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[文字起こし]第37回【仕事道具の話】

皆様、この歴史的な大連休はいかがお過ごしでしょうか。約200年ぶりに「上皇」が誕生し、平成が終わり、「令和」になりましたね。Windowsとmacの時計は平成31年のまま5月に突入したようですが(笑)
(※画像はこれをアップしているときの私のPCより)

風邪が治りきらないので、お出かけ予定をほぼキャンセルしておとなしくパソコンを触っております。あんまりクリエイティブ系な作業をすると間違いまくるので、黙々と文字起こし。今回は、仕事道具の話ということでなかなかにマニアックなお話となっております。ピペットマン、懐かしい(^^;

(♪)

よう/仕事道具って、いろいろあるじゃん、お互いに。
いん/仕事で使う道具ね。はいはい。
よう/まあ俺だったら、実験関係の機器とか、試薬とか。一番身近なものだと、「ピペットマン」っていうものがあって。
いん/おお。
よう/1ミリリットル(mℓ)以下の液体を取る機械、だよね。
いん/……あれは、分からない人には何と説明すればいいんですかね?
よう/う~ん、なんだろうね。なんか「ペンのデカい奴みたいな形をしてて、上に、シャーペンみたいにカシャカシャ押すところがあって……」
いん/はいはい、ノックするような、押し込むところがあって。
よう/そうそう。で、「それを押し込んで、液体の中にピペットマンの先端をつけて、押し込んだのを戻すと、その分だけ液体を吸い込む」と。
いん/はいはい。そうでしたね。

よう/で、一番小っちゃいやつが 0.5マイクロリットル(μℓ)から2マイクロリットルくらいまで取れて。……1マイクロリットルって、1ミリリットル(mℓ)の1000分の1だよね。
いん/おおお(笑)そうですね。
よう/だいたい(容量別に)4種類くらいあって、一番小さいのが 0.5~2.0 で、その次が 2.0~20、さらにその次が 20~200、最大のが 200~1000(マイクロリットル)。
いん/懐かしいな~(笑)
よう/でも病理検査室でも、技師さんは使ってるよね。
いん/そうみたいですね、うん。
よう/免疫染色のときとかに。まあ、生物系とか、化学(ばけがく)系の人もちょっと使ってるかな。かなり有名で、(その分野の人なら)誰でも持ってる道具……
いん/そうですね。
よう/まあ、それでも1本、数万円するけどね。


いん/テレビCMとかでも、化粧品のCMとかで、「企業の努力」を表現するときに、白衣を着た女の人がちょっと(ピペットマンで)試薬を使ったりしていますよね。
よう/ああ、やってるね。
いん/あれ数万円くらいなんでしたっけ?
よう/え~と、まあブランド品とそうじゃないのがある、っていう話なんだけどさ(笑)
いん/ああ、そうなんですか、あははは(笑)
よう/ギルソン社の高いやつは、結構するけど、最近、他の会社もいっぱい出してて、そういうのは、もうちょっと安いかな。
いん/そうなんだ。僕が最後に使ったの、もう12~13年前だもんな……。


よう/まあそういうのがあるわけだけど。いっちーは……やっぱり顕微鏡? 一番使うのは。
いん/そうですね、仕事で使うって言うと……顕微鏡って言うのは据え置きですからね。だから、そうだなあ……割とハードに近い……ソフト的に使うんですけど、ハードに近いのが顕微鏡ですよね、どっちかというと。
よう/うんうん。あれってさ、どれくらい自分で調整してる
いん/ええとですね、僕の使っている顕微鏡って、両手を顕微鏡の両脇に置くんですけど、両方の指でボタンを押すと、電子的にガシャンガシャンって変わるんですよ。
よう/ええと、「倍率が変わる」ってことだよね? 対物レンズが動くやつだよね。
いん/そうですそうです。対物レンズのついてるとこの、レボルバーってやつがガシャンガシャンって変わるんですけど。
よう/うん。
いん/その、まわった時に、光量とか、ピントまで合うんですよ。
よう/あ、そうなの!?
いん/そうなんです。
よう/……マジか……すごいな。


いん/ところが、そのピントってのが結構微妙で。置くプレパラートがちょっとでもズレたら、ピントなんて、全部ズレるじゃないですか。
よう/まあね。
いん/だから、長いこと使っていると少しずつピントが甘くなってくるんで、その電子制御がズレてくるやつを自分で調整する、っていう作業があるんですけど……。

よう/ああ、そうか。毎回自分がマニュアル(手動)でちょっと微調整するんじゃなくて、電子的にピントを合わせるところ自体を調整するんだ。
いん/や~、一応それ、できるんですけどね。ある時、毎回マニュアルで自分で合わせているのに気が付いて、「これはデフォルトをいじったほうがいいんじゃね?」と思って、設定やり直そうとしたんですけど、ま~ぁ、これが面倒くさいんですよね(笑)
よう/あははは(笑)
いん/「便利になっているはずが、調整がめんどくさい」みたいな……そういうことは、あります。
(04分00秒)

よう/あ~。あのさあ、ちょっとマニアックな話になるけど、光軸って合わせる?
いん/光軸は……むしろ、ズレるようなら、それは「安い顕微鏡」なんですよ。
よう/ああ、そうか。じゃあ、(いっちーが使ってるやつは)ほとんど合わせなくていいってこと?
いん/そうなんです。……っていうかですね。高い顕微鏡であればあるほど光軸がズレてないんで、のぞきこんでも酔わないし、疲れないんですよ。

よう/……いやあ~、ウチに置いてある顕微鏡、すごいズレたままで使ってるなあ……(笑)誰も直そうとしなくて、俺もそれでいいやと思って使ってるけど(笑)
いん/あははははは(笑)
よう/まあ、使っている時間の長さが全然違うからね。
いん/そうですね。
よう/うん。

