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YSS日常フォトコン 審査結果発表!

「yousawscenes」フォトコンペティションの結果発表をいたします。

YSSの立ち上げから間もない募集にも拘らず、800点を超える応募作品が集まりました。応募してくださった皆様ありがとうございました。

「yousawscenes」フォトコンペ開催!【※募集は締め切りました】
https://note.com/yousawscenes/n/ncf82276ffafe


栄えある入賞作品は以下の通りです。
入賞者の皆様、おめでとうございます!

なお銅賞は一作を選ぶ予定でしたが、
最終的に同数票となった二作に授与します。

金賞 

斎藤理音さん

https://twitter.com/rion_saito

「無題」

審査員からのコメント

Ken Tanahashi:植物や樹木を撮影した投稿は数多くがありましたが、これが一番惹かれる写真でした。よく見たら一本の木じゃないんですよね。強風に煽られたような形も魅力的でした。この木の変化を撮影し続けるのはとても面白そうです。

TOYOKI:長年、強い海風を受けながら2本で支え合ってきたのでしょう。自然が自然に抗うその出立ちからは「今」を生き抜く力強さを感じます。

・トモコスガ:木を写しているようで、それではない何かをも感じさせます。これは私の一解釈に過ぎませんが、例えば「焔」(ほむら)。心に燃え立つ怒りや嫉妬といった強い感情などの喩えですが、これはそれをイメージで具現化したかのよう。そうした解釈は抜きにしても、撮影者の即物的な眼差しが感じられます。万物を言葉というラベルで理解する前の世界の見方、でも言えるでしょうか。ツイートに敢えて言葉を添えず、写真だけに留めた(「Untitled」にした)ことからもそうした意識が滲んでおり、写真の本質的な面白さを教えてくれる一枚だと思いました。

・MASA:木はその土地をもしかしたら人よりも長く生きている。だからその土地の環境を時間をかけてその身に宿していくのだと思う。この写真はそんな木の一生を垣間見せるようなものだった。激しい気候だったのか、炎のような揺らぎを風の力によって時間をかけて形作ったかのようで、これは撮ってしまう魔力があるなと思ってしまった。文句なしの一枚です。

・Pan-nu:建物の高さをゆうに越える木のインパクトが凄いです。直線的な背景の前に有機的な杉の枝葉という対比もより分かりやすさを引き出してます。この木に塞がれている窓の部屋はどうなんだろうと気になってよく見てみると恐らく廃屋なんだなと気づきました。持ち主が手を入れず奔放に伸びた枝振りに時間の流れを感じれるのもこの写真の楽しいところだなと思います。近所にあったら通りがかりに毎回見てしまいそうです。

・shimizu_nobu:「そんな馬鹿な。。。」と思ってしまう木の存在感。建築物と木々のミスマッチのような組み合わせが心をくすぐりますね。撮影した時間もすごく好き。

・kawamon:樹木というものは、人々の暮らしの中に溶け込んでいる一番身近な自然ではないでしょうか。例えば、街路樹という文化は、遥か昔である奈良時代から続いていると記録されています。つまりは、街の中の樹木というものは、人々にとって普遍的な愛での対象とも言えると思います。この木が植えられた背景や、このような特異な形に成長した背景は、各々の想像にはなりますが、考えれば考えるほどイメージが膨らみますよね。日常の中で、日々変化していく一つの被写体として、樹木に目を向けてみる魅力に気付くことができました。

・いくら・チャーン:葉のうねりだけじゃなく、幹のうねり具合もいいですね。生垣の投稿も多かったですが、すん、と生えているのにも関わらず、これほどの存在感がある木は珍しくて面白いです。かなり大きい木だと思いますが、毎日見る人は何とも思っていないかもしれません。


銀賞

tommyさん

https://twitter.com/tommy_coconarq

「直角三角形」

審査員からのコメント

・TOYOKI:自分が子供の頃、動物や生き物と話していた気がする。そんな日常の記憶を思い出させてくれる写真です。構図とタイミングには思わず唸ってしまいました。

・いくら・チャーン:画面の中に三角形がたくさん入っていて面白いなと思いました。カラスと子のバトルを見守るおじいちゃんの表情が印象的でした。

・Pan-nu:直角三角形というタイトルに遊び心がありますね。女の子 vs. カラスのそれぞれの姿勢には緊張感、男性はその状況を柔和に俯瞰しているように見えます。絵としても整然としていて面白いですが、この二名と一匹の感情がそれぞれに想像できることがよりこの写真の味わいを深めてます。

