SOA VEE: Validation by Educational Experienceと日本アクチュアリー会の資格等との互換について

 SOAにはVEE: Validation by Educational Experienceという、試験ではなく、大学の単位や他の資格試験で能力を証明する科目があります。具体的には、
 ・VEE Economics
 ・VEE Accounting and Finance
 ・VEE Mathematical Statistics
の3科目あり、それぞれ何かしらの資格証明をSOAに提出する必要があります。(なお、VEE Economicsはマクロ経済とミクロ経済、VEE Accounting and Financeは会計とファイナンスで別々に認定されることもあるため、実質5科目と考えてよいと思います。)

 私は日本アクチュアリー会の正会員資格と、ACTEXという民間企業が販売しているe-Learningを購入・実施し、これら3つのVEEを取得しました。

 この記事では、私がVEE取得で行ったことと、その他日本で取得できるいくつかのVEEの取得方法について記載します。

VEE認定に用いることができる大学の単位や資格試験一覧

 下記のSOAのサイトから見ることができます。Country->Japanを選択してみると、一橋大学、東京大学と早稲田大学の認定単位がいくつか出てきます。他の資格試験を見たい場合は、Alternate VEE Optionボタンを押して確認してください。(なぜかこのボタンが消えるときがあるので、その場合は下記リンクから再度アクセスしてみてください)

VEE School Search 
https://store.soa.org/VEESchoolSearch.aspx?VEE=displayonly

VEE認定で用いることができる身近な試験など

1.日本アクチュアリー会の資格を用いる

 日本アクチュアリー会の資格試験では、2018年6月30日以前に取得した準会員資格以上でVEE Mathematical Statisticsが取得できます。またこれに加えて、通常の試験科目の一つであるExam SRMも取得できます。さらに、2030年までに準会員資格以上を取得した場合、VEE Economicsを取得することができます。

 (もっと正確には、2018年6月30日以前に取得した日本アク試験を用いてVEEの旧科目であるVEE Applied Statisticsが取得できることとなっています(VEEは2018/7/1に再編)。この旧科目であるVEE Applied StatisticsがVEE新科目のVEE Mathematical Statistics とExam SRMに分裂したので、どちらも取得できるという算段です。)

ASA and CERA Curriculum Changes Transition Rules 
https://www.soa.org/education/general-info/2016-transition-rules-asa-candidated/

 ただ、先ほどから強調している通り、VEE Mathematical Statisticsは2018年6月30日以前に取得した準会員資格であることが必要です。これの後での取得で認定されることは、現在は無いようです。(現在まだ日本アクチュアリー試験を受験されている方はショックですね…)

 日本のアクチュアリー資格を用いてVEE認定を行う場合は、日本アクチュアリー会を通じて資格証明書を発行してもらい、日本アクチュアリー会から直接SOAに送付することになります。なお、発行にかかる費用は5,000円です。

 なお、ア会のHPでは証明書発行についてわからなかったので、ア会の事務局にメールして証明書発行のフォームを頂きました。その際に、ア会の方にSOAに証明書を直接送付してもらうよう依頼すると良いと思います。

(ちなみに、上記で「直接」SOAに送付、と強調したのは、私が申請した際、直接送付せず様々な方にご迷惑をおかけしたからです…。なお、直接送付が必要と記載されているSOAページは以下の通りです。)

Applying for VEE Credit
https://www.soa.org/education/exam-req/course-info/edu-vee-applying-process
>Candidates are required to submit official original transcript(s) from all the institutions listed on the application directly to the VEE Administration Committee.


2.証券アナリスト(SAAJ)を用いる

 日本証券アナリスト協会による証券アナリストを用いても、一部VEEを認定することができます。ただし、認定されるのは、
 ・VEE Economicsのマクロ経済部分のみ(ミクロ経済は別途必要)
 ・VEE Accounting and FinanceのFinance部分のみ(会計は別途必要)
となっており中途半端です。

(2020/1/3 23:30 追記)
 ご指摘を頂いて追記します。2019年7月1日以前までに取得した場合は、旧科目であるVEE Corporate Financeを通じてVEE Accounting and Finance全体が取得できるようです。

Validation by Education Experience Requirements
https://www.soa.org/Education/General-Info/2016-vee-requirements.aspx
>Candidates who earn Corporate Finance credit prior to July 1, 2019 will receive, upon claiming that credit, transition credit for the complete Accounting and Finance requirement. Note that it is not required that the credit be claimed by this date.