いん/あとは、光学顕微鏡で診断目的のやつは、光軸をすごく大事にしているんですけど……
よう/うん。
いん/実習で学生さんが使うような顕微鏡は、光軸がズレズレで……
よう/いや~、あれは本当に見るだけでツラいよね。
いん/そうなんです。
よう/だからさ、そういうので顕微鏡がイヤになってる人はさ、高いのをいっぺん見てほしいよね。
いん/まったくその通りですね。
よう/全っ然、違うものだからね。
いん/全っ然、違います。ほんとによく言うんですよ、医学生なんかも「顕微鏡で酔うから、病理医なんてあり得ない」って。
よう/うん。あれ、何に例えたらいいのかなあ。「安物の機械」ってことだよね。


いん/あれはですね、例えというか、僕、自分で経験してみて分かったんですけど。実習用の顕微鏡って、「乱視」なんですよ。
よう/左と右で合ってないってこと?
いん/光軸がズレてるんですけど、軸がズレちゃってるから、どう倍率を変えても絶対に合わない。どう見たって、目にすごい変な力がかかる。あれは「顕微鏡が乱視になっちゃってる」
よう/だから、そういうボヤけた状態で見てるから、そりゃ酔うよね、って話だよね。
いん/そう、酔うんですよね。それが、高いやつで見ると、ただ両目の幅にさえ合わせれば、あとは快適というか、なにも困らない。
よう/そうだね。
いん/きっと「乱視の人が初めてメガネかけた時」くらいの感動があるんじゃないんですかね(笑)おそらくは……。

よう/確かになあ。いや、顕微鏡でいうとさ……
いん/はい。
よう/ええと……。いっちーは基本的に光学顕微鏡……まあ全部、光学なんだけど。う~んと、いっちーのは「普通の照明で見ている」ものが多いと思うんだけど。
いん/はいはい。
よう/俺が使っているのは、ほとんど蛍光顕微鏡でさ。
いん/そうですね。
よう/「強い光をあてて、タンパク質を光らせて見る」っていうのが、ほとんどなんだけどさ。そうすると、光を当てたりするために、レーザーとかが必要になってきて。
いん/そうですね。
よう/で、検出するのも普通のカメラとかじゃなくて、割といろんな種類があって……
いん/はいはいはい。
よう/ええと、光電子(こうでんし)……なんだっけ? 「フォトマルチプライヤー(photomultiplier)」っていうんだけどさ。日本語で言うと「光電子管」?

いん/おおお(笑)よく覚えてますね(笑)ほうほう。
よう/あのね、「カミオカンデ」ってあったじゃん。
いん/ありましたね! なんだっけ、長野県かどっかに……。
よう/そうそう。地中深くにさ、ニュートリノを検出するために、すっげえデッカい水槽があってさ。
いん/はいはい、分かる分かる。
よう/そこにいっぱい検出器を並べて、「ニュートリノが通った時に、水分子に衝突して光だか電子だかが出るのをとらえる」って言う機械なんだけど。
いん/はいはい。

よう/その水槽のまわりに、びっちり付けられてるのが、フォトマルチプライヤーなんだよね。
いん/ああ、そうなんですか!へええ~!(笑)
よう/こうでんし……「光電子増倍管(こうでんしぞうばいかん)」だね、日本語では。で、なんか俺、(カミオカンデに使っている)実物を博物館か何かで見たことがあるんだけど、両手で抱えるくらいの大きさがあるのね、1コが。
いん/へえ~!

よう/で、俺らが顕微鏡で使っているのは、もっとちっちゃい奴なんだけどさ。すごい弱い光をとらえる……あ、違うか。逆かな? デカい方が、弱い光をとらえられるのかな?
いん/あ~、どっちだろ? デカい方が弱い光をとらえられるのかもしれませんね。うんうん。
よう/うん。まあ(光電子増倍管の基本的な働きとしては)「光を電気に変える」っていうものなんだけどさ。
まあ、そういうのを使ったりしてやってるから、だいたい1つのシステムが、種類にもよるけど、だいたい数千万円くらいするんだよね。
いん/あ、そんなにするんですか、アレ。
よう/うん、共焦点顕微鏡っていうやつとかだと。

いん/ああ、ありましたねそういうの。僕、一瞬しか使ったことないですけど……(笑)そうかあ……いやだから、僕らが使っている光学顕微鏡と比べると、桁が2桁以上、違うんですよね。
よう/えっと、いっちーたちが使ってる顕微鏡って、高いやつで100万~200万円くらい?
いん/高いやつで……300万~400万円ですかね。
よう/そうだよね。
いん/それでもだいぶ、高いですけどね。
よう/いやでも、光学顕微鏡本体プラス、電子制御(制御系)で300万~400万円って、相当な高級品だよね。
いん/そうです。今は逆に、それくらいの高い顕微鏡は、むしろ買いづらくなってるはずですね。
よう/あ、そうなんだ。
いん/もう一段、安いやつが汎用機として出てるんで……
よう/ああ、そりゃそうか……。
いん/そうです。
(08分54秒)

いん/いやでも、顕微鏡は高いですけど、それにしたって共焦点になると、更にそこから1桁、上がりますもんね。
よう/上がる上がる。1000万円はするね、どうしてもね。まあ、もっと高い顕微鏡もあるけどね。
いん/あ、そうなんですか?
よう/ええと、多光子顕微鏡とか二光子顕微鏡っていうやつね。マルチフォトン……なんとかっていう。

いん/へええぇ~! それ、何を見るんですか?
よう/ええとね、生体組織の奥の方まで見えるやつなんだよね。
いん/ああ……。何だっけ、共焦点って上の方しか見えないんでしたっけ?
よう/まあ普通はさ、厚みのあるものって、共焦点とかに限らず、見えないじゃん。
いん/ああ、「どんな顕微鏡であっても、普通は見れない」と。
よう/うん。でも二光子顕微鏡って、「光子が2つ以上、同時に見るものに吸光されたときに、初めて励起する」んだよね。
いん/ほぉぉ~!初めて聞くなあ、それ知らないなあ(笑)

