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面白いマンガを読みたいって?エンバンメイズは読んだか?

今回ご紹介するのは世にも珍しいダーツ漫画である。タイトルは「エンバンメイズ」。完結済みで全6巻。

ダーツのルールにはいくつか種類があるが、例えばカウントアップであれば1ラウンド3本のダーツを投げて8ラウンド終了時点で得点の大きい方が勝者になる。一般的なスポーツと決定的に異なるのは「満点」が存在する点だ。20のトリプルと呼ばれる領域にダーツの矢が入れば60点になるため、8ラウンドの最高得点は3×60×8=1440点になる。

本作に登場するダーツプレイヤーは百発百中で狙ったところに投げられる人間ばかりである。カウントアップであれば必ず両者ともに1440点をたたき出せる。え?決着つかないじゃん。それがそうでもない。

本作では試合に応じて特殊なルールの下で戦う。場合によっては負傷し、場合によっては1 vs 1の戦いでなかったりする。頭に銃を突き付けられた状態でダーツをまともに投げられるのか?利き手を負傷した状況では?強力な電流を浴びせられた直後では?極限状態でのダーツの達人同士による頭脳戦が本作の魅力であろう。時にイカサマを使い、時にルールの穴をついて対戦相手をねじ伏せていく。なぜかって?ダーツの腕前だけでは互いに決着がつかないためである。

じゃあデスノートのような雰囲気かと問われればそうでもない。というよりも読後感は水戸黄門に近い。主人公の作戦が見事にはまって敵キャラを叩き潰すシーンが爽快でイイのだ。何度も読み返したくなる。かっこいい主人公が邪悪な敵を爽快に倒す。漫画はそれでいいと思わせてくれる作品だ。

絵柄もいい。主人公が少年漫画らしからぬ表情をして敵を追い詰めるシーンには迫力がある。主人公の通り名は「迷路の悪魔」。ダーツの的を迷路になぞらえており、本作のタイトルにもなっている。数多の名プレイヤーを迷路に閉じ込めて生還させなかったと作中で語られており、悪魔の見せる表情が作者の高い画力によって表現されている。

ダーツはビリヤードやゴルフと同じでメンタルスポーツであり、精神状態が成績に大きく影響する。無論、主人公も敵も百発百中で狙った場所に投げられるのだが、それは「肉体と精神がまともな状態であれば」という枕詞がつく。本作で主人公と敵が競い合っているのは、いかなる極限状態であっても揺るがぬ心を保てるかという心の強さである。心の弱さが負けに直結するゲームの面白さを味わいたければ本作を強くお勧めする。

(追記)
作者である田中一行先生の最新作「ジャンケットバンク」もよろしくな。ジャックポット・ジーニー編までは読むんだぞ。今はジャンプ+でも連来しているから読むしかない!


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