『三ツ星カラーズ』

よう/うん。あの~、俺……。
『三ツ星カラーズ』っていう、マンガとアニメがあるんだけど。
いん/ほうほう。
よう/その「琴葉(ことは)」っていうキャラクターが、すごい好きで。
いん/ほう(笑)
よう/なんかもう、「ずーっと琴葉のことだけ考えていたいな」って思うもんね。
いん/あははははは(笑)
よう/(笑)
いん/ちょっと僕、そのキャラクターもアニメも知らないんですけど……。
ただ、僕のやっていることが「元気」かどうかについてはですねぇ……
よう/うん。
いん/例えば、その「琴葉」っていうキャラクターが、作中で、どこかに行ったとするじゃないですか。
よう/うんうん。
いん/まあ「聖地巡礼」ってやつですよ。
よう/そうだね、はいはい。
いん/すると、その「(彼女が)行ったところ」に、自分も興味が出たりとか、その琴葉っていうキャラクターが何か本を読んでいた……「実在する本」を読んでいたとすると、「あ、これ読んだことあるな~」とか。
「自分がその人のことだけ考えていたい、そのキャラのことだけ考えていたい」っていうのを突き詰めると、実は、「世界は広がる」んですよ。
よう/まあ、そうだね。
いん/ええ。で、僕のやっていることは、「フォローを(増やす)」っていうことがフックでしたけど、結局、「完全に新しい世界」は、まったく広げていなくて……「なんか、自分と共通している人たちが持ってくる話題のなかで、(世界が)広がるかもな~」ってくらいのことなので……。
実は僕も、そんなに「新しもの好き」ではないんですよ。
よう/ああ……いや、分かる分かる。……分かるよ。
いん/うん。
よう/まあ、そうだね……(ここでしばらく言い淀む)
あの、一歩一歩ね……あの……(笑)
いん/ぶふっ(笑)あはははは……
よう/(笑)……いや、そうだよね(笑)
だから、「何かしらモチベーションがあれば、そこの坂道を一歩一歩のぼっていける」っていう話ではあると思うからさ……。
いん/うん、そうそう。
よう/それが「楽しめる」ってことだからさ。
いん/そう。いやまあ一応ね……。で、アウトプットも一応、そうなので……
よう/うん。
いん/「自分が好きなものについては、いくらでも語れる」っていう話を……
「自分が好きなものを増やせば、いくらでも語れる、書ける」ってことになるやんけ!……って、そういう発想なので(笑)
よう/うん、そうだね。……そうだね、(俺も)「琴葉のことを語れ」って言われたら、いくらでも語れるからね、今はね。
いん/そうでしょう?(笑)ネタ切れ、ないじゃないですか、たぶん(笑)
よう/うん、そうだね。あの、まあ……(笑)
「罵倒してくるキャラが好きだ」っていう話を今までさんざんしてるけどさ(笑)琴葉は、「とにかく人が寝転がっていると頭を踏む」っていうプレイがあるんだけど(笑)
いん/プレイが……(笑)
よう/(笑)いいんだよ、切ないキャラで……好きなんだけど。
まあでも、そういうさ……なんとなく、「情報を増やすことのしんどさ」っていうのが、特にネット(時代)が始まってから、言われ尽くしているとは思うんだけど。
いん/はい、はい。
よう/そうすると、「なんとなく、距離をとってしまっているもの」ってあると思うんだけどさ。
いん/ありますね。
よう/俺の中で「哲学」が、それなんだよね。
いん/うぉあ……。
よう/なんとなく、「ちょっとは自分に親和性がある」という部分があるな……とは、昔から思うんだけど。
いん/うん、うん……。
よう/かといって、ちゃんとさ……勉強してみたり、知ろうっていうのにはちょっと、ハードルがあったっていうか……。まあ、SFとかもそうなんだけどね。たぶん、ちゃんとやれば……ちゃんと読めば、楽しいんだと思うんだけどさ。
いん/……あるな~……。
(5分09秒)

