「STAR OF TRINITY」 第1話

形式:脚本

○[場所](時間)
N・・・ナレーション
M・・・モノローグ
T・・・テロップ
F・・・フラッシュ

○夜川邸、居間(昼)

実況『日本っ、悲願のWIC初優勝ー!!!侍たちがやりましたッ!!!!』

テレビから興奮した実況の声と歓声が鳴り響く。
夜川明日奏(よかわ あすか)(7)(女)、テレビ画面に映っている日本代表の選手たちが人差し指を天に掲げる光景を瞳に焼き付ける。(手にはうさぎのぬいぐるみを持っている)

N:その時、少女の瞳に1つの憧れが宿った。

[扉絵]

○仙台育雄高校、正門(朝)

星燿(ほし ひかり)(16)(女)N<私立仙台育雄学園高等学校──>
(F:
『仙台育雄』の文字、ライオンのロゴ、背番号が背中にプリントされたユニフォームを着た選手たちの姿)

燿N<今、世界で最もメジャーな"異能力者の"バトルスポーツ『インフィクション』>
(F:
「炎」を操る異能力者と「氷」を操る異能力者の戦闘のイメージ)

燿N<その超強豪校に、私、星燿は……>
燿、桜舞い散る正門をくぐり抜ける。

燿N<入学しました!>
燿、期待に満ち溢れた表情で正面の校舎を見据える。
T『星燿 (16) スポーツ学科 1年』

燿N<今日からここで青春を謳歌するぞー!と、言いたいところですがしかし、これから高校生活を送る上で私には重大な懸念があります>
燿、表情が悩んでいる表情になる。

燿N<それは、私が極度の人見知りだってこと>
燿、しょんぼり。道の真ん中でしょぼくれてる燿、知らず知らずのうちに周囲の生徒から注目される。

○[回想]中学時代

T『中学時代』

燿N<中学時代は人見知りのせいで3年間ぼっちを極めることに…>
燿、教室の隅の席から楽しげな女子のグループを羨ましそうに眺める。

○現在に戻る

燿N<でも、もう私は人見知りな自分とはサヨナラするって決めたんです!>

燿M<高校では友達100人作って青春をエンジョイするんだ!よーし、頑張るぞ~!>  
(F:
燿(パーティハットにサングラスをかけてる)が陽キャの友達とクラッカーを鳴らしてパーティをしてるイメージ)
燿、闘志を燃やす。
周囲の生徒たち、挙動不審な燿を見てヒソヒソ話をしてる。

○女子トイレ(午後3時半)

T『放課後』

ドン!

ギャルA、ドアに手を叩きつけ燿に壁ドンする。
ギャルA「(イライラしながら)ねぇ、どうしてくれんの?」
ギャルB「なんとか言ったらー?」

燿「(半泣き)……」
燿M<どうしてこうなった>

燿M<結局、誰にも話しかけられずに友達1人もできなかったし、ギャル2人に詰められるし、今日は厄日だー!>
燿、酸っぱいものを食べたかのような顔をする。
(F:
周囲の生徒に話しかけようとするもできずにあわあわしてる燿)

ギャルA「(燿の眼前にポーチを突き出しながら)あたしのポーチ汚したんだから弁償しろよ」

燿、ビクッとする。

燿「え、え、あ、う」
燿M<ポーチ?………ハッ>

○[回想]食堂(昼)