・shimizu_nobu:もうタイトルの発想が凄すぎます。ついつい『そうきたか!』って頷かされるタイトル。三人の関係性も構図もこの瞬間も最高ですね。

・トモコスガ:写真を一枚画として勝負する場合、フォーマリズム的な構図の美学が求められますが、この一枚はそれをクリアするだけでなく、物語も含めたところが絶妙でした。距離をとりながらカラスと視覚を通じたコミュニケーションに励むお子さんと、その様子を背後で見守る保護者。それぞれの距離が2:1に見えるのがこれまた見事ですね! 子とカラスの恐怖と好奇心、そして保護者の加護が心理的作用として互いの距離に表れています。

・MASA:生き物がこちらを見るときこちらもその生き物を見る。それは言葉のない対話で何を考えているのか想像で話すしかない。この一枚は子供のそんな純粋さを感じさせてくれる。純粋に驚きと近づき触り対話してみたいという顔、そしてこの後少し引いてしまうような気がするカラスの立ち位置。そんなストーリーが見えます。そして見守る祖父の顔、家族の愛おしい瞬間を記録に残したい撮影者の気持ちを感じた。

・Ken Tanahashi:カラスと対峙する様子を写すことで、お子さんの好奇心と恐怖心がよく表現されている一枚だと思いました。背景の柔らかいボケと光によって、後ろで見守るおじいさんの優しさがより感じられました。

・kawamon:構図の心地よさと、その三角形の中に現れた順序が、とても秀逸だと感じた一枚です。大人、小人、動物。大人のエゴな視点ではありますが、優位性を表した三角形は、人間社会を象徴するものだと思いました。一方で、いわゆる純粋な心というものは、その逆にもなりますよね。以上は、あくまで私個人の感想にはなりますが、構図という手法的な完成度の高さに加えて、様々な解釈の余地を残す素晴らしい一枚だと思いました。


銅賞

Yuko Kawaiさん

https://twitter.com/k_wai_wai_k

「無題」

審査員からのコメント

トモコスガ:「猫の肖像」とも言える絶妙な一枚。カラーではなく敢えてモノクロで仕上げたところにも拘りを感じました。それによって被写体の黒猫が印象的に引き立っています。色映えが強く意識されがちな昨今において、モノクロに挑戦する意欲だけでなく、それを選ぶ理由もロジカルに反映されていると感じました。猫と布団は柔らかいという点でリンクしますが、その触感すらも視覚を通じて伝わってくる、なんとも柔らかい写真です。

・TOYOKI:家猫の日常。冬場はこうなりますよね。至福のときは人間も同じ。掴みどころのない表情がモノクロも相まってかえって愛らしく思えます。

・kawamon:今の季節は冬。私自身も布団から出たくない日々が続いています。そんな最近の心理とリンクします。猫に限らず、布団は生活する上での癒しの場所ですよね。被写体は猫ですが、日常の中で誰しも「あるある」である、布団から出たくないという気持ちを代弁してくれるような、心温まる一枚だと思います。

・shimizu_nobu:今の時期この猫と同じようになってます(笑)。「まだ寝かせろよ」って言われてるような気分になりました。まっすぐな目にも力を感じる。

・いくら・チャーン:実家の猫もよく布団に入り込んでいたなぁと思い出しながら見ていました。睨めつけるような挑戦的な目が布団のリラックス加減とギャップを生んでいて印象的でした。


銅賞

Soichi Nishigakiさん

https://mobile.twitter.com/so_photogallery

「無題」

・TOYOKI:タイミングと構図にこだわったストリートフォト。伝統的な日本の日常が一枚で表現された浮世絵のようでもあります。海外にも発信したい写真ですね。

・トモコスガ:ストリートスナップでは、写り込む通行者の肖像権をどう受け止めるかという点で近年しばしば議論されるようになりましたが、このように顔のカットアウトを狙うことで、そうした問題をクリアするだけでなく鑑賞者の想像を掻き立てる作用も生まれます。女性の背後にいる男性にも同様に顔が影で隠れている点も絶妙でした。そうしたことを踏まえた上で、私達が脳裏で抱く日常(それは非日常とも言えるかもしれませんが)を地で描いて見せたセンスに脱帽です。日傘、マスク、着物、丸側の手提げ、歩道、看板、寺、蔦、提灯。どれひとつ欠けても成り立たない決定的瞬間。

