あとがき(入江、ベル、スパナ)

入江正一と、彼を見ていた女の子のなんでもない話

高校生の入江さんと、クラスメイトの女の子の話。
遠くを見ているというのは、自分の背負っている宿命が頭から離れないから。
5年間記憶を失っている彼が宿命の本当の内容を思い出すのはもう少し先でしょうけど、それでも未来の自分から手紙での指示を受け取って「海外の大学に進学しなければならない」と決められていて、しかもそれを律儀に守る人生って一体どんなものでしょうか……
とはいえ、普通の高校生として人並みの青春はしたかったと思うので、愛想笑い程度の周囲への配慮や、趣味に没頭する時間はあったら良いなぁと思います。
そして、この話の女の子は入江さんのことが気になっているので、彼の視線の先をよく見ていました。
アメリカの大学への進学は、何を考えているかわからず、周囲にもなじまない入江さんの選択肢として、聞いても「驚きはしなかった」のですが、会えなくなることに対して寂しいとは感じますよね。
そして卒業式から七年後=25歳くらい、未来編後の一方的な邂逅。女の子は、入江さんが実は気難しい人ではなく、意外と呑気で明るい一面もあることを知らないけれど、好きなCDを買ってご機嫌な彼を見て、なんとなくその端緒を感じていれば良いと思います。
入江さんの笑顔を見て様々なことに気付いた瞬間は、「彼に余計なことを言って邪魔しなくてよかった、私は彼が好きだったんだ」みたいな感じでしょうか。
入江さんが手に入れたのはずっと欲しかった平和な世界、平和な未来です。それで今の彼は十分幸せで、女の子はやっぱり声をかけられなくて、知りたかったことは知らないまま。だけどそれで良い。それは、私にはこの思い出だけで良いと前向きに考えることができたから…なんて思います。


ベルフェゴールのナイフを磨いて返す話

めちゃくちゃタイトル詐欺というか、オブラートに包みまくったタイトルですが。
ベルはヴァリアーの中でも「快楽のために人を殺す」っていうなかなかのサイコパスだと思います。他の人は概ね仕事でやってますよね…
ヴァリアー邸にメイドの一人や二人はいると思うんですけど、法の外って感じなんじゃないかなと思いまして…メイドもワケあり、高給に惹かれて就職、もちろん闇の仕事みたいなもんですから殺されてもその事実は闇に葬られる……みたいなヤバいやつを妄想してました。正直楽しい。
とはいえ、ヴァリアーはボンゴレの正式な部隊ですからそこそこ使える人間を派遣するでしょうけど、なんにせよ激務で人不足。本作のメイドはSSクラスの有能。主に戦える面においてですけど。
イメージとしてはベルが気配を消して背後からナイフを投げても、丸盆で受け止めるくらいはできちゃう。ワケありですから!興味を持ったベルはちょっかい出しちゃう。そんな甘くない関係です。
でも、ベルにとっては彼女の手からナイフが返ってくるのはちょっと楽しみだったりして。


スパナと簪の話

趣味に走りまくりな話でして…私は簪が好きです(蛇足)
舞台は未来編後の並盛、ボンゴレが日本で活動がしやすいように隠れ蓑にしているフロント企業があったら、みたいな。
表向きは普通の会社として経営してて、ボンゴレのこととか知ってる人間はごく一部。上層部だけだと動きにくいこともあるので、入社8年目くらいの若い女性事務員あたりにも事情を知ってる人間を潜り込ませてる。それが本作の女の子です。
あくまでもボンゴレの本業を支えるための会社なので、彼女の仕事も本業関係が大いにあって、ボンゴレ地下アジトからたまにお使いが来て、この日はたまたまスパナだったんです。(10代目や守護者が来るとあまりのキラキラオーラっぷりに会社がざわつくので出禁…とかありそう)
スパナはロボットや日本の文化、Xバーナーだったりと、好きなものはたくさんあるけど、人物に興味を持つ描写があまりないなぁと思ったので、彼の興味の対象はあくまでも簪。
間が悪いというか、気遣いができるようには思えないので、簪をいきなり引っこ抜くという迷惑な行動をしてしまうんですけど、それで髪が全部解けてしまった時はさすがに「あ、これを抜くと解けるのか、悪い事をした」と学んだのでちゃんと謝りますし、そこからお互いに仲良しになっていけば良いなぁと思います。
そして、最初こそ彼女に興味なんか全然なかったのに、気付いたら夢中になっていた……そんなおはなし。