[文字起こし]いんよう! 第0回【ツイキャス録音】(前半)
さてまたまたちょっと戻りまして、パイロット版であるらしき「第0回」を起こしていきたいと思います。というのも時々、アニメや萌えの話でここが初出だったりするので……やっぱりこれも見ておいたほうがいいかなって思いまして、起こすことにしました。長いので仕上がるのは冬休みになるかも……。
◆2018年12月16日追記:
全部で54分あるので、エントリを分けることにしました。このエントリは30分20秒くらいのところで終わっています。次のエントリは起こせ次第また作りますのでお待ちください。
(♪)
よう/それでね、『けいおん!』が大好きなんだけど……。
いん/ほう……。はい。
よう/まあ、その……「萌えアニメ」みたいなジャンルに入ってるから、基本的に「美少女キャラ」っていうかさ、「かわいい女の子」が好きな人が見てるっていう印象だし、実際そうだと思うんだけど……。
いん/うん(笑)
よう/で……あれ?
いん/いやいや、いいですよ(笑)
よう/俺もそうなんだけど。でもさ、別に、美少女キャラ出てくる作品って、他にもいっぱいあるわけじゃん。
いん/あります、あります。
よう/その中で、(『けいおん!』は)俺も大好きだし、すごく人気になった作品なわけでしょう。
いん/ほう。
よう/で、「何が好きなんだろう」ってずーっと考えてるんだけどさ……。
いん/っはっはっはっは(笑)けっこう、昔の作品ですよね?
よう/そうだね。かれこれ10年前の作品だからね。
いん/……で、ずっと考えている。と。ええ、聞きましょう、聞きましょう(笑)
よう/「日常系アニメ」っていうジャンルに入ってて、要はあんまりストーリーがなくてさ、こう……高校生の日常を描く、みたいなジャンルなんだけど。
いん/はい。
よう/その、なんか……そういう作品、のちのちの作品にも影響を与えてると思うんだけど。
いん/ああ……。
よう/そういう「日常系アニメ」の何が面白いか、みたいなことを考えてるんだけど。
いん/ほう。
よう/まあ結論からいうと、「ハレの日」だけじゃなくて、普通の「ケの日」を……。「ハレとケ」ってあるよね。
いん/「ハレとケ」。ああ。
よう/あれの、「ケ」の方を主に描いてるっていうところに、なんか思い入れがあるんじゃないかなっていう……。これは別に俺だけが言ってることじゃなくて、ネット上でも同じような事言ってる人たちは結構いるんだけど。
いん/……はあ。
よう/普通、***するじゃん。
いん/おおっと、ごめん、いま一瞬(音が)飛んでました。……いいですよ、続けて。
よう/まあ分からないけど、例えば……う~ん……。バトル物でさ、「ナルト」とかさ、「ワンピース」とかさ、すごい冒険をして、「非日常」でしょ? あれって。
いん/はいはい。
よう/そういう、あまり体験できないようなことを描いたりさ、あとは……普通のドラマっていっても、なんか「結婚」とかさ、「受験」とかさ……
いん/ふむふむ。
よう/あとは「大事な試合に臨むまでに、頑張るスポーツもの」とか、試合の様子を描くとかさ……。
いん/ああ~。はいはい。
よう/なんか、そういう……「本当に、ただ学校にいって授業を受けて友達としゃべって帰る」っていう場面は、カットされるじゃん。
いん/……ああ、普通は「アニメになるからには、ハレの日の方が」って。
よう/うん、だけど、そうじゃないんだと。
いん/うん?(笑)
よう/かわいいキャラクターが、本当にただお茶のんで、ケーキ食べてるところが見たいんだ、と。
いん/ああ~~。……それ、それね。いや、分かります。
よう/うん……。
いん/あ~、『けいおん!』ってそういうくくりなんですか。「日常系」って?