・いくら・チャーン:いろいろな所に目が行くような情報過多な写真を撮るのって簡単なようで難しいと思います。この角でこの傘と婦人に出会えた瞬間を羨ましくも思います。

・Pan-nu:着物の人物と提灯と葉っぱの第一層、道路と自転車の人物の第二層、背景の青空と建物群の第三層の三つのレイヤーがいいバランスの写真だと思います。情報量は割と多いはずなのですがシンプルに纏まって見えますね。近代的な普通の街に、伝統的な着物、お寺の屋根、提灯が入り込んでる状況が日常風景になってる場所って日本でもある程度限られてくるので、また違う日常に暮らす私にはその差異がインパクトとなっています。

・shimizu_nobu:構図がとても好きです。この瞬間を瞬発的に撮ることの凄みを感じます。日本の要素が沢山入ってるのも良いですね。

・kawamon:画の中の主要な要素が「和」で統一されつつ、それが演出でもなく、ありのままの日常として写ったことが伝わる一枚です。その土地の風土が伝わってきますね。「和」というものは、例えば観光資源にもなるように、見方によっては非日常でもありますが、それ自体が当たり前という光景を、現地目線で表した一枚だと思いました。


審査員特別賞 (計8名)


Ken Tanahashi選

榎本由奈さん

https://twitter.com/yuinaenomoto_

「解凍」

選出理由
Ken Tanahashi:
室内で撮影された写真の中で一番好きな写真でした。
今はあまり積極的に外に出れないご時世なので、食品を買いだめして冷凍する機会は増えたと思います。文字通り「解凍」している瞬間を撮影した写真なのかもしれませんが、時代の困難という長い冬が過ぎ、冷えた心をとかす日がきっとくる。こんな時代ですからそんな前向きな解釈もできるなあと思いました。


MASA選

おさん

https://twitter.com/_OJaPa_

「副反応...この後39度オーバー」

選出理由
MASA:
コロナを抑えるために作られたワクチン。そのワクチンそのものが普通の風邪以上の副反応が起きることが日本列島を覆った。その一端とも言える一枚はこれしかなかった。


トモコスガ選

coto takedaさん

https://twitter.com/coto_takeda

「無題」

選出理由
トモコスガ:
日常のひと場面であると同時に、被写体との親身さが不思議と伝わってくる写真として最も印象に残った一枚です。今回、日常写真であることを説明的に表した(=言葉でも説明できるような日常の在り方を表した)写真が多く見受けられた中で、この一枚は、言葉にはしがたく、写真だからこそ表すことのできる日常を表現していると感じました。
これがカラーだったらおそらく選んではいなかったと思うので、モノクロが効果的に活きているのでしょう。また、写真の持つ余白が程よいミステリアスな魅力となり、写真を印象的に仕上げる良い例でもあると思いました。
あるいは、SNS写真で一般的なフォーマリズムの観点からこの写真を見定めると、構図や人物の周囲の余白があまりバランス取れていないと感じられるかもしれません。しかしひとたび構図の美学から解放されると、こうした写真の味が噛み締められます。喩えるなら、フリーハンドで描く絵の自由さ、あるいは幼児による落書きのルールなき描き方。
ある意味、イメージの向こう側に想定しがちな鑑賞者の存在を無視したイメージの在り方として、一つの可能性を秘めた一枚であると感じました。


いくら・チャーン選

.Nacoさん

https://twitter.com/photo_naco

「Kitahiroshima. 2021」

選出理由
いくら・チャーン:
近くに住む人にとっては日常なのに、そうではない人から見た時に突然面白おかしく見えてしまう、そんな魅力を持っていると思います。雨上がりでしょうか、大きな水溜りと小さな丘が無人の公園を寂しげに見せていて、奥の赤いクレーンと芝の対比も美しく感じました。