(追記ここまで)

 VEEの再編前は、日本アクチュアリー会の資格でVEE2つ、証券アナリストで最後の1つを完成させるというのが常套手段だったようですが、現在ではこのように非常に半端ですので、SOAのVEE目的で証券アナリストを受験することはあまりお勧めできないと思います。

 ただし、証券アナリスト自体は、多くの金融機関で有用とされている資格だと思いますし、後述するように、例えばVEE Economicsのミクロ経済部分のみのe-Learning等も販売されているため、状況によっては一考する価値があるかもしれません。

3.e-Learningを購入・実施する

 日本に居ながら一番簡単にVEEを獲得する方法は、ACTEXもしくはCoaching Actuariesが提供するe-Learningを購入・実施することだと思います。

Coaching Actuaries
https://www.coachingactuaries.com/
右上部のEXAMSから各科目の価格等が見られます
ACTEX
https://www.actexmadriver.com/
左部のExam->VEEで各科目の価格等が見られます(なぜかCoaching Actuariesの商品も買えるようです)

 価格は、Economicsが$850程度、Accounting and Financeが$600程度、Mathematical Statisticsが$600程度のようです(高い!)。また、例えばEconomicsのミクロ経済だけ購入、という利用もできるようです(その場合は価格は半額程度)

 私はVEE Accounting and Financeをe-Learningで取得することにしたのですが、上記2つで迷った結果、ACTEXを選択しました。というのも、どちらもFinal Examがあるのですが、どちらもSOAかCASの正会員を試験監督として付けなければならないのです。面倒だなぁと思っていたところ、ACTEXはProctorUというパソコンのWebカメラを用いた遠隔試験監督システムも利用することができるようで(費用は$28)、これなら煩わしさもないから便利だなと思いこちらにしました。

ProctorU
https://www.proctoru.com/

 実際ACTEXのVEE Accounting and Financeを受講した感想ですが、日本アクチュアリー会のKKTを勉強したことがある人であればめちゃくちゃ楽勝です。また、Final Examもe-Learningで提供されたまとめシートみたいなものを半日漬けくらいすれば十分満点が取れます。

 ProctorUも、試験官とのやり取りは全て英語なので少し不安でしたが、パスポートを見せるだとか、机の周りを見せるだとか、コミュニケーションはその程度なので、利用の際に困ることも特にありませんでした。

4.その他

 Actuarial Outpostを眺めていると、ACTEXやCoaching Actuariesよりも安く済ます方法があるようで、VEE EconomicsはCLEPというWeb上の教育認定制度を用いたり、VEE Accounting and FinanceはCPCU 540という資格試験を受けるのがよくある手段のようです。

 ただし、試験の形式やその難易度や、どのくらい金額をSaveできるかはよくわかりません(すみません)。ACTEXやCoaching Actuariesは高いですがわかりやすく確実なので、面倒であればそちらを選ぶ方が楽かもしれません。

CLEP
https://clep.collegeboard.org/
CPCU 540
https://www.theinstitutes.org/course/finance-and-accounting-insurance-professionals

まとめ

 ということで、日本の方がVEEを取得する場合は以上の3つのどれかになるかと思います。(このほかに楽そうな方法があればご連絡いただければと思います。)

 正直な感想としては……とにかくお金がかかるなぁという一点に尽きます。逆に言えば、お金でだいたい解決できるということでもあるかなとも感じました。

 なお、各VEEの認定の申請に、それぞれ$50かかります(ここでも金かかるんかい、という…笑)。認定申請してから認定されるまで(Transctiptに反映されるまで)はおおよそ長くて1か月くらいでした。

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