◆『史上最強の哲学入門』

よう/で、最近、飲茶(やむちゃ)さんっていう作家さんがいて。
いん/はい、はい。
よう/まあ哲学関係のことをいろいろ面白く書くっていう……まあブログから何から……
いん/はい……何回目かのときに、その人の話、チラっとでました?
よう/うん、出た気がする。
いん/前にね。前に1回やりましたね。はいはい。
よう/うん。で、この人が書いてる本で、『史上最強の哲学入門』っていうのがあって。
いん/ほほう……。
よう/何十人も、哲学者を紹介してくれている本なんだよね、わーっと。分かりやすく。
いん/なるほど。
よう/本当に「入門書」って言う感じがするんだけどさ。
いん/はい。
よう/で、まず、こう……なんていうか、フックとしてさ……あの、『(グラップラー)刃牙(バキ)』なんだよ、フックが。

いん/え?……あははははは(笑)……お、思いもよらない角度から出たな。刃牙……ほう(笑)……『刃牙』ね? あの、格闘(マンガ)の。
よう/うん、そうそう(笑)
『刃牙』ってさ、キャラクター紹介が結構独特っていうかさ……。あるじゃん、独特のさ……プロレス向きというかさ。キャッチコピーがあってさ。
いん/うん、うん。分かりますよ(笑)
よう/ああいう感じで、わーって、最初に登場シーンが書いてあるんだよ、みんな。
いん/「哲学者たちの!」って?
よう/そうそう。「哲学者の大会がある」みたいな設定でさ……
いん/ああ……好きだな! あ~、『刃牙』好きなんだろうな~、分かるわ……(しみじみ)。
よう/ちゃんとね、「哲学の聖地・東京ドーム地下闘技場では」って書いてあるんだよね。
いん/あははは(笑)もう完璧に刃牙好きだ、あはははなるほど(笑)
よう/そうそう(笑)で、一人ひとり入場してくるのを紹介する、みたいなのが、前書きになっているわけ。
いん/なるほどなあ……(笑)
よう/で、その後に、一人ひとり、どういう哲学を作って来たのかっていうのを書いてくれていてさ。
いん/はっはぁ……(感嘆)。
よう/まあ非常に分かりやすくて、いいんだけど。
いん/はい。
(6分50秒)

よう/なんていうかさ……。この番組(ポッドキャスト)のタイトルが『いんよう!』ってことだけどさ。
いん/はい、はい。
よう/まあいろんな意味があるけど、「自分がしゃべっていることには、しょせんオリジナルなものはない」っていう思いもあるわけよね。
いん/はい、はい。
よう/「全部、どこかからの引用です」っていう、さ。
いん/はいはい、そうですね。
よう/うん。で、(さっきの本で)哲学者の簡単な紹介を読んでるとさ、自分が思いついた切り口みたいなことが、当然だけど全部、書いてあるわけ。
いん/わ か る。
よう/洗いざらい、書いてあるんだよ。
いん/うん。
よう/俺がね、ここ20年で考えたことなんかさ、そりゃあ誰かが考えてることだと思うけど……改めて「こんなに綺麗さっぱり、全部書かれてるんだな」っていうさ……。
いん/分かるなあ、うん……。
よう/ある意味、爽快なくらい。
いん/……そうだよねえ(笑)
よう/うん。まあ自分の中でも、変遷があるわけじゃん。例えば10代の頃と今の考え方って、違うわけじゃん。
いん/はい、はい。
よう/色々な、もののとらえ方とかさ。
いん/ああ。……そうなんだよなあ……。
よう/なんか、「人との接し方」もそうだし、「自分の感情との向き合い方も」そうだしさ。「あんまり理屈っぽいのダメかな?」って思ったりとかさ……。そういう、もののとらえ方っていうのが、全部、変遷とともに、ちゃんと書かれてあるわけ。歴史に。
いん/書かれてますよねえ、それは。……あるでしょうねえ。いやあ、そうなんだよなあ……(しみじみ)。
よう/うん。「ああ、俺が思ってたコレって、『相対主義』っていうんだな」とかさ……。いちいち、一つひとつ、言葉が与えられていくわけ。
いん/ああ!……なるほどなあ。
よう/で、この本は入門書だから、さらっとしか書かれていないんだけど、「これ多分、掘っていったら、どんどん、自分の考えとかも深まって良いんだろうな」と思いつつさ……。振り返ってみると、……うーん……
(8分48秒)