よう/うん。いや、確かに「バンドもの」でもあるし……。京都アニメーションがさ、涼宮ハルヒ以来、バンドの演奏シーンっていうもののクオリティをすごく上げてきたわけだから、そこはすごい見どころで……。そういう、なんか……「映像的な見どころ」はたくさんあるんだけど……。
いん/うん。
よう/でも、だからといってバンド頑張ってるかといったら、全然頑張ってないし(笑)
いん/あっはっはっはっは(笑) うん、確かに、はいはい。
よう/一生懸命練習してるかっていうと、全然練習してなくてさ。練習しようと思ったけど、結局、お茶飲んでる、みたいな話が多いわけじゃん。
いん/合宿行ったりしますしね。
よう/そうそう、合宿行って、あずにゃんだけが練習しようとするんだけど、みんな、海に泳ぎにいくっていうさあ。
いん/ああ。
よう/で、しょうがないから、あずにゃんも海に行くんだけど、一番焼けてて、楽しんでる、みたいなさ(笑)
いん/ああ、ええ(笑)なるほど。
よう/まあそういうところなんだけど。別に女子高生に限らずさ、俺たちって、もうああいう時代には戻れないじゃん、二度と。
いん/うん、なんかすごくツラくなってきましたけど(笑)そうですよ、その通り。(笑)
(4分3秒)
よう/アニメに限らず、子どもが遊んでたりするのを見て、「なんかいいなあ」みたいなさ。「あの時代、もうかえってこないな」みたいな。そうすると……
いん/ああ……。いや分かりますよ。分かります、分かります。
よう/うん。
いん/分かりますし、今ちょっと聞いてて思ったんですけど、ハレとケの話で、その……女子高生の「ハレ」の日と、「ケ」の部分っていうのがあって、その「ケ」の部分を語ることが、ほっこりして嬉しい、みたいな感じなんですけど。
よう/うん。
いん/先輩は……よう先輩は、ですね。「自分たちがもう戻れない」って言ったじゃないですか。僕はですね、20年、30年戻っても、そういう時代は「ない」んですよ。
よう/あの……俺もないよ。(笑)
いん/あははは(笑)いや、「ない」じゃないですか。それでね、僕もちょっと言われて「そうだな」と思ったんですけど……
よう/うん。
いん/僕も「ハレとケ」でいうと「ケ」の物語だなと思ってたんですけど、よく考えると「自分のケ」ですらない。
よう/そうだね。自分のものですらないね。
いん/うん。なんかそこ……何構造っていうんですかね。「ハレとケの物語でいうとケの部分なんだけど、決して(自分の)ケではない」みたいな。そういうところ、実は魅力なんじゃないんですか。
よう/それは魅力だと思う。でもそれは、アニメは特にそうだけど「ファンタジー性が強い」。
いん/ああ……。(ふむ、といった感じ)
よう/例え日常を描いていたとしても、それはなんか、やっぱり現実とは違うし、自分とは違うっていうのがあって。それは向こう側に飛びたいっていうさ……。「ほんとのリアルな日常は、つらい」みたいなさ。
いん/はあ……。
よう/それを一瞬忘れたい、みたいな欲求はもちろんあると思うんだけど。
いん/ほう。
よう/だからといって、「冒険物語の世界」に飛びたいか?っていったら、それももちろんあるんだけど……
いん/ああ……!
よう/そこじゃなくて、「自分とは違う人たちの日常」に飛びたい、っていう……なんかその、ちょっと歪んだ欲求っていうかさ、ねじれて……
いん/(笑)自分の好きなものを「歪んだ欲求」って言いだすと、ツラいんですけどね(笑)
よう/うん……(笑)
いん/う~ん、そうか「ケ」の中にも何種類かあるんですかね。
よう/う~ん。まあ何でもいいんだけど、その、なんかね……。要は、「たわいのない日常ですら、キラキラしてるよ」って言いたくなるってことね。
いん/あああ~~……なるほどね。
よう/うん。
いん/言いたいですしね。
よう/少なくとも、そのキャラクターたちの人生は、全部肯定されてるんだよ。
いん/うむ……。
よう/ポイントポイントの、人生の中の目立つところだけが「いいね」っていうんじゃなくて。もう、道歩いてるだけでいい、みたいなさ。
いん/「道歩いてるだけでいい」、なるほど。……あれ、なんでオタクにウケるんですかね、僕ら含め。まあ先輩がオタクかどうかよくわからないんですけど。僕はもう、(自分で)否定しても(周りからみて)オタクだと思うんですけど……。
だって、我々が成し遂げられないはずのもので……何なら、「ハレ」「ケ」関係なく、「ケ」の中でも最も遠い「ケ」じゃないですか。……でもなんか、「日常にほっこり」っていうふうに、ちょっと求めてしまうっていうのは、何なんですかね……。
よう/……自分の人生を、肯定されたいんじゃないかな、と思うけどね。
いん/ああ……。そもそもそれ……なんか、そういう「日常系」って、すごい新しい概念に聞こえるんですけど、昔からあるんですかね。
よう/……まあ、サザエさんとか、ちびまるこちゃんとかが「日常系」かっていうと、問題になるところだけどね。
いん/ああ! 「サザエさん」……! マジか。サザエさんって、そうなんすか、あれ。ああ「日常系」か……。
よう/うん……。だけど、ちょっと違うのは……今はだいぶ違ってきてるけど、なんだろ……。
いん/うん?