燿M<(しょんぼりしながら)また初日ぼっち飯です…>
燿、定食プレートを持ちながら空いてる席に座ろうとする。

燿「わっ!」
燿、前からスマホをいじりながら歩いてきたギャルAとぶつかり、プレートを落とす。

ギャルA、尻餅をつく。燿の定食を被り制服やポーチが汚れる。

燿「あ…す、すすすみませんすみませんすみません!す、すぐ、なんか、拭くものを」
燿、必死に謝りながらアワアワする。

ギャルA「(苦笑いを浮かべ)チッ、はぁ……あー、大丈夫。そっちこそ大丈夫?」

○現在に戻る

燿M<あの時のか~>
燿、悟った表情で冷や汗をかく。

ギャルA「マジ最悪。けっこう高かったんだけどこれ。どうすんの?」

燿「あ、えっと…すすすすみません!えっとえーと」
燿、必死に腰を折り首を縦に振る。

ギャルB「どうするー?」
ギャルA「もっとハッキリ喋ってくんね?」

燿M<ひえええ>

燿「(半泣きで)………べ」
燿M<もうこれしかない…>

ギャルA「なに?」

燿M<しょうがないよね…>
燿「……べ、弁償

ガチャ

燿、背後の個室ドアが開き前に押し出される。
燿「わっ」

夜川明日奏(16)、燿の背後から現れる。

ギャルA・B&燿、明日奏の突然の登場に驚く。

燿、驚いてるギャルA・Bと真顔の明日奏の顔をキョロキョロ見回す。

ギャルA「夜川…明日奏」

明日奏「(だるそうに)…眠い」

燿M<夜川…あれ?この人どこかで>

明日奏、ヨロヨロと出入り口のドアに向かって歩く。
ギャルB、横にどいて道を作る。

燿&ギャルA・B、明日奏に視線を送る。

明日奏、ギャルBの横を通り過ぎてから床にあった雑巾を踏んで盛大に転び、尻もちをつく。

燿&ギャルA・B M<え~>
燿&ギャルA・B、アセアセ。

明日奏、すぐさま立ち上がって歩き出し、出入り口の前で突然立ち止まる。

明日奏「(振り向いて)…あーそうだ。そこのあなた、ちょっと来て」
明日奏、燿を指指す。

ギャルA・B「(目を丸くしながら)は」
燿「(目を丸くしながら)……私?」

明日奏「そう。ちょっとあなたに用がある」

ギャルA・B、互いに顔を見合う。

ギャルA「(苦笑いを浮かべ)ごめんねぇ。見たらわかると思うけど、今私たちがこの子に用あるんだよね。だから後にしてくれるかな?」

明日奏、しばらくぽかーんとする。

明日奏「え」

ギャルA「は?」

明日奏「ごめん。聞いてなかった」

ギャルA「(キレ気味で)いやだから私たちが先にこの子に用があるの」

明日奏「それは聞いた」

ギャルA「(ブチギレて)お前死ねや#/&___#&jpb」

燿M<わー怒りすぎて人語じゃなくなってる…>
燿、アセアセ。

明日奏「(真っ直ぐな瞳を向けながら)まだ死なないし普通に断る。あなたの理不尽な責任の押しつけよりも私の用事は優先されるべき」

ギャルB「はぁ!?お前何言ってんの?」
ギャルA「&#&kn')(_s/@」

明日奏「(ギャルAを指差しながら)食堂での騒ぎは私も見ていたから知っている。あれはスマホにばかり気を取られて前方に注意を払っていなかったあなたが招いたこと」

明日奏、燿を見る。
明日奏「だから、あなたが弁償する必要はない」

明日奏、ギャルAの方に向き直る。
明日奏「つまり、"あなただけ"が悪い。以上」

ギャルA「は、意味わかんなっ!てか部外者が口出してくんな!!」

明日奏「もうかれこれあなたの話を10分以上は聞かされてるし、もう部外者ではないのでは」

ギャルA「だっる!盗み聞きとかマジでキモいから」

明日奏「話が通じない」

ギャルA「お前だよ!」

燿M<(混乱)あわわわ。ど、どうすれば>

明日奏、1つため息をつく。
明日奏「…なら、"戦う"しかない」
明日奏、鋭い眼光をギャルA・Bに向ける。

燿M<雰囲気が変わった?>

ギャルA「…は、はぁ?」
ギャルA、困惑した表情で明日奏の威圧にやや怯え出す。

明日奏、ギャルたちの目の前までじわじわ詰め寄る。
ギャルA・B、後ずさり。

ギャルA「(震えながら)ちょ、こっち来んな」
ギャルB「(困惑しながら)な、なに…」

明日奏、じわじわ壁までギャルA・Bを追い詰める。
ギャルA・B、壁に背がつきこれ以上後ろに下がれないことに気づく。

ギャルA「(顔を引き攣らせ)……っ」

燿、その光景を目の当たりにし息を呑む。

燿M<これは…マズいよね>

燿が間に入ろうとした瞬間、明日奏、目にも留まらぬ速さで拳を繰り出す。

燿「夜川さ!」

ギャルA、燿の声に反応して前方に振り返ると明日奏の拳が顔面に迫っている。

ギャルA「(顔を引き攣らせ)ひぃぃっ!!!」

ヒュッ

明日奏の拳がギャルAの頬をかすって通り抜ける。

ギャルA「はぁっ…はぁっ…ッ」

しばらくの沈黙。

燿M<すごい…今の夜川さんの動き、全然目で追えなかった…ってそんなこと言ってる場合じゃない>