よう/……「哲学」ってさ、例えば研究をやっていても、なんか、「ところどころで顔を見せる」っていうかさ……。
いん/見せますよねえ。うん、見せますよ。
よう/うん。……普段の実験の時とかは、考えないんだけど。
いん/はい。
よう/なんか……うーん……。例えば「研究予算の組み方」とかさ、もっと「上」のほうの話だから直接自分には関係ないんだけど、だが「自分のところにお金が来ないと困る」っていうような時にさ。
いん/はいはい。
よう/どうやって割り振るか、っていうときに……「基礎研究が大事だ」とか「科学って何なのか」とか「役に立つ、立たないってどういうことなのか」とかさ。
いん/ああ(笑)
よう/そういう時に、チラチラっと、「呼んだ?」って顔をして、“来る”んだよ、哲学が(笑)
いん/あ~(納得)……あははははは(笑)
よう/(笑)……で、「うん、呼んでるんだけど、でも、いい」とかいって、今までは断ってたわけ(笑)
いん/あはははは(笑)で、「何かあったら呼んでください」って感じで去ってくわけね(笑)
よう/そうそう(笑)「ご用ですか?」って(哲学が)来るんだけど、
「うーん、用事はあるんだけど、君に頼むと面倒くさくなりそうだから、ちょっとお引き取り願っていいですか」みたいな感じだったんだけどさ(笑)
いん/あっはっはっは(爆笑)
なんだ、あの……服屋の店員を断る、みたいな(笑)
よう/ああ、そうだね(笑)実は、ちゃんとプロのコーディネイトがあってさ。
いん/ありますね。
よう/色々学べば良いことがあるんだけど、「自分で考えるんで、いいです」みたいなさ……。
いん/ああ、分かるなあ……(しみじみ)。
(10分07秒)

よう/でも、これ……この本、すげえ面白くてさ、「ちゃんとこれを深めていけばいいんだろうな」って思うんだけど……依然として「めんどくせえ」っていう気持ちが、ちょっとある。
いん/めんどくさいですね……。
よう/うん。
いん/あの……先に「軽い話」からすると……
よう/うん。