よう/ええと……2000年代以降、萌えキャラを使った日常系は、本当にファンタジー性が強いよね。(実世界の)どこにもいないもん、あんなキャラ。
いん/おおお……。確かに。
よう/カツオくんみたいな男の子は、どっかにいるよね。
いん/カツオくんは、たぶん、なんかあれでしょうね、「一般的なイメージの最大公約数」みたいなところにあるんでしょうね、きっと。
よう/そうそう。なんか、すっごいいい営業マンになりそうじゃん、将来。
いん/うん……(笑)不動産屋の、なんか、嫁ぐ方かな、みたいな(笑)
よう/そうそう(笑)婿養子とかになったら、すごいうまく立ち回りそうじゃん、カツオって(笑)
いん/ああ……リアルですね(笑)
よう/「あるある」みたいなのはあるけどさ(笑)
いん/いやなほうの「ケ」ですね(笑)
よう/だからやっぱ、あれは、キャラクター造形自体はけっこうデフォルメされてるけど、実写に近い作り方なような気がするんだよね。実写ドラマ。
いん/ああ、なるほどね。
よう/リアルの人間を模したものとして、キャラクターがいると思うんだけど。
いん/うん。
よう/例えば、『けいおん!』に出てくる「唯ちゃん」とかさ。あの辺って、なんていうんだろう、「人間とネコの間」みたいなさ……
いん/……ほう!(笑)
よう/(笑)「人型(ひとがた)をしている、何かかわらしい生き物のキャラクター」っていうだけだよね。
いん/あっはっは(笑)そうですね。
よう/うん。
いん/あれ、「ハレ」じゃないですか? 我々からしたら。……ハレじゃない、のかなあ……?
よう/え~と、あのね、「ファンタジー」だと思うよ。
いん/ファンタジーですね。
よう/ファンタジーなんだと思う。だから、そういう意味では特別なものなんだけど、でも描いているのは「普通の女子高生の日常」を描いてる、っていう。
いん/ああ……(なるほど)。
(9分30秒)
よう/で、なんかね。その……最近、『21世紀の民俗学』っていう本があって。
いん/あ、え?(笑)……ちょっと待ってください、『けいおん!』の話から……あはははは(笑)……いや、ああ、うん。『21世紀の民俗学』?
よう/うん。そういう本があって、書いてる人は「妖怪の研究をしている人」らしいんだよね。まあ民俗学の人なんだけど、特に専門が妖怪だっていう人で。
いん/おお。
よう/座敷童(ざしきわらし)とかの話を集めてたりとかしてるんだけど。
いん/はいはい。
よう/なんかね、「妖怪は本当にいる」っていう前提で研究しているらしいんだよね。
いん/ふむ!ほう!(笑)
よう/で、それがね、本当に「物理的な存在として、居る」のか、概念というか「心の中に居る」てことで「居る」って言ってるのか、ちょっとよく分からないんだけど……
いん/はい。
よう/まあ、あの……「民俗学」っていうのは「庶民の感情の歴史を知りたくてやってる」って書いてあってさ。
いん/ほう……、ちょ、ちょっともう1度。ん、庶民の?
よう/「庶民の感情の歴史」。だから、「誰が権力者になった」とか「戦争に勝った」とか、そういうことじゃなくて……
いん/はあ。
よう/「普通に生きてた昔の人」が、どういう気持ちで生きてたのか、何を考えて生きてたのか、っていうときに、
いん/うん……!(おおっ!?という雰囲気)
よう/座敷童とか、いろんな妖怪の話を通じて「あ、こういう価値観で生きてたんだな」っていうのが見えてくる、みたいな。まあ「柳田 國男(やなぎた くにお)以来」なのかも知れないけど……。
いん/ほう、ほう、ほう!