よう/うん。普通、1コの光子が飛んでって、光る物質に吸収されて、励起されて、そこからまた光が出ていくっていう仕組みだけど……
いん/ふむ。
よう/波長が長い光子を当てることによって、2コ……「波長の長い光子ってエネルギーが低いから、2つ以上同時に吸収されないと励起しない」っていう原理を使ったもので。
いん/えええぇ~。
よう/で、長い波長だと、結構、生体の奥の方まで通るんだよね。
いん/そうですよね~。ええ、分かりますよ。
よう/プラス、バックグラウンドの自家蛍光、つまり「見たくない蛍光」がすごく少なくなるっていうね。2コ吸光されることって、ほとんどないから。
いん/1コでやってくるノイズみたいなのは観測しなくて済む、と。
よう/そうそう。それはまあ、「億」単位の機械だけどね。
いん/億単位……いや僕、それ、知りませんもん。それ最近のですか? それとも、前からありました?
よう/う~ん、モノ自体はたぶん、20年前くらいからあるけどね。
いん/そうなんだ、知らなかった……。

よう/でも、使ってるとこしか使ってない。汎用機ではないね。
いん/ああ。そんな機械、だって……
よう/車で言えば、ランボルギーニくらいの……いや違うな。F3000(フォーミュラ3000)くらいあるんじゃない?(笑)
いん/あははははは(笑)
よう/共焦点顕微鏡が、ポルシェだとしたら……(笑)
いん/あははは、もうそこがポルシェ(笑)
よう/そう(笑)だって普通は……いわゆる普通の光学顕微鏡って、100万円からだよね。それを車でいうと「トヨタの普通の乗用車」みたいな。
いん/まあ、一番いいやつでもアルファードくらいというか(笑)イメージとしては……。
よう/値段に比例してるよね。だって、300万~400万円って、結構、高級車じゃん。
いん/そうですよ、いいやつです。
よう/そう、いい車。だけど、1000万円くらいする車もあるよね?
いん/うん。でもそうなってくると、やや意味合いが変わってくるというか……(笑)
よう/うん、そう。で、それくらいまでだと、俺らも使うんだけど、もっと専門的に顕微鏡を使っている人たちの道具としては、二光子顕微鏡とかがあって。それはもう、ほんと億単位だから。
いん/すげぇな……。
よう/だからまあ、「レース用」みたいな感じだよね。
(11分56秒)


いん/ていうか、そういう顕微鏡を使わないとできないような研究っていうと、それだけでラボの実力が問われちゃいますもんね。
よう/まず、買えるラボが限られてくるからね。
いん/その「予算」は、なんでしたっけ、「CREST(クレスト)」みたいな大型予算を取って、それで買うんですか?

よう/そうだね、大型予算を取って自分たちで買ってるか、あるいはまあ、学部とか研究所の共通機器として買うか。
いん/はっはぁ~!なぁるほどな~!!
よう/ただまあ、共通機器として買うにしても、それ用の予算を取れるところって、そんなにないからさ。
いん/そうですよね。
よう/結局、限られてくるよね。
いん/ふむ……。あれ?「学部の共通機器」っていうと、誰がお金出すんですか? その学部の中のいくつかのラボが出し合って買う?
よう/いや、どうなんだろう……
いん/違いますよね、きっと。
よう/多分、学部ごとに、競争的に予算を取ってくるんじゃない?上からは降って来ないと思うから……。
いん/ですよね~!!そんな巨大な額が降ってくる大学なんて、どこにもないですもんね。

よう/ないね。理研とかだとまた、話が違うだろうけどね、わかんないけど……。大変なのは同じなんだけど、彼らは彼らで、大学とは違う予算組みがあるからさ。
いん/そうですね(笑)……しかし、こういう話だったら、今やっぱり世の中では……こう……先輩みたいな人じゃないと、話せない世界ですよ、これ。僕が普段、一緒に働いている医者たちも、こういう話は知らないと思いますよ。
よう/ああ。研究されてる方はいるだろうけど、研究の内容がちょっと違うからね。……でもあの、ガンの基礎研究を、けっこう本格的にやっている、医学系の人だったら、そういう……いわゆる「基礎研究の機器」を使っている人も、結構いるんじゃない?
いん/いるとは思いますけどね。ただ、例えば今、ネットとかで「研究に詳しい人」で、「発信している人」って、割と、若い人が多くて。まだ予算どうこうまで知らない人のほうが、発言が多いんですよね(笑)だから、あんまり……
よう/ああ……。
いん/あんまり、実験機器とかの詳しい予算組みを話せる人って、少ないんじゃないかなあ、ぱっと見たところでは……(笑)


よう/まあね……あの……でも俺は、まだ詳しくないよ。
いん/そうですか?(笑)
よう/例えば、仲野 徹(なかの とおる)先生っているでしょ?