いん/あの……オタクである方々が、「楽しいよ、おいで」って言ってるときに、「面倒くさそうだな」って言って見てるのと、おそらく同じことを言っているんですよね。
よう/ああ……! そうだなあ。「ハマる、ハマらない」って何なんだろうな。
いん/何でしょうねえ。
よう/うん。
いん/いや、前々回かなんかにお話しした、よう先輩の、ラボの後輩が『攻殻機動隊』とか『まどマギ』とかを出してきて、「この辺どう?」っていった、(いわば)「最初に提示する標本みたいなもの」と。
それにプラスして、サンキュータツオさんみたいな人が、解釈とか解析とか、「流れを用いて面白い話をしてた」っていう、「2軸」あってのものじゃないですか、「その世界に入っていく入口」って。
よう/そうだね。
いん/「哲学」もたぶん、両方うまく巡り合った人じゃないと入れない「オタクの世界」だと思うんですけど。
よう/そうだね。
いん/僕、哲学の場合って、「博物の段階」しか用意されてないことが多すぎると思うんですよね。
よう/その「博物の段階」って、どういうこと?
いん/例えば、「カントが」とか「デカルトが」とかっていう、名前を、いっぺんにあげないと、今の哲学の人達って面白くないんですよ。誰か一人だけを深く掘ってる人って、ほとんどいなくて。
よう/あ~、そうね。
いん/「あれも知って、これも知ってるから、この人が面白いんだよ」みたいな……「ヴィトゲンシュタインの言ってることは、誰々とは反対で」とか言う話をするわけですよ。「面白いでしょう?」って。
よう/はいはい。
いん/「面白くねーよ! ひとつも見てねえんだよ、俺は」っていう話になるんですけど(笑)
よう/あははは(笑)
いん/そこでたまに、入門書なんてのがあると、そりゃサンキュータツオさん1人が出てくるようなもので。
よう/うんうん。
いん/「面白そうに語るなあ、いいなあ。そういうつながりとかが見れたら面白いんだろうなあ~」……で、終わるんですよ、きっと。
だから、両方必要なんですよ、きっと。
よう/そうかあ……。
いん/「きっと」っていう話ばかりですけど(笑)
僕も実は、哲学に対しては、よう先輩と同じ感覚なので(笑) きっかけも欲しいし……。
よう/うん。じゃあ……例えば「哲学書を読む」っていう話になるとさ、しんどいじゃん。
いん/うん、しんどい。超しんどい。
よう/かなり、真剣に読まないと分からないし、誰かに教えてもらわないとダメだしさ。
いん/わかる。
よう/で、これまあ学問全般についてもそうだと思うんだけどさ。数学やるのも大変だし。
いん/はい。
よう/で、そこを乗り越えられる「何か」が必要なんだよね。「情熱」なり、「楽しさ」なり。
いん/そうですね。
よう/まあ「環境」でもいいよね。「周りに教えてくれる人がいた」とかさ。
いん/うん、そうですね、そうですね。環境、大事。
(13分00秒)

◆見てもらうための「サービス」

よう/……例えば、エンターテインメント作品ってさ、基本的に、見てもらうために色々とサービスがされてるわけだよね。
いん/……おっ!? なるほど、今、(僕が今まで)気づかない視点が来ました。なるほど、はいはい。
よう/だから割と入っていきやすいな~、とは思うんだよ。映画でもマンガでも、音楽でも、何でもさ。
いん/確かにね。
よう/音楽でもさ、完全にアカデミアに振っちゃうと、現代音楽になるわけじゃん。
いん/うん。現代音楽、すげえ面白いですよね、あれ。何言ってるか全然分からないけど、面白いっていうか。
よう/(笑)……で、まあ基本的にエンターテインメントって、「五感に訴えてくるもの」ですよね。
いん/そうですね。
よう/で、そういう意味ではだいぶ、ハードルが違うなと思うんだけどさ。
でも例えば俺、まあ例えば日本のロックについて、若干、イッチーに話を聞いたことがあったと思うんだけど。
いん/はいはい。……逆にあなたも、音楽の話はできますけどね。
まあ、そうですね、何回かありましたよね。そういうことが。
よう/うん。でも、だからといって俺が日本のロックシーンにハマるかっていうと、そうでもないんだよね。
いん/……それはたぶん、僕が、「この音楽とこの音楽を聞いて、この人の話をすれば、きっとハマります」っていう提示を、アニメの方のようには、できていないんですよ。する必要も感じていないのかもしれないけどね。
よう/……まあね。いやまあ、最終的な結論としては、「肌が合う・合わない」っていうのは、あると思うんだ。
いん/まあ、あるでしょうけどね。
よう/「好み」っていうのがね。だから、「無条件に好きと思える気持ちがあるもの」には、どんどんハマっていけるからさ。

いん/うん、うん。
よう/だから、いいんだけど。でも多分、哲学とかって、俺とイッチーは、嫌いなわけじゃないんだよ、たぶん。
いん/そう、嫌いなわけじゃない。「必要な原理」でもあるんですよ。
よう/だけど、なんとなくちょっと、遠目に眺めてるじゃん。
いん/そうですね……。
よう/まあ「ハードルが高い」っていうのも、もちろん理由としては大きいんだけどさ。……何なんだろうね。
いん/いやあ、まあ……。それにパッと答えられたら、苦労はしないんですけど。
よう/うん。
(15分12秒)

