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道々に並ぶ葉が暗緑の網となり 崩れかけた紅の花の輪を包む 鳩は 何時も 思いもかけぬ所に降…
宿命のように旋律を否んだから 体に傷を受けて飛ぶ鳥 しいられた全ての歌に背をむけて 降りや…
その白い手に触れるには余りに遠い 雨が開かない扉となって立ち塞ぐ 窓を打つ滴さえ 挑むよう…
彼女の瞳は遥かな記憶を喚び醒ます 青く暗い輝きを湛えた池 不毛の土地を百合の生命で照らし …
闇を次第に深めてゆく 一つの時代 ひとつの季節に 渦巻く怒号 暗い音響を彼方に聞く 透明と…
黄金を湛えた川縁の道 夕刻 暑気と湿気の強い残り香が漂い 午睡のような秋の静寂のなか 何処…
開きかけている扉がはげしく軋み 静寂を抑え込んだ風がたえず ただ甘美なばかりの過去へ吹く すべてをひとつの起伏にかえる川 矛盾、混沌を内包しない透明はなく 薔薇 窓 石 が 儚い調和を生んでいる場所を探して 一本の線で縫いとめてゆく 私はそこで 彼方で混ざり合う ふたつの香りを嗅ぐ 香りはいつも記憶を癒し 体を包む ただ 眠りをもとめている 季節の内側で 何もかもをあらう 優しい眠りを 風を 今
たえず変わりゆくものと 決して変わる事のないものとの 境界で 風が 時間が 季節が そして私…
微かに 開き始めた新たな季節の 扉がある 風はあくまでも乾き 星の軌道 夜の瞬きを そっと私…
断崖を越えた道の先で 薄い灯が 形を定めずに 揺れ動いていた 強い潮風が 纏う衣を濡らして…