いん/いますいます(笑)
よう/あの先生は、もう「教授」だし、自分で予算も取ってきてさ、色々、大型の研究予算の中にも入ってやってるから、多分、俺より全然詳しいよ。
いん/「おもろい大阪のおっちゃん」みたいな人。
よう/そうだけど、偉いんだから!あの先生(笑)
(14分33秒)

いん/こないだ、Twitterで怒られましたよ、僕。
よう/ほんと?
いん/あのこれ、いずれ語る機会もあろうかと思うんですけど(笑)自分の本の中で書いた話なんですけどね。
よう/ああ~、なるほど。
いん/「学生さん落第させまくってる」って書いたら、「落第はさせてない」ってツッコまれました(笑)「あ、やべぇ」って思って(笑)あははは、怒られちゃった(笑)
……まあ、この話は、またいずれ……。
よう/……そうですか……。
いん/きっと、直接会ったら怒られる……。
よう/うん、結構ね、「大学院生の幸せ」みたいなのも、ちゃんと考えてくれてる先生だからね。そういう発言もされてるからね。
いん/そうですね。
よう/うん。

いん/あと、僕なんか末端の病理医ですけど……基礎研究のほうにどっぷりつかっている人の話も、漏れ聞こえてくるんですけど、やっぱり「予算どうやってとるか」みたいな話を皆に楽しく話せる人って、一握りなんですよね。
よう/まあ、予算のことはね……(笑)でも、お金のこと……まあ「楽しく」だとね、確かに難しいな。お金の話って、皆が実感を持って聞けるっていう話だからね。面白いかはともかくとして、実感は持てるよね。
いん/おまけに、「その取ってきたお金が、自分の懐には一銭も入らない」って、そこそこ物珍しさがあるんですよね、やっぱり(笑)
よう/ああ……まあね。でもそれは、企業とかでも、何かプロジェクトがあって、予算があっても、それが別に自分の収入になるわけじゃないからね。
いん/ただですね、一般企業の場合、大きいお金を動かしている人たちは、それとは別に大きいお金をもらってるんですよね(給料として)。
よう/まあね、そうかもね。
いん/そんな大きいお金を動かせる地位にある人たちっていうのは、もともとの給与も高かったりするんですけど……。
なんか、基礎研究の世界ですごいお金を動かしている人たちって、そんなすごい給料もらってない気がするんですよね(笑)企業と比べると……。
よう/そうね、まあね……。アメリカとかは、また制度が違ったりするみたいでさ。
いん/アメリカは違うでしょうね……。
よう/自分の研究予算から、自分の給与を出せるみたいだよ。
いん/……マジですか!?
よう/うん。
いん/ええ~……それは巨大なことになるなあ……すごいなあ……(笑)
よう/まあその、道具の……
いん/あ、そうそう道具の話だった(笑)
よう/そうそう、予算の話じゃなくて、道具の話なんだけどさ(笑)
(17分00秒)

★次世代シーケンサー

いん/先輩は、まだピペットと顕微鏡の話しか……あと、なんか「コレ」って話はないんですか?
よう/ん~、やっぱり「次世代シーケンサー」っていうのは、ここ10年か20年の間に出てきた技術の中で、一番インパクトがあったなと思うけどね。まあ、特に俺がやってる領域がそうだっていう話もあるけどね。

いん/ああ~!!……「次世代シーケンサーって何ですか?」っていう話をされたことが、2回くらいあるんですけど。
よう/うん。
いん/臨床医から。医師が分かんないって。たまたまそばにいて、「何?」って言われたから、説明しようと思ったんですけど……。どうやって説明すればいいんですかね?アレ。
よう/「めちゃくちゃいっぱい読めるヤツ」だよね(笑)
いん/ん?……ふふふっ(笑)DNAを。
よう/(笑)そうそう。DNAの……塩基配列っていって、ゲノムのATGCってのがあるわけだよね。
いん/遺伝子プログラムのね。
よう/ヒトだと、だいたい30億個、並んでるわけだよね。
いん/30億のATGCが、ランダムみたいに、うわーっと並んでる、と。
よう/そうそう。ATGCってのは「塩基(えんき)」って呼ぶから……100塩基とか200塩基とかって数えるんだけどね。
いん/はいはい。

よう/それが30億塩基あるっていうと、昔は、その並びを全部決定するのが、すごく大変だったんだけど。
それは何故かというと、昔の「サンガー法」ってやつは、1回に機械で読めるのが……ええと、1000塩基を100種類だったかな? だから、1回に10万塩基しか、決定できなかった。まあそれでも十分、すごいんだけどさ。
いん/10万で30億と戦うのは、無理ですよね……。

よう/そうそう。だから、「ヒトゲノムプロジェクト」ってのがあったけど、何年も掛かってたわけじゃん。
いん/アレ終わったの、いつでしたっけ?
よう/20年くらい前?
いん/けっこう前に終わりましたよね。
よう/そう。それも、けっこう前倒しで終わったから「すごいな」って思ってたんだけどね。
いん/そうですね。

よう/10万個を1回で読むっていったけど、その1回が確か、24時間くらいかかるのかな。
いん/ああ、そうなんだ。10万個読むのに。……え、(全部で)30億でしょ?(笑)
よう/そう。で、単純に言えば、3万回読めばいいのかな? 機械を並べて、毎日(解読を)かけ続ければ、出る。
いん/3000回? 3万回?……3万日?
よう/まあ、1台だったらね。
いん/ああそうか、機械をいっぱい並べれば……なるほど。そりゃ膨大な時間が掛かるプロジェクトですよね。


よう/そうそう。で、今のやつは、どれくらい読めるんだったかな? ええと、ちょっと待てよ……2億リード……8レーン……? 正確には分からないけど、めちゃくちゃマックスで掛けたら、……ええと、10億の300だから……たぶん、1000億塩基くらい、一発で読めるんじゃないかな。
いん/……は!? え!?!? あ、そんなに……? だから次世代シーケンサーって強力なんだ。速いんですね……!
よう/うん。まあ、ラン(RUN)は1日~2日くらい、かかるんだけど……

※追記※ この「ラン」の意味について、よう先生にお聞きしたところ「ボタンを押して、起動から当該作業が全部終わるまで」というイメージだそうです、念のため。


いん/おお……。じゃあ、ものの1日もあれば、今まで何年もかからないと読めなかったくらいの塩基配列が、読めちゃうと。
よう/うん。ヒトゲノムは今、一発で読めるよ。
いん/ヒトゲノムだったら、一発で読めると。はああ~、なるほどなあ……。
よう/うん。
いん/そりゃあ、インパクトですよね。
よう/インパクト、あるある。まあカネは掛かるけどね。
いん/あれって、1回いくらくらい掛かるんですか?
よう/ぜ~んぶ、最初っから入れると、何百万円か、かかるね。