◆『中動態の世界』(医学書院 刊)

いん/ちょっと関連エピソードで、さらに混迷を深める話があって。
よう/うん、いいよ。
いん/「医学書院」っていう、医学書をいっぱい出している……
よう/ああ……。
いん/なんか本当に、すごいんですよ、巨大な……巨大? うん、「医学書の系列にしては巨大な」出版社があるんですけど。
よう/うん、うん。
いん/そこが、去年……かな? 『中動態の世界』っていう、國分 功一郎(こくぶん こういちろう)さんっていう哲学者の人に書かせた本が、ものっっすごい良い本で。
よう/ほう。
いん/賞は受賞するし、哲学書なのに売れるし。しかも、それを編集した人は、医学書として作ってるんですよ。医学領域として……。
よう/あ、そうなんだ……。え、ちょっと待って。
いん/医学領域なんですよ……。
よう/ちょっと待って、どういうこと? 哲学? 哲学者が書いた本だけど、医学領域から出ていて、内容も医学っぽい?
いん/医学っぽくは、「ない」んですけど。内容的にも医学の話は、ちょっとしかないんですけど。
よう/うん。
いん/何がすごいって、「医学書院」って、「医学書以外作りません」っていう出版社なんですね。
よう/うんうん。
いん/で、これは言ってもいいと思うんですけど、医学書院には、内規があって。編集者たちの間で。
よう/うん、うん。
いん/一般向けの本は出してはいかん、と。
よう/ははぁ~、はい。
いん/「医学書として出しなさい」というのが、まず大命題で。ただ、「医学書なんだけど、一般の人も読めるように作る分には、かまわん」っていうんですけど。
よう/なるほど。
いん/そこから哲学書が出て、かつそれを作ったのが伝説の巨大編集者で。
白石(しらいし)さんっていう人がいるんですけど、とんでもない人で、「出す本が全部売れる」っていう人なんですけどね。
よう/へえ~。
いん/その人が、長年手がけている「シリーズ ケアをひらく」っていうのがあるんですよ。
よう/ああ、そういえば(イッチーが)ツイートしてるね。うんうん。
いん/うん、僕「ケアをひらく」が出るたびにツイートしてるんですけど、出る本が全部素晴らしいんです。
「医療」とか「患者に対するケア」が、巨大なテーマ(縛り)としてある中で、本当に、好き勝手な本を出してくるんですよ。で、そこが目を付けたのが、哲学者の國分功一郎さんで……。
よう/なるほどな……。
いん/で、あまりに素晴らしくて。僕、目からウロコどころか眼球が落ちて真っ暗になるくらい、素晴らしかったんですよ。
よう/うん……あの、「視界が開ける」のか、「真っ暗になる」のか、どっちかはっきりしてほしいんだけど(笑)
いん/真っ暗になったんです、あまりにすごくて(笑)「今までの俺の目は、もう要らん!」みたいな
よう/ああ、なるほど(笑)
いん/で、それを出してきた編集者っていうのが……医学書の出版社に勤めているにも関わらず、人文系とか哲学に明るい。そういう素養があるわけで……。
よう/ああ、なるほどね。
いん/もっといえば、医学書院に努めている編集者なんて、エリートばっかりで。「早稲田で哲学やってました」みたいな人が、ゴロゴロいるわけですよ。
よう/はあはあはあ、そうなんだ。
いん/そう。で、そういう人たちが自然科学の世界に書を出す出版社にいて、医者とかにいっぱい本を書かせているわけですよね。
よう/うん。
いん/何なら、そういう本のほうが多いわけですよ。哲学者に頼むほうが少ない。
けど、奴ら、僕らが書いてる科学の話を見ながら、実は背景に膨大な哲学の知識があるわけじゃないですか……(笑)
よう/なるほどね。
いん/呆然とするんですよ、もう(笑) 僕は哲学については「まあちょっと、かじれればいいかな」くらいの意識でいるんですけど……。僕の書いたものを見て、編集者が「あれ、面白かったですね、切り口が。なんかヴィトゲンシュタインっぽくて」って言われると……「“ぽい”もクソも分かるかい!……そうなのかよ!」みたいな(笑)
よう/(笑)「俺の分からないものに例えるんじゃねえよ!」ってね(笑)
いん/でも、彼らにとっては……。素養があると、そういう切り口で読んで、面白い感想を返してきて。
よう/うん。
いん/で、冒頭の、先輩が言った話に戻るんですよ。「科学とかをやっているときに、そういう(哲学とかの)視線が、突然入ってくる」んですよね。
よう/うん、入ってくる。
いん/僕は、その、入っていることに気付かず……。僕が長年考えていたことは、どっかの哲学者がもう言っちゃってるんですよ。
よう/うん、言ってる。まあもともと、自然科学と哲学は一緒だったわけだから、当たり前だけどね。両方やってた人も、昔は多かったわけだからね。
いん/そうそう……。そういう話になると、最終的には、「告知の問題」とかを考えたときに……
よう/はいはいはい。
いん/「(告知の問題は)哲学じゃん」っていうのから……まあそれは、まだ分かるんですけど。
「疾病の分類」とか考えたときに、「自然科学を記載した自然哲学」だったりするんですよね。
よう/そうだね。「存在する」とか、「現象を記述する」っていうのも、全部、哲学の中で考えられているわけじゃん。「現象学」とかいうのもあるしさ。ニュートンだって、そうだしね。
いん/そう。あ、ニュートンの話でいうと、なんだっけ、プリン……「プリンキピア」?
よう/プリンキピア。うん。
いん/あれ、日本語訳すると、なんでしたっけ。自然……ええと、「自然哲学の数学的原理」っていう訳なんですよね。
よう/うん、そうだね。
いん/「自然哲学やんけ、万有引力!」って。そういうことになっちゃうじゃないですか。
よう/うん。