よう/なんかそういう感じのモチベーションで研究してる、みたいなことが書いてあって。
いん/お……ちょ、ちょっと、なんかつながり始めましたよ。うん。
よう/そうでしょ?(笑)
いん/うん(笑)……「そうでしょ」って、ええ(笑)
よう/でね(笑)、なんか東北の震災とか、あるいは何か震災が起こった時に、倒壊した家屋から、皆、写真……家族アルバムを拾い出そうとするんだって。
いん/ほぉ。
よう/で、そこに救助に行ってた自衛隊の方とかも、別に職務には入っていないんだけど、やっぱり写真とかがあると、それをその場に置き去りにせずに、持って帰ってくるらしいんだよね、自然と。
いん/なるほど、うん。
よう/……っていうことが、この本にも書いてあって。なんか、そこから、「写真」……「普通の人が撮る写真」の話になってて。
いん/うん。
よう/明治以降さ、「写真を撮る」という文化がだんだん、でき始めて。最初はなんか、たとえばお正月とか、七五三とか、「ハレの日」に写真を撮ってたらしいんだよね。
いん/お!「ハレ」! うん!
よう/だけど、だんだんそこから「写真を撮る」のが手軽になってきて、その周辺とか……例えば「七五三に行くために着替えている様子」とかさ。
いん/
うんうんうん。(身を乗り出す感じ)
よう/そういうのを撮るようになって……。今は、本当に、スマホでどこでも写真を撮る、っていうふうになってきたわけじゃん。
いん/おおう……!!
よう/で、家族アルバムがなんで大事……っていうか、災害にあっても皆、拾い上げてくるかというと……
いん/はいはい。
よう/本当に「普通の日に生活していたときの記憶」が大事だって思っている人が多い、ってことだと思うんだよ。
いん/……なるほど……!!(感じ入った様子)
しかも、波にさらわれたり濡れたり、ってなると、それを取り戻そうと思っても取り戻せない感がすごいですしね。
よう/そうそうそう、それを一生懸命きれいにしたりさ。
いん/ありますよね、なんか「濡れた写真をもとに戻す」っていうだけで、研究があったり。……あれ? その……『21世紀の妖怪学』でしたっけ? なんでしたっけ。
よう/『民俗学』。
いん/あ、『民俗学』。その人って、京都の人ですか?
よう/……どうだろう?
いん/京都、京都……ん~、なんかTwitterでチラッと、妖怪の話してる人が……あれ、誰かインタビューしてたかな……あれ、誰だっけ。タナカさんだったかな。なんか、見ましたけどね。そんなにたくさんいるとも思えない……。
よう/そうかもしれないね。
いん/ちょ、ちょっと整理するというか……『けいおん!』が日常型で、ハレとケで、まあファンタジーなんだけど「日常系ファンタジー」、っていうところまでは、割とよくある話なんですよ。
よう/うん。
いん/「よくある話だね」っていうのまでは、分かる。ただ、そこから写真の話と、あと民俗学みたいな話になりますけど……
よう/うん。
いん/僕はむしろ、実はさっきの話から聞いてると、逆のことを言おうと思って……ツッコもうと思ってたことがあって。なんか日本人って、昔から好きでよく読んできた物語って、だいたい「超絶ファンタジー」じゃないですか。あの……「亀助けて海もぐって戻ってきたら」みたいな話とか。
よう/はいはいはい。
いん/あと、「宇宙から来た姫が無茶振りを……」とか(笑)
よう/そうだね。相変わらずそういうのも好きだと思うし、俺も好きだけどね。
いん/うん……。なんか『スレイヤーズ』とか、なんかそっち系だと思うんですよ。実際、90年代アニメもなんかそういう、「超絶お姫様」みたいな感じだったり、なんか異世界に行ってみたり……とかだったと思うんですけど。
よう/うん。
いん/『けいおん!』もそうだし……なんか「日常系」って、この15年くらいでポコポコ出てきたんだったら、「じゃあなんで日本に昔からなかったの?」……って僕、言おうとしてたんですよ、最初。
よう/はいはいはい。