いん/ああ、そうなんだ……ふ~ん……。じゃあその、次世代シーケンサー……ええと、Next Generation Sequencer で「NGS」でしたっけ?(笑)
よう/そうそう。
いん/「なんてバカな名前つけたんだろう」って思いましたけど(笑)
よう/あはは(笑)
いん/「NGS 1回」っていうのは、先輩が研究やってるときに、読みにいくことって、あるんですか?
よう/あるある。
いん/あるんだ! へええ~、そんな時代なんだ!! ええええ……。
よう/うん。
いん/……「そこからビックリなのかよ!」「どんだけ基礎的な部分からだよ!」って言われそうだけど(笑)

よう/ちょっと専門的な話になるんだけど……
いん/ええ、今日はメチャクチャ専門的ですけど(笑)どうぞどうぞ(笑)
よう/(笑)ええと、「メッセンジャーRNA」っていう、「遺伝子からタンパク質になるまでの中間産物」があるよね。
いん/おお。
よう/「どの遺伝子が、どれだけ働いているか」を調べられるものでさ。
いん/はいはい。
よう/神経の細胞だったら、神経の遺伝子のメッセンジャーRNAがたくさんある、っていうさ。
いん/実働部隊というか「(塩基配列を)実際に読んだもの」というか。
よう/そうそう。で、それを1つの……ええと……全種類のメッセンジャーRNAを一挙に調べる方法があってさ。1つの細胞にだいたい、数千~数万くらい発現しているんだけど。
いん/……だいたい30億の塩基のなかから、メッセージとして読み取られているものが、3000くらいある?
よう/数千種類くらいある。
いん/ああ、数千種類。1度にそれくらいあるんだ。
よう/うん。で、昔はそれを「マイクロアレイ」っていうやり方で、全部調べてたじゃん。
いん/ああ、そうですね。

よう/それが今、「RNAシーケンシー」っていう、次世代シーケンサーを使った方向に全部、置き換えられてるんだよね。
いん/はっはあ~……なるほど。
よう/この手法は、臨床系でもなんでも、使ってる人は使ってるよ。
いん/それは便利ですよね。


よう/うん。で、自分で実際に機械を動かすっていう人はあまりいないけど、今はもう、外注できるから……。
いん/ああ……。
よう/だいたい、1サンプル数万円くらいで外注できるから。
いん/そんなもんなんですね……はぁぁ、そりゃすごい……。
よう/うん。だから、そういうサンプルをいっぱい集めて、一気に次世代シーケンサーで読むんだよね。
いん/はっはぁ、なるほどなあ……。1回で何十億とかの単位で読めるってことは、いっぱい集めてきて、一気にガーッと読んじゃえばいい、と。
よう/そうそう。何十サンプルかを、一気に読む。
いん/ああ……桁が違うな、すごいな……。
よう/うん。だから、1台あたりってことで考えると、少なくとも1万倍は読めてるね。
いん/それは、道具としてはやっぱり画期的ですよね。


よう/画期的だよ(きっぱり)。そして、少なくとも生命科学の研究って、技術の進展が……技術のブレイクスルーが起こったときに、一番研究が進むって、皆、言ってるんだよね。アイデアとかじゃないんだ。
いん/ああ……なるほどなあ。いい道具が出て……。
よう/そう。仮説とかが先行しない学問だからさ。まず実証だから。
いん/確かになあ……。
よう/皆が「こうかなあ?」って思ってても実験できないことって、たくさんあるわけだよね。
いん/ありますねえ。
よう/だいたい皆、考えてること一緒でさ。新しい技術が出てくると、皆、ワーッって集まってきてさ。
いん/そうなんだ……。


よう/うん。で、カネがある・おっきなラボの・有名なボスのほうが、そういうのを先に使い・いい結果を出し・より存在が大きくなっていく、っていうさ……。
いん/そうですね、「金持ち、勝つ」の法則みたいになってきますね……
よう/ほんっとにそう。だから、ど真ん中のことをやろうとすると、金持ちが勝つ。
いん/確かになあ……。それは、いろんな研究者がもう、何億回となく同じグチを言ってきたと思うんですが(苦笑)
よう/グチだね、ただのね(笑)
いん/なんか、「自分だけが持っているセレンデピティ」とか、「突飛なアイデアがすべてを!」みたいなことを、皆、多少は夢見てるんですけど、そんな世界、めっったに(強調)、ないですよね……

よう/めったに……ある、あるよ。たまにそういう論文を見て、「素晴らしい」って思うんだけど……なかなか無くてさ。だいたい……なんか、予算の力で、ブルドーザーに押しつぶされていくよね。
いん/ああ……なんか、この『いんよう!』で「ブルドーザー」っていう言葉が出るの、3回目くらいだと思うんですけど……
よう/そうだね(笑)
いん/これは、やっぱりキーワードなんですよね……ほんっとに、そう。分かる分かる(笑)そうなんだよなあ……。道具っていうか……道具の話になると、そういう話になるんですね。


よう/そう……だね。もっとこう、なんだろな……日本人が得意なのは、ホヤとかを解剖して、ちっちゃい1mmくらいの器官・臓器を取り出してきて、培養するとかさ(笑)
いん/ああ(笑)
よう/顕微鏡の下で動かして……(笑)
いん/ああ、いいなあ……(笑)
よう/そのための、すっごい細~いピンセットとか、あるんだよね。
いん/ああ……もうそのために特化した、アイデアを具現化するための道具ね。
よう/そう。で、たまに研ぎに出すんだよね。ハサミとかピンセットも、だんだん、摩耗してくるから(笑)
いん/あっはははは!研ぎに出すんですか!?(笑)実験道具をねぇ……