いん/本当は、そろそろ離れていられないんでしょう、哲学から。
よう/うん、常にどこかにはあるんだけどね、哲学ってのは。科学をやっていると。
いん/「科学をやっていると」ね……。
よう/うん。ただ、あまりにも「距離が遠い感じがする」っていうか、ね……。
いん/だけどなあ~……。
よう/でも、そのさ……やっぱり……う~ん。哲学って、すごく強力なんだけど。
いん/はい。
よう/それとともに、あまりにも強力すぎて……っていうか、「普遍的なもの」すぎて、日常で実験とかしているときに、哲学のこととか言われると、「いいからお前は今、だまってろ」っていう気持ちになる、っていう(笑)
いん/(笑)ちょっとイラってするというか……あははは(笑)確かに。
よう/そうそう(笑)「俺は今、このサンプルを取り違えないほうが、大事なんだよ!」とか、「サンプルをちゃんとゲルにアプライするほうが、大事なんだよ!!」と思うんだよ、何かさ(笑)
いん/あっははははは(爆笑)……分かるなあ、分かる分かる(笑)
よう/(笑)
(21分24秒)

いん/……いやあ、でもねえ、病理とかやっててもですね……。その……「分類って何なんだ」みたいな話を考えるのとは関係なく、……細胞を探してたりするわけですよ。
よう/そうそうそう、ほんっとに、局所戦を戦っているわけだよね。
いん/そうそう(笑)「ちょっと哲学、黙っててくれ」と(笑)
よう/そうそう(笑)
いん/「今ここで、あの種類の炎症細胞があるかないかで、分かれるわけ」って。カウント(?)とか、したりするわけですよ(笑)
でも、哲学のことを考え始めることはあります。「ここで、俺が『ある』っていうのと、『ない』っていうのと……『ある』と『ない』ってなんだ!?」とか、そういう話になっちゃうんですよ(笑)
よう/なるほど。「存在について」とかもね、ちゃんと哲学的に考えられていることだからね。
(♪チャイム音)
(22分02秒)

