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「講談社児童文学新人賞」受賞作家オンライン座談会

昨日、昨年度の講談社児童文学新人賞受賞者3名の方によるオンライン座談会がありました。私も視聴を申し込み、受賞作を読み返しつつ(どれもオススメです!)当日を楽しみにしていました。

いやあ、本当に面白かった!

皆さん非常に個性的で、魅力あふれる方ばかり。創作上のお話も興味深く、大変勉強になりました。

座談会は講談社児童図書編集長・片寄さんが質問する内容に、受賞者の方が順に答えていく形式です。

講談社児童文学新人賞に応募した理由からはじまり、モチベーションの上げ方、現代の子どもをリアルに描くために心がけていることまで、創作に関わる人なら興味の湧く話ばかり。以下、それぞれの受賞者の方のお話の中で特に印象に残っていることをメモ程度に書いておきます。

最初にお話しされたのは新人賞を取られた鳥美山貴子さん。

鳥美山さんは子どもたちが折り紙で遊ぶ姿から今回の受賞作『黒紙の魔術師と白銀の龍』を着想し、五カ月ほどかけて執筆されたとのこと。その間に筆が進まなくなった期間もあるものの、一度冷却期間を置いて作品を完成させたそうです。

『黒紙の魔術師と白銀の龍』は、私は文章に魅かれました。どこか品があり、けれど決して読みにくくはなく、いいな、と思う表現が作中にいくつもありました。おそらくいろんな文体で書ける中で、今回は作品の雰囲気に合わせて文章を選択されたのだと思います。

ご自身の実力を謙遜しつつ、最後に「自分でも取れるとは思わなかった賞を頂けたのは、やはり挑戦したからこそだと思う」と、一歩踏み出すことの大切さをお話しされていました。

続いて林けんじろうさん。

方言が魅力の温かい作品『星屑すぴりっと』の作者らしい、素敵なエピソードが多かったです。
林さんは過去、何度も講談社児童文学新人賞に挑まれていたそうです。

そして、十年ほど前には落選こそしたものの、作品を高く評価したある下読みの方からお手紙を受け取り、それを励みに応募を続けてきたとのこと。その下読み担当こそ、なんと!現児童図書編集長である片寄さんだそうです。

もちろん受賞は片寄さんの肩入れなどではなく(仕組み上えこひいきは不可能)、正真正銘林さんの実力なわけですが、素敵な話だな……と感心しました。

林さんとは面識はないものの、すでにデビューしているにもかかわらず、がんがん(今も!)投稿を続ける姿に勝手にエネルギーを頂いています。次にどんな作品を書かれるのか、一読者としてとても楽しみです。

最後に、二十代の若さで受賞された東曜太郎さん。

今回の受賞者の方で、一番自分と作風が異なるのが東さんです。一体どうやってあの魅力的な19世紀エディンバラの世界を構築されたのか、特に、当時の資料をどのように調べられたのか、興味津々でお話を聞いていたところ……

「普通に(海外の)図書館や公的機関が公開している情報を見ています」とのこと。さらに、趣味としてWikipediaの編集をされていて、スコットランドの歴史を英語記事から翻訳していく中で資料を見つけたこともあるとか。

優秀すぎる笑!

今は翻訳アプリなどが充実してはいますが、おそらく英語の資料、というだけで二の足を踏む人がほとんどだと思います。東さんは創作上のメモとして使っているアプリ『Notion』や、書きあぐねた時に参考にされた本『神話の法則』など、役に立つ情報をいくつも紹介してくださりました。

穏やかな話し方の中にも非常に知的な雰囲気が漂い、『カトリと眠れる石の街』の作者としてイメージがぴったりでした。

どの方も、やはりご自身の作品が持つ魅力的な部分と重なるイメージがあり、お話を聞いていて本当に楽しかったです。

惜しむべきは、あと一時間、せめて三十分でいいから、もう少し長ければ……。

片寄編集長の司会も最後まで冴え渡り、本当にすばらしい座談会でした。

受賞者の皆さま、講談社の皆さま、素敵な時間をありがとうございました!

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