いん/でも「妖怪は、そうだよ」って言われたら、「昔からいた」ってことになっちゃうんですよね。「いた」というか、「あった」というか……。日常をフィーチャーする文化は(超絶ファンタジーとは)別にあった、っていうことになるんですか? ……ってなるんですけど。……なるんですかね。
よう/……その、話としてあったのかな……? 俺そういうの全然詳しくないからさ、「日本にどういう物語があるか」って、詳しい人に聞いてみたいところだけど。
いん/うんうん。
よう/なんか今の、「日常系」と呼ばれているものに関して言うと……
いん/うん。
よう/要は「家族アルバムがだんだん、日々のものを撮るようになってきた」っていうのは、なんかやっぱ「個人主義」と関係があるような気がして……。
いん/「個人主義」。ああ、なるほど……。
よう/一人ひとりの人生とか人っていうものに価値がある、というふうに、皆、思ってきてるわけじゃん。
いん/ふむ、ふむ。
よう/でも、すごく昔なんかさ、普通の庶民なんか、塵芥(ちりあくた)だよね。
いん/ちりあくた……ふふふ(笑)そうですね、そうですよ、確かに。
よう/今、「個人大事」「オレ大事」みたいなのが行き過ぎて、なんか自我がね……変な風に肥大してるケースがあるっていうか。まあ俺の中高生時代なんだけどさ(笑)
いん/あはははは(笑)
よう/「中二病を発症する」みたいなのがさ、ある意味「自己の肥大化」みたいな部分もあるわけじゃん。
いん/……ああ~、確かに。そうですね。
よう/でも、その、個人というものが大事になってくると、要は「普通の人の普通の生活にも価値がある」っていうことになるわけだよね。
いん/ふむ、ああ、そこにそうつながる……。
よう/だからさ、一生懸命さ……例えば家族の普段の生活を撮るわけだけど。まあそれはもちろん、家族だから、「特別な人」っていうのはあるんだけどさ。とはいえ、日常生活まで一生懸命撮るっていうのは、やっぱり「個人の普通の生活が大事だ」っていうことで。そういう感覚みたいなのを、無意識に反映した作品っていうのが出て来てる……ような気がする、ってう話なんだけどさ。
いん/……なるほどなあ。
よう/それを、なんかこう、かわいいキャラクターに託すことによって、「キャラクターの魅力がより出る」ってのもあるし。
いん/ふむ……。
よう/で、かわいいキャラクターがいたら自然と「普段何しているかも知りたい」みたいなさ。
いん/あの~……「ファンタジーの矮小化」かと思ってたんですよ、むしろ。
よう/うん。
いん/で、「ファンタジーがあまりにも自分たちから離れすぎていると、感情移入できない」みたいな、そういう話かと思っていたら、逆に矮小っていうか、卑近というか……「自分に近くなればなるほど、リアリティが上がっていく」っていう……なんか、方向性というか矢印は一緒なんだけど、とらえ方が違うんですね。……時代の要請なのかなあ……。
(18分23秒)
よう/「時代の要請」っていうのはあると思うけどね。2000年代からそういうのが出てき始めたってことは。
いん/なるほど~。あの~……たま~に、テレビで最近、すごいお金持ってる人とか、すごい成功した人のエピソードとか、またやるようになったんですよ。なんとなくですけど。
よう/はいはい。
いん/なんかもう、「大成功しているデザイナーの2世、3世」とかですね、長島一茂がまたテレビに出てくるようになった、とか。あの、10年くらい前だと、成功者みたいなのが減り気味だったのかな?って勝手に思ってたんですが、またよく見るようになって。なんか一周まわって、また非日常に帰っていくのかなって気もしていたんですが。
最近のアニメって、また日常系とか多いんですかね。
よう/あのね、日常系とか……純粋な日常系が減ってる気がする。
いん/マジすか。
よう/俺はね、すごい危惧してるよ、それを(笑)
いん/「危惧」あはははは(笑)
よう/見たいから(笑)
いん/ああ、好きなんですね、なるほど(笑)……いや、僕最近見ていないんで分からないんですけど……そうですか。
よう/あの……ちょっとコメント拾ってもいい?
いん/ああ、ツイキャスの?