よう/いやあ、やっぱり、そうだなあ……。まあ、日常生活の習慣って言うか……もしもし?
いん/……あ、はいはい。
よう/「習慣」って、強いじゃん。
いん/強いですね。
よう/そういうのに、飲み込まれてしまっているだけかもしれないけどね。
いん/いやあ、あの……三省堂池袋書店の、選書フェアの話で……。
よう/うん。
いん/1回話した本……中井 久夫(なかい ひさお)さんという人の。
よう/はいはい、精神医学の権威だっけ。
いん/そうそう、あの本。「もう今、休版していて手に入らないんですけど、どうぞ」って言われて読んだ本がめちゃくちゃ面白かったっていうエピソードの。
よう/うんうん。
いん/とにかく、フェアでおすすめしようにも、今、版が重ねられていないから、手に入らなくって。でも「手に入らないんですけど、僕はこの本が一番好きです」とかいうことを、編集者が言うわけですよ。
よう/はいはい。
いん/メガネのイケメンで、むかつく人なんですよ、本当に。
よう/(笑)
いん/すんごいカッコいいの。なんていうか、スーツのジャケットを脱いだ状態、つまりワイシャツの上に、直接、ロングコートみたいなのをぴたっと着て、さっそうと歩いてきたりするわけですよ、小さなカバンとともに。
よう/はいはい。うん。
いん/で、「先生、お元気ですか?」とかって。「こいつ腹立つわ~、イケメンっぷりがムカつくわ~」って感じの人が、メールで「本のおすすめで、フェア向きではない……っていうかこの本、もう手に入らないんですけど、どうですか」って言ったときの、あの……
よう/うん。
いん/「バックに持ってる豊富な人文の知識からひねりだされた医学書のオススメ」っていうのは、本当に、何十回殴られてるか、っていう気になるんッスよ、僕は……。「ハ ラ 立 つ ~!」みたいな(笑)
よう/まあね(笑)……ちゃんと、今回もイッチーのルサンチマンが覗いたところで、ね(笑)
いん/あっはははははは(笑)
よう/いやいや(笑)あるからね、それぞれに(笑)
いん/哲学とか人文を拓きたい、確かに(笑)……どうしていいか分からないけど……(笑)
(24分04秒)