Pan-nu選

chiyo0520さん

https://twitter.com/chiyo0520_

「慌てて撮ったことすらも...。」

選出理由
Pan-nu:
キャプションからも読み取れるように、ピントが曖昧です。
しかしながらそんなことは取るに足らないことで、この瞬間が残った事が素敵で、その描写の曖昧さすらも良い演出になってます。
湯呑みを見るに、この椅子でのんびりしていたおばあちゃんに駆け寄って行っただろうなとか、パジャマがせりあがるくらい抱きしめてるなとか、愛情が可視化されてますね。子供が写る写真はその全てにおいて、将来その子が見て何かを感じる為に残って行って欲しいと思います。

TOYOKI選

たまきスナップさん

https://twitter.com/tamasna200

「無題」

選出理由
TOYOKI:
日常写真を28mmより広角で撮影しようとすると構図に悩むことが多いですが、ありのままをダイナミックに切り取れば良いと思わせてくれる写真でした。雪上でなぜ短パン・サンダルなのか。状況が理解できない点も、そのダイナミックさにより事件的な印象を与えてくれるのだと思います。とても好きな写真です。


kawamon選

Ryo Taniokaさん

https://twitter.com/ryonryon_tnok

「悲しきキメラ… 」

選出理由
kawamon:
「なぜこうなった!?」と思わず言葉にしたくなるような、インパクトとユーモアのある一枚でした。意図したのか? 偶然なのか? 色々と想像が膨らみます。いずれにせよ、写真として空間を部分的にとらえることで生まれてくる視点でもあり、写真という表現方法の面白さを改めて実感しました。


shimizu_nobu選

斎藤理音さん

https://twitter.com/rion_saito

「無題」

選出理由
shimizu_nobu:
見た瞬間の印象深さは凄まじかったです(笑)。それよりも気になったのは、どうやってこれを書いたのかということ。
ボンネット周りは均一に埃を被っているのに、どうやって描いたの?って考えれば考えるほどこの写真が気になっていく。
偶然の形の残し方も含めてすんごい好きです。


以上、審査結果発表となります。
受賞者の皆様おめでとうございます!


おまけ 【各審査員の選出基準】

今回の審査をおこなうに当たって、まず初めに各審査員がそれぞれ10枚を選び、そこから各賞受賞者を選んでいくという過程を経ました。

その上でそれぞれが意識した「選出基準」を挙げたのですが、審査する側がどんなことを意識して写真を選ぶのかという点において、これらはひとつの参考になるのではないかと思いましたので、最後にそれらを紹介して本企画を締めくくりたいと思います。


Ken Tanahashiの選出基準

・時代性
・驚き、気づき
・数日開けても記憶に残っているか

MASAの選出基準

・撮影者の日常の中で発生した違和感や偶発的な一瞬の切り取り
・日常という作られた演出ではないその人の切り取った時点で発生したメッセージ性
・何かが起きた時にそこにいた、それを切り取れた二度と撮れなさそうなもの

トモコスガの選出基準

・説明的ではない、写真だから表せる表現
・日常を説明しすぎず、余白を残した写真
・写真を見終えた後も心に残る光景

Pan-nuの選出基準

・撮る側の感情が見える
・映っている人の感情が見える

TOYOKIの選出基準

・非演出
・作者オリジナルの視点
・解釈が見る人に委ねられている

kawamonの選出基準

・日常というありふれた空間の中で、撮影者の視点や興味関心が素直に表現された写真
・日常の中で写真を撮る楽しさが伝わってくるかどうか
・人々の生活の中に垣間見えるような、温かさや面白さが伝わる写真

shimizu_nobuの選出基準

・衣食住や生活の瞬間を垣間見た写真
・撮り手の意思や意図の有無
・偶然の形の残し方

以上となります。

ハッシュタグ「#yousawscenes」の広がり方を見ても、日常写真の取り上げられる場がいかに求められていたかを、主催側として存分に確かめることができています。今後もYSSを通じて皆さんの日常写真を見せてください。

この度のフォトコンペに応募してくださった皆様、そしてYSSプロジェクトに参加してくださっている皆様に感謝を申し上げます。

yousawscenesメンバー一同

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