よう/うん。なんか「『この世界の片隅に』もそう」って書いてる人がいるんだけど。
いん/はいはいはい。
よう/『この世界の片隅に』は、すっごい大きな世界の話だよね、「ガワ」はさ。「戦時中」っていう。
いん/うん。「ガワ」……(笑)
よう/でも、描いてるのは、まさしく「日常」だよね。
いん/そうです、はい。
よう/だから、あれが「純粋な日常系」なのかっていうと……あれを通してやっぱり、戦争のこととか色々なことが見えてくるわけだから……ちょっと違うんだけど。
いん/ああ、そうかあ……。
よう/でも、手法的な話を言えば、あれだけミクロな話を描くと……
いん/うん。
よう/すずさんの……要は普通の人だよね、あの戦時中を生き抜いた人。
いん/そうですね。
よう/「その人生が、いかに大事なものか」っていうのが、あれだけ丁寧に描かれれば、わかるじゃん。
いん/わかる。
よう/それが、ちょっとずつ壊れていく悲惨さっていうのがさ……直接描かれなくても、伝わってくるよね。その点においてあれは、名作なんだと思うよ。
いん/うん……。
よう/「戦争は悲惨だ」っていうことを「言葉を使わずに」伝えられるところが、映像作品のいいところじゃん。……っていうか、そうじゃなきゃだめじゃん。
いん/あれは、よかったですよぉ……本当に。
よう/俺さ、『この世界の片隅に』好きすぎて、1回しか見てないんだ(笑)
いん/あはははは(笑)
よう/ちょっと意味わかんないと思うんだけど(笑)
いん/いや、分かります(笑)先輩の言いたいことは、すっごく分かります。好きすぎて、ね……。
よう/そう。あまりにも衝撃的で、好きすぎると、なんかね……もう1回見れないんだよ。ブルーレイ持ってるんだけど(笑)
いん/あははは(笑)
よう/今度、長尺版がね……
いん/ああ、そうだ。12月でしたっけ? なんか、出るっていいましたよね。
よう/そう。それは、見に行こうと思ってるんだけど。
いん/ああ、バージョンが変わると、堂々と行けますからね。
よう/「違う作品だ」って片渕 須直(かたぶち すなお)監督自身もおっしゃってるから。「よし、違う作品なんだな」って。
いん/ああ……。ちょっとその話、ノッていいですか?僕ね、『この世界の片隅に』が、素晴らしかったじゃないですか。
よう/素晴らしかったね。
いん/その前……前かな? 『シン・ゴジラ』見てるんですよね。同じような時期に。あれ、素晴らしかったんですよ。
よう/うん、『シン・ゴジラ』めっちゃ面白かったよね。
いん/めちゃくちゃよかったんですけど、あれ、テレビでやったんですよ。先に。『この世界の片隅に』はまだテレビでやってないけど、『シン・ゴジラ』は、もうやったんですよ。
よう/『この世界の片隅に』って、まだ上映してるよね。
いん/まだ上映してます。もう、ロングラン。で、『シン・ゴジラ』はテレビで、もうやったんですよ、1回。……で、好きすぎて、前半までで1回消しましたからね。
よう/あっはっは(笑)『シン・ゴジラ』を?(笑)
いん/うん。「いや、だめだ。感動するから、今日なんかに見れない」って。「環境を整えた日に……」
よう/「体調がいい日に見たい」ってことでしょ?
いん/そうです。体調がいい日に、食事環境も整えて、じっくり見たい、と思って。だから人間どもがやられまくってるところまでしか、見ていません。
よう/なるほど。最後のカタルシスに向かってるところは見てないってことね。
いん/もう、あれは取っといてます(笑)好きすぎて。
よう/(笑)
いん/けど、『この世界の片隅に』は、たぶん同じか……それ以上ですね。すごかったなあ……でも、これネタバレしないほうがいいな。よし、やめよう。やめました。やめま~す! はい、やめます。あれはでも、……まあいいや。
いん/でも『シン・ゴジラ』って日常じゃないでしょ、神話でしょ。
よう/神話でしょ。
いん/神話ですよね。あれは。
よう/『シン・ゴジラ』は逆に、まったく日常生活が描かれてないよね。
いん/うん。
よう/そういうの大好きだけどね。
いん/うん。あれ、“正しい神話”だと思うんですよ。神話、大好き。
よう/主人公の家族とか、出てこないじゃん。
いん/出てこない。
よう/サイコーだよね。
いん/あと、理不尽なのもいいですね。“死ぬ人は死ぬ”みたいな(笑) 超・理不尽。まさに“神話”ですよね。……え、神話? ……あ、そうか。
よう/神話の持っている、訳の分からなさとか、残酷さとか、唐突さであったりとかさ。
いん/はい。
よう/なんか、そういうことでしょ?