よう/そう。で、それらはすっっごく細いから、扱ってる時に、たとえば実験台に先がちょっとぶつかっただけでも、つぶれちゃうんだよね。
いん/ああ……。なんかそれって……失礼なことをいえば、この話と同じような話を、これの何万倍もくだらないニュアンスで、銀座のバーとかで「クリスタルのグラスは、ちょっとぶつけると割れちゃう」とか言ってると思うんですけど……(笑)
よう/うん(笑)
いん/同じようなことを、実験室で言ってるんですね(笑)すごいなあ……。
よう/そういう、なんかこう、「アナログな世界」はもちろん、あるよ。
いん/分かるなあ……。いやでも、そのアナログの話があっても、……
やっぱり、ど真ん中の世界を話すと、「億単位の金を持ってるものが勝つ」って話に行くんだ……っていうのは、何か感慨深かったんですけど……。
よう/うん。
(26分24秒)

★「プラマン」

いん/僕、今日の話が「仕事道具の話」だって聞いた時に最初に思ったのは、顕微鏡じゃなくて(笑)
よう/うん。
いん/あの~、ペン、使うんですよね。
よう/あ~、はいはい。
いん/プレパラートに、マーキングというか、点を打つんですよ、手で。
よう/そうだね、病変の範囲とかね。
いん/そう。これ、見てもらわないとなかなか分からないんですけど……プレパラートを顕微鏡で見るときに、手を横から回していって、ガラスプレパラートの上に……万年筆みたいな、特殊なペンがあるんですよね、プラマンっていう(笑)

よう/ああ、専用のペンがあるんだ!
いん/そうです(笑)プラスチック万年筆みたいなのがあるんですけど……
よう/プレパラートと、対物レンズの間にペンを入れて、点々を打っていくんだよね?
いん/そうです、でもそのプラマンを、実は僕、最近、使わなくなってしまって。
よう/プレパラートの上に書かなくなったってこと?


いん/いやあのですね。プレパラートの上に点を書くだけじゃなくて、その点を書きながら、なおかつ横に置いてある「臓器を印刷したコピー用紙」に、病変を書き入れる、という、2つの作業をしていたんですね。プラマンで点を打って、マジックで紙に書き入れるっていう。
ところが僕、その作業を最近、タブレットでやるようになって……。
よう/はああ。タブレットで写真を出しておいて?
いん/そう。そこをタブレットで書くようになった。時代が進んだから、1コ、マジックを使わなくなったわけですよ。
よう/へええ~。
いん/そうすると、プレパラートの上に点を打つっていう作業だけは残るんですけど、紙にペンを使って何かを書かなくなったら、ペン自体がだんだん、面倒くさくなってきて。プレパラートの上にも、点を打たなくなっちゃったんですよ(笑)
よう/なるほどね。いやあ、俺もたまに、ガラスの上に何か、書くことがあるけど、あれ、たまにペンのインクが出ないときって、すげぇ腹立つよね。
いん/そう。僕、そういうアナログな世界で戦っていたのに、最近、自分の病院では、プレパラートの上に点を打たなくなったんです。
よう/うん。
いん/ところが、他の病院で診断するときには、いまだにアナログで点を打たないといけないんですけど……(笑)1回、点を打たない生活に慣れると、他の病院で点を打とうとするときに、イライラするんですよね(笑)「うまく打てない!」みたいな(笑)
よう/あははは(笑)
いん/もう、ものすごい自分が劣化しちゃって(笑)

★キーボードとイスについて

よう/あとね、いっちーさぁ、キーボードやパソコンも、大事な仕事道具だよね。
いん/外付け買ってますよ、僕(笑)
よう/キーボードさ、高いの買えばいいのにって思ったんだけどね。なんか、中くらい(値段の)やつ、買ってたでしょ?
いん/中くらいのにしました……あはははははは(笑)それ、友だちからもメールが来ましたよ、「高いの買えよ」って(笑)「ごめんね」みたいな(笑)
よう/だってさあ……顕微鏡とかは、まあ、高級品じゃないといっても100万円くらいはするわけでしょ。
いん/……しますし、僕の使ってるのは高いですよ(笑)
よう/キーボードはさ、1回買ったらずっと使うものだし、半分消耗品みたいなものだからさ……
いん/こんなこと言う人あまりいないですけど……でもそうなんですよね。キーボードは消耗品。
よう/身体に与える影響って、大きいでしょ? キーボード。
いん/大きいんですよ……。
よう/疲れ方とかさ。
いん/本当にそう。

よう/まあ「音声入力にしていく」っていう流れになるのかもしれないけどね。
いん/いやあ……法医学講座は音声入力にしてるんですけど。僕、音声入力だと、診断はギリギリ書けるんですけど、所見が書けないんですよね……なんとなく。
よう/分かるなあ……「話し言葉として出てこない」ってことでしょ?
いん/それもありますし、あとは「(癌取扱い)規約事項」っていうのを埋めるときに、カーソルをどんどん飛ばしていかなきゃいけないっていう。「ひな型の一部を埋める」っていうときには、音声入力は向いていないんですよね。

※文字起こし人注:この「規約事項」がよく分からなくておふたりに質問してみたところ、「(癌取扱い)規約事項」というものがあるそうです。内容については「病変部の状態を示す決まったパラメータのことです。進展度とか病変のタイプとか」というご説明をいただきました。多分、私も含め知らない人も多いと思うので、追記しておきます。m(__)m