◆『ゆるキャン△』の作者の新作

よう/そうだね(笑)……まあ、今日話したいことは、話し終わったんだけど(笑)……どうする?『ゆるキャン△』の話でも、する?(笑)
いん/『ゆるキャン△』の話は……また次回にでも、取っといたらいいじゃないんですか(笑)
よう/『ゆるキャン△』ね……俺、やっぱり、そうだなあ……
いん/あ、するんだ(笑)
よう/いやいや(笑)『ゆるキャン△』、『三ツ星カラーズ』、『よつばと!』、そして最近は『ぱらのま』。
いん/ああ、『ぱらのま』……。
よう/この辺が、やっぱ最高だなと思うね。
いん/先輩、その5つめになるかどうか分からないんですけど……僕、まだ読んでないんで。
よう/うん。
いん/こないだ、Amazon 開いたら、Amazonの「おすすめ」がだんだん、アニメ寄りになってるんですよ。たぶん、興味があってチラっと検索したりするから、出てくるんでしょうね。
よう/ああそうか、うんうん。
いん/で、その中で、『ゆるキャン△』の作者の、あfろさん(読み:あふろさん)って人が、最近新しくマンガを出してて。
よう/ほう。
いん/ちょっと、名前ド忘れしたんですけど……「あfろ」で検索したらすぐ出てくるはずなんです。新巻が出たと。
よう/ああ、そうなんだ。
いん/それが、なんか女子高生が主人公で。僕は、その人(あfろさん)だって知らずに、でも絵柄ですぐ分かったんです。「『ゆるキャン△』の人だ!」って。
よう/うん。
いん/え~とですね……まだちゃんと、あらすじすら読んでないんですけど。確か、映画研究会かなんかに属する4人の話、みたいなので……。「これ、面白いに決まってるべや」と思って。まだ1巻なんです。
よう/なんかね、映画研究会のやつって色々出てるよね。なんか、映像研……。
いん/それ『げんしけん』とか ……あ、いや違うか。
よう/『映像研には手を出すな!』だっけ。
いん/ああ、そうだ。『映像研には』……ああ、いやそれで、あfろの人の新作は、たぶん面白いんで……僕まだ読んでないですけど、収録が終わったら、電子書籍でダウンロードして、読みます。今、思い出した。読もうと思ってたんだった。
よう/そうか……じゃあついでに、『三ツ星カラーズ』も読んでよ。
いん/『三ツ星カラーズ』って、何巻くらい出てるんですか?
よう/5巻くらいかな? ちょっと正確じゃないけど。
いん/分かった、読みます。読みましょう。
あの、これね……良くないんだ。
僕ね、フォロワーの、アイカワっていう尊敬している人に、オススメされたマンガ、全部スマホにいれたら……まあラノベも入れたかったんですけど、マンガいれたら、容量パンクしたんですよね。しかも、ついに……パンクのせいか分からないんですけど、スマホの調子が悪くなってきて、最近、カメラが起動しないという……もうね、どんだけダウンロードしてるんだっていう(笑)
よう/(笑)え、イッチー、何GBあるの?スマホ。
いん/確かこれ、25GBとかなんですよ、使える容量が。
よう/え、マジか……。それ、いっぱいになるんだ。
いん/あ、いやそれは、マンガだけじゃないですからね。でも、マンガだけじゃない……音楽も入れてないんですけどねぇ~……。
よう/うん。
いん/いや、こないだも『皮膚病理イラストレイテッド』を丸ごと入れてみたんですけど、代わりに、何だったかな。何かのマンガで、最近アクセスしていないやつを、端末から削除しましたもんね。あまりにひどくて。
よう/ああ、そう……。まあその、あfろ先生のやつね。
いん/そうそう。で、『三ツ星カラーズ』?
よう/『三ツ星カラーズ』。
いん/検索しよう……。
よう/これはたぶん、イッチーでも全然楽しめると思うなあ。さすがにほら、『うちのメイドがウザすぎる!』とかさ、そういうのは「読んで」とは言わないけど。
いん/うふふふ(笑)
よう/あれは「最高だ!」っていう話を聞いてほしかっただけだからさ。
いん/(笑)あ、あった。『三ツ星カラーズ』、見つけた。「まとめ買い」って書いてある。
よう/うん。
いん/買いました。あはは、「買いました」って(笑)
よう/あはは、バカみたいだよね(笑)……「『よつばと!』の新刊も、いつ出るんだろうな~」とかさ……。
いん/ああ、出ませんからね……。
よう/まあね……あのクオリティのものが、そうそうポンポン出て来てたまるか、っていうのもあるから、いいんだけどね。
いん/あ、あfろの人の……あfろの人じゃなかった、『ゆるキャン△』の人の新巻(新作)は、『mono』(モノ)。
よう/あ、『mono』ね。あ、出てきた出てきた、これかあ。
いん/面白そうだと思ったんですよね……。
よう/あ、絵柄もそうだね、完全に『ゆるキャン△』の人だね。
いん/ああ。写真部と映画研究会を合わせた「シネフォト部」の女子高生3人と、マンガ家の人が主人公、って……。
よう/ああ……なんかこの人って、やっぱりアウトドアみたいなのが好きなんだね、「どっかに行ってなんかする」みたいな。
いん/この、魚眼レンズの構図って、遠目に見たとき、絶対そうだと思って。
よう/ああ、出てくる、出てくる。
いん/あ、買いました、買いました。あはははは(笑)
よう/よし(笑)じゃあ今日は、こんな感じでいいですかね。
いん/はい、ありがとうございました。
よう/はい、ありがとうございます。

(♪)
(おわり:29分15秒)

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