いん/あの~……。神話って「お前らがどう感じても知らん。これはこうだ」っていうところに、圧倒があるじゃないですか。「物語!」みたいな、容赦ないというか、理不尽というか。「そうだっていったら、そうだ!」「神の圧倒」みたいな……。エクス……(よう先輩が何か言いかけているのに気が付いて)あ、すみません。
よう/あ、いや。「ゴジラに全然人間ぽさがないというか、感情移入できないように作った」みたいな話じゃなかったっけ?あれって。
いん/ああ。なんかそれっぽいですよね、あれって。「高次の存在」みたいな。
よう/そうだよね。なんかギリシャ神話とか日本の神様とか、要するに「多神教に出てくる神様」っぽさはあるよね。
いん/ある、あります。でも……そうか、いま言われて思いましたよ。そんなこと、今までまったく考えていなかったんですけど……。
そういう「神話的なもの」のほうが、長く残るのかと勝手に思っていたんですけど……言われてみれば、妖怪伝承みたいな、……「田んぼの端っこに、よく分からない化身が座っていて、そいつを蹴とばしたら死んでしまった」みたいな、よく分からん妖怪説話みたいなのも、残ってるんですよね、ずっと。
よう/うんうん。
いん/あれ、日常系の代わりだったんですかね、もしや……。
よう/あのね……いやあ、どうだろう、わからん。つながっている部分もあるような気もするけど……でも……
いん/うん。
(24分50秒)
よう/やっぱり「日常系」っていうのは、さっきも言ったけど「個人」が立ってきてから後の話なんじゃないかなって気がする。
いん/ああ、そうか。個人が立ってきてからの話だから、芳醇になるのか。あの……「世界中で似たような話がある」論って、あるじゃないですか。
よう/ああ、はいはい。
いん/例えば、えーと……「冥界から妻を連れて戻るときに、『後ろを振り向いちゃだめ』って言われたのに、振り向いてしまって地獄に戻される」みたいな。あれ、世界中にありますよ、みたいな。
よう/日本でいうと、イザナギとイザナミの話、みたいなやつだよね。
いん/そうですそうです。あと、なんかギリシャ神話にもあるんですよね、あれ。で、そういう理不尽系って、わりと世界中に共通するんですけど……。
よう/うん。……俺、理不尽好きだよ。
いん/理不尽、好きそうですね(笑)……いや、「日常系」ってどうなの? って思ったんですけど。なんか日本で妙にぐーっと来てますよね、たぶん。
(25分49秒)
よう/きてるね。なんか例えばさ、ハリウッドの作品で多いのは、「ハイコンテクスト」っていうんだっけ? なんか、「ちゃんとストーリーに起承転結があって」みたいなさ……。
いん/ああ、メリハリが。
よう/すごい作りこむでしょ、向こうは。お金かけて。脚本家集めて。まあ俺、全然映画見ないけどさ。
いん/ふあっ!?(笑)……意外……あはははは(笑)
よう/俺、『万引き家族』もまだ見てないし、『カメラを止めるな!』もまだ見てないし……(笑)
いん/あっははははは(笑)僕も見てないですけど(笑)
よう/(笑)だから、知識ゼロなんだけどね(笑)でも、なんかその……「話を作りこむ」っていうのは、やっぱりストーリーも含めて作りこむわけでしょ。
いん/はいはい。
よう/なんか、すごい理性的な感じがしてね、すごくアメリカっぽいというか欧米っぽい感じはちょっとするんだけども。
いん/はあ、はあ。
よう/逆に、フランスとかイギリスだと、なんかあまり話がないやつもあるって聞くから。
いん/ああ~!なんか有名どころは……なんでしょう、『スモーク(Smoke)』とかって、そうじゃないですか?あれ。
よう/ああ、なるほどね。
いん/1回、見ましたよ。「日常系」という目では見てなかったけどなあ。
よう/なんか、「そういう要素が入ってるやつ」は、いっぱいあると思うんだけどさ。
いん/ああ……。
よう/なんか特に「それだけで作品を成立させてやろう」っていうのは、すごくチャレンジングだと思うんだけどさ。
いん/なるほどなあ。
よう/起承転結があったほうが、見やすいじゃん。
いん/いや、見やすいです。そうです。で、起承転結が無いと「マニアックでオタク向け」っていう話もあるんですけど……
よう/ああ。
いん/「オタク向け」っていう切り分け方も、もう古いですよね、実は……。
よう/そうだね。
いん/あれ……えーと、よう先輩。……あぶない、本名をガチッと呼ぶとこでした(笑)
よう/あははは(笑)
いん/あははは(笑)あのですね、あれ見ました?『てるみな』。
よう/『てるみな』?