よう/へえ~。じゃあ、もうちょっと使いやすくなれば、出来るかもしれないってことだね。
いん/うん、使うかもしれない。けどまあ、今はやらないかなあ、ってのと……。あと、ノートパソコンに のめりこむようにキーボードを入力していると、もう首とか痛くなるので……。
よう/いや、ぜっったい、ダメだよね。
いん/ダメです。
よう/ぜっったい、ダメだよ。
いん/「だったらもう、デスクトップにせえや」って話なんですけど(笑)……とりあえずノートパソコンに、外付けのキーボードを付けて、画面から顔を離して、そっくり返ってやるんですよね。前のめりにならないように。
よう/うん、首がちょっと前に出てる姿勢は、本当に肩も首もね……。
いん/そう、最悪。それで、「とにかく背もたれに首を付けた状態でやらなきゃだめだ」ってんで……。それほどいいイスじゃないんですけど、とにかく背もたれに身体を預ける「後傾姿勢」で打ちたい、って言って、キーボードを買うわけですよね。


よう/……イスも買いなよ(^^;
いん/イス……う~ん、でもねえ……。まあ……高級イスみたいのがあるわけですよ、ハーマン・ミラーとか。

よう/うん。
いん/オフィス・チェアーの高いやつ。あれ、病理医向きじゃないんですよね。僕、試してみたんですけどね……専門店に行って。
よう/うん。
いん/そこに、イスに詳しい「イスのソムリエ」みたいな人がいたんですよ。で、僕が「これこれこういう仕事をしていて」って説明すると……
よう/うん。
いん/「プログラマとかは、まだ許せるけど、……顕微鏡を見るんですよね?」って言われて、「はい、見ます」って答えますよね。「最悪、外付けキーボードでパソコンを打つのならこのイスでもいいけど」……顕微鏡って、顕微鏡に向かって目を出すじゃないですか。
よう/……「前かがみになる」ってことね。
いん/まあ、ほぼそうなりますよね。
よう/つまり、良いイスを買って、背もたれがすごく良くても意味がないってことね。
いん/そう。そう言われたんですよ。
よう/ふ~ん……。


いん/そのイスのソムリエは、「ちなみに、うちで、この話をしたんだけど『いや、いい。俺はこのイスがいいんだ』といって買った人が2人いる」と。
よう/うん。
いん/「ちなみに、今まで言わなかったけど、その客は病理医だと言っていた」と言われて、僕はもう買うのをやめたんです(笑)「腹立つ!」と思って……(笑)
よう/はははは(笑)
いん/「キモい!」と思って……(笑)
よう/(笑)いやでもさ、パソコン打ってる時間も結構あるわけだから、その時だけでもいいと思うけどね。意味があるんじゃないかと思うけどね……。
いん/「今にして思えば」ですけどね。
よう/うん。
いん/「キーボード安いの買って、指痛めて……」みたいな(笑)
よう/死活問題だよ?
いん/あはは、「ごめんね」って感じ(笑)
よう/本を書けなくなるのはまだしもさ、診断に差し支える可能性もあるしね。
いん/「診断に差し支えるほどの入力」って、本当は病理医はしなくてもいいんですけどね(笑)
よう/そうだけど、現状、いっちーはそうじゃないわけだからさ(笑)
いん/そうそうそうそう(笑)
(32分44秒)

★アニソン『君の知らない物語』

よう/……じゃ、アニソンの話しようか(笑)
いん/あはははは(笑)先輩、僕、今日気になってたんですけど、アラーム鳴ってなくない?(笑)
よう/あ、ごめん鳴ってない(笑)ごめんね(笑)
いん/あははははは(笑)俺、いつまでしゃべるんだろうと思ってた(笑)……アニソンの話ね、はいはい、いいですよ。

よう/『君の知らない物語』っていう、かなり有名な曲なんだけどね、アニメファンのなかでは。
いん/あ、そうだそうだ。
よう/『化物語』のエンディングテーマ。

いん/ええと、曲を聴いた最初の印象っていくつかあったんですけど……。2回目聞いて思ったのは、「これはドラムがすごく上手いのかな?」と。
よう/ははあ、そういう視点?なるほど。
いん/あの、僕はEDかOPかは気にしないで聴いたんですけど、1度目は……何となくですね、「通学路とかを横に移動しながら、主人公だかヒロインだか分からないけど、そういうのが歩いていくイメージ」で聴ける曲だな~と。心象風景がそういう曲だったんです。
よう/はいはい。
いん/映像は見てないんで、そういうさわやかなEDなのかな?って思ったんですけど……。意外と、「Aメロ・Bメロ・サビ」だけで終わらなくて……何ていうんだろな、いわゆるCメロみたいなのが入ってくる。「曲の構成がすごく丁寧な曲だな」っていうのが1回目の印象で。
よう/うん。
いん/で、2回目聴いたら「打ち込みの音じゃなくて、生の音だ」って思ったんですね。演奏している人がいるっぽい。
よう/うん。
いん/よ~く聴いてると、「ドラムがやたらとバンドマンっぽい曲だなあ」と思って。「あれ?これずいぶん『バンドとして』作ってるんだなあ」と思ったんです。で、この曲の印象は「何か、ドラムが上手い人っぽいな」っていうイメージ。
よう/ああ、そうなんだね。じゃあ「バンドサウンドっぽい」っていうのが、印象としてあったってことなんだね。
いん/バックが、ですね。1回目に聴いた時は、透明感のあるボーカルで、すごくまっすぐ編集してるんですけど、すごく聞きやすいし、「なんかこれ、全然、FMのパワープレイとかにかかりそうな曲だなあ、名のある人が歌ってんのかな~」って感じなんですけど。2回目聴くと、「リズム隊の中でもドラムがすっごく前に出てくるなあ」っていう感じ……でした。


よう/ふ~ん、なるほどなあ……。これ、「supercell(スーパーセル)」っていうグループが作ってる曲なんだけど……俺もあんまり詳しくは知らないんだけどさ。最初は、ニコニコ動画とかさ、ああいうところから出てきた人っぽいよ。
いん/はっはぁ~。それって、米津玄師(よねづ けんし)とかも、そうでしょ?
よう/多分、近いと思うね。2007年とか、それくらいから出てきてるから……ニコ動の初期から出て来てるってことだと思うんだけど。
いん/そうなんだ……。