いん/読んでないですか? あのですね、僕がTwitterやってるじゃないですか。あれでフォロワーに教えてもらったんですけど……。
よう/うん。
いん/「『てるみな』がいいぞ」って教えてもらって。
よう/『テルマエ・ロマエ』じゃなくて?
いん/『テルマエ・ロマエ』じゃなくて(笑)……そのいっちょかみ、しないでいいです(笑)
『てるみな』見たんですけどね。あれ、今でいうと、「日常系×妖怪……じゃないんだけど、ちょっと異形の者×理不尽」なんですけど。イメージとして。
(※文字起こし人注:「×」は「かける」と読んでます)
よう/うん。
いん/猫耳の小娘みたいな主人公が、電車が好きで、電車に乗って行って、そのまま滅びる、みたいな(笑)そういう……
よう/ああ、はいはい。なんかさ、同じ作者の人が、電車の本、書いてない?
いん/『ぱらのま』?
よう/あ、それかな。それと若干つながってるみたいな話なんだよね?
いん/そうです。
よう/ああ。読みたいなあと思って、読んでないんだけど。
いん/で、あれ読んだときに、「日常系もここまで来たか」と思ったんですよ。
よう/はいはい、「日常系の要素が入っているもの」みたいな感じだよね。いろんな要素が入っている、足してる感じの……。最近、盛りだくさんみたいな本多いよね。3つくらいのジャンルが混ざってるというか。
いん/いや、そうそう。そうなんです。最近は、『ゆるキャン△』とかも、そうじゃないですか。
よう/あ、そうそう。最近の、あれ『きららフォワード』だけど……
いん/『きららフォワード』(笑)
よう/『まんがタイムきらら』の中でも、きららっぽくないことをやるっていう雑誌なんだよ。
いん/へ~~!ほう。
よう/要は『けいおん!』とかも、きららじゃん。
いん/ああ。
よう/で、最近はね、「キャンプを足してみる」とかさ。
いん/ああ、うん!
よう/最近あった『こみっくがーるず』だったら、「漫画家」に「女子高生」を足す、みたいなさあ。
いん/はいはい。
よう/で、『ゆるキャン△』は、ずっと、かなりゆるいままだったから、かなり「日常系」の純度が高かったと思うんだけど……
いん/ほう、ほう。
よう/最近わりと多いのは、主人公がちょっと頑張るんだよね。あの、マンガの……(※ここちょっと聞き取れず)
いん/それは(笑)ちょっと待ってください。それは、いいのか悪いのか……(笑)
よう/あ、聞こえた?(笑)あのね、頑張ってるキャラクターを見るのは好きなんだよ(笑)
いん/なるほど(笑)
よう/物語があるのも好きだし、頑張っている女の子を……女の子のキャラクターを見るのも好きなんだけど……
いん/ほう(笑)
よう/「日常系じゃないとこでやってくんない?」って思っちゃうんだよね(笑)
いん/はっはっはっはっはっは(爆笑)
よう/ちゃんと最初から「部活もの」とか「仕事もの」っていってやってくんない!?みたいな(笑)
いん/なるほど~(笑)
よう/日常系は、ずっとだらだらしててほしい。つまり……なんでかっていうと、頑張んなくてもそのキャラクターには価値があるから。存在理由があるから。
(30分20秒)
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