よう/ボーカルはね……この「supercell」は、クリエイター集団だから、ボーカルはいないんだって。
いん/はっはあ。
よう/最初は、初音ミクでやってたんだよ。
いん/ああ、分かりました。いや、分かる分かる。今「米津玄師」って言ったのは、(この曲の雰囲気が、彼と同じように)「元はボーカロイドを扱ってる人が、ナマ歌とかナマ音に入ってきた」ようなイメージがあったからなんですよ。


よう/うん。米津玄師は「自分で歌える」っていうスーパープレイっぷりだよね、話ちょっとズレるけどさ(笑)
いん/(笑)あれは、バケモノですよね(笑)
よう/そして、今やニコ動出身だってことを知らない人たちまで、聞いてるっていうね。あのメジャーでのハジケっぷり。
いん/紅白一発で、ものすごい量の人が覚えたらしいですからね(笑)
よう/ああ、そういうことか……。俺は、なんか『打ち上げ花火』のアニメ映画の主題曲を歌ってたので初めて知ったんだけど……。
いん/ああ、分かります分かります。あれの露出も多かったですからね。で、この『君の知らない物語』は……
よう/これのボーカルはね、「nagi(なぎ)」っていう名義なんだけど、「やなぎなぎ」さんなんだ。あの、「水」っぽいイメージの歌を歌う人。
いん/ああ、分かった!『アクアテラリウム』の人だ。
よう/そうそう。その人なんだよね。
いん/ああ、分かった分かった。今も覚えてるくらい、印象に残ってる(笑)
よう/ちょっと歌い方が違うんだけどね。今と、この頃とでは。でも「同じ人だ」っていうのは言われれば分かるでしょ。
いん/言われれば分かりますよ。こっちの方が、前ですか?
よう/前だね。
いん/なるほどなあ。


よう/これは……『化物語』って、いつだっけ。2009年か。
いん/もう10年経つんだ。へえぇ~……。
よう/そうだね。『物語』シリーズって、まだ色々な形でアニメ、続いてるからね。
いん/すごいなあ……。西尾維新って、なんだっけ、『クビキリサイクル』とか『ネコソギラジカル』?あのシリーズ、実は僕、全部読んでるんですよね。
よう/ああ、そうなんだね。で、『物語』シリーズは読んでないってことなんだ。
いん/そうなんです。それは、ちょっと後悔があって……「あの時期、もっと読んでいたら、全部読んでたのになあ」って。「惜しい!」ってとこなんですよね~……。
よう/うんうん。まあ、そうだね……また、あの人は、めちゃくちゃ作品数が多い人だしね。異常なペースで出てくるからね。
いん/多いなあ。1年弱くらい前に、パッと思いついて、『めだかボックス』全部読みなおしたんですけど……
よう/はいはい。
いん/今読み直しても「あ~、頭おかしい」って思いましたもん。誉め言葉ですけど(笑)「すごいなあ」っていうか「好きだね~」っていう……。
よう/あははは(笑)そうだね。

いん/あ、それで『君の知らない物語』ね(笑)
よう/うん。『君の知らない物語』は、割と歌詞で語られることが多いみたいで……
いん/ああ、そこまでたどり着かなかったなあ……。
よう/まあ一応、アニメの内容ともリンクしているっていうのもあるんだけど、割と「韻の踏み方が面白い」っていう人もいるんだよね。
いん/なるほどなあ。いやあ、「なんかCメロがすごい凝ってるなあ」とか、曲としてっていうか「バンドミュージックとしての完成度が高いなあ」と思って聴いてたんですよ。

よう/なるほどね。じゃあ聞くと、「ボーカルはバンドっぽくないんだけど、サウンドはバンドっぽいし」ってことで、割と不思議な感じのする曲なんだね。
いん/そうです、そうです。あと、こういう……「ボーカルとしては透明感がある割に、ドラムとかは、凝ったなあ」っていう感じ。今まで、アニソン投げつけ企画で僕が何度か言ってきたのは、「声をつぶさないように、後ろの統率が取れてる」ってことなんですけど……
よう/うん。
いん/今回は、割とバックが主張してくる感じ。
よう/確かに、バックのイメージが結構あるな、俺も。どこがどうとは言えないけど、曲全体のイメージとして。割と後ろで音が鳴っているイメージ。
いん/そうです。特に、鍵盤は まあいいとして、ベースはすごい静かなんですけど、「ドラムが余計なおかずを入れてくる」というか(笑)
よう/ああ、「おかず」っていうか「ドゥルルルル」みたいな。


いん/うん、なんかちょっと、「遊びに行く」んですよ(笑)あれが、なんか「バンドが楽しそうにしているな」っていうイメージがありました。いい曲でしたね。
よう/いいよね、そういう……ナマっぽいというか、味があるというか。
いん/ええ、楽しうございました(笑)


よう/そうですか。……いや今日はちょっとね、エッペンドルフチューブとかファルコンチューブの話もしたかったんだけどね……いずれ……
いん/仕事道具の話!?……あははははははは(笑)
よう/はははは(笑)チューブに対する恨みがあるんだよね、アニメ見てると(笑)「いつまでガラス使ってんだよ!!」みたいなさ(笑)
いん/あははははははは(笑)
よう/「いつまでガラスの試験管使ってるんだよ!」みたいな、恨みもあるんだよね(笑)
いん/実験をやる系のアニメで。(笑)
よう/そうそう(笑)
いん/それはしょうがない……(笑)
よう/ん~。……はい、以上です。ありがとうございます。
いん/ありがとうございました。
(40分30秒)

(♪)


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