ギャルA、膝から気が抜けたように崩れ落ちる。

燿「あっ」
ギャルB「ちょ、ちょっと」

明日奏、出した拳をゆっくりと戻し、燿を見る。

明日奏「行こ」
燿「…え?あ、ちょっ」
明日奏、すかさず燿の手を引き歩き出し、トイレの外へ出ていく。
ギャルA・B、その姿を呆然と見送る。

ギャルB「……あ」
ギャルB、ギャルAを見るとギャルAはお漏らしをしている。

○廊下

明日奏、燿の手を引きながらしばらく歩く。そして、唐突に立ち止まる。

明日奏「(背中越しに)もう行っていい」

燿「(目を丸くして)えっ?」

明日奏「(少し振り向きながら)別に用はない。ただ、困ってるみたいだったから」

燿M<(少し俯いて)そうか。助けてくれたんだ>

明日奏「それじゃ」
明日奏、そのまま立ち去ろうとする。

燿「(慌てながら)あっ…ま、待ってくださいぃ!(声を振り絞って)」
燿、明日奏の制服の袖を掴む。

明日奏、振り返る。

明日奏「ん」

燿「(深くお辞儀)さ、先程は、助けていただき、本当にありがとうございました!」

明日奏「…うん。どういたしまして」

燿「…あ、っと…あの、よろしければなんですけど…なにかお礼させていただけま/明日奏「セイゼのメリーゴーランドパフェ チョコミントトッピングでお願いします」
燿、明日奏の勢いにビクッと驚く。

燿「(微笑みながら)……あはは、わかりました。誠心誠意ご馳走させていただきます!」
燿M<すごい食いつき。夜川さんって食いしん坊なのかな?>
(F:
食いすぎて腹が膨れてる夜川のイメージ)

明日奏「それじゃあ早速行こう」

燿「…えっ!?ああっ、ちょ、ちょっと待ってください!」

明日奏「今度はなに?」

燿「その前に、ひ、一つだけ確認させてくれませんか?」
燿M<さっきのあの動き。きっと夜川さんは…>
(F:
ギャルAに夜川が拳を繰り出す場面の回想)

燿「よ、夜川さん、『インフィクション』やってますよね?」

明日奏「(こくりと頷き)うん。やってるよ」

燿、それを聞いて目を輝かせる。

燿「やっぱり!そうだったんですね!さっきの動きを見てから気になっていたんです」

明日奏「それがどうかしたの?」

燿「実は私もやってるんです!『インフィクション』!」

明日奏「へぇ」
明日奏、少し笑みを浮かべる。

燿「高校でもインフィクション続けるんですか?」
明日奏「当然。そのために"育雄"(ここ)に来た」
燿「…わ、私もです!」

燿M<夜川さん、相当実力のあるインファイターなんだろうな~。どんな異能で戦うのかな~どんなウェポンを使うのかな~。きっとかっこいいんだろうな~>
燿、満足気に笑みを浮かべながら1人で想像に浸る。

明日奏「…まぁそれは良いとして、早くセイゼに行こう。メリーゴーランドパフェが私を待っている」
明日奏、出てきたよだれを拭う。

燿、明日奏に声をかけられ現実に引き戻される。

燿「えっ!?あ、はい…夜川さんは見学会には行きませんか?」

明日奏「見学会?」

燿「はい。育雄インフィクション部が新入生に向けて練習の様子を公開する見学会が今日アリーナであるんです。噂によるとトップチームの先輩方の模擬戦が見られるとか…。てっきりさっきまで明日奏さんはこれから行くものだと思ってたんですけど…」

明日奏「……ほお」
明日奏M<見学会…模擬戦…>
明日奏、少し口角を上げる。

燿「(モジモジしながら)ま、まぁ実は私も先輩方の練習を見に行きたい気持ちはないと言ったら嘘になりますが…明日奏さんへのお礼の方が当然大事だと思ってます。あ、安心してくださいね。だか/明日奏「見学会へ行こう」

燿「はい!………へっ?」

明日奏「メリーゴーランドパフェはその後でも間に合う」

明日奏M<仙台育雄のトップチームの戦いが見れる>
明日奏、笑みを浮かべる。明日奏の手が武者震いを起こしている。

○アリーナ2階席(午後4時)

[描写切り替え]アリーナの全体→アリーナ内部

T『アリーナ』

2階席から大勢の生徒たちが1階フロアに視線を送っている。

燿「こ、ここが育雄のアリーナ…広いですね」
明日奏「(指さしながら)席、あそこ空いてる」

燿&明日奏、空席の観客席に腰掛ける。

燿「さすが超強豪校。見学者でほぼ席が埋まっています」

明日奏「(真顔で)人がゴミのようだ」

燿「(明日奏の方に振り向き)えっ」
燿、あせあせ。

明日奏「あ。誰か出てきた」
燿「えっ」
燿、明日奏の言葉に応じて1階のフロアに視線を向ける。

黒いユニフォームに身を包んだ3人(男1:女2)がフロアの中央に向かって歩いている。

燿、そのうち2人のユニフォームの背番号がそれぞれ『44』『67』であることに気づく。

燿M<あっ、育雄の『44』と『67』…てことは>

燿「…あのうちの2人はおそらくトップチームの選手たちです。も、もしかしたら噂通り"1 on 1"形式での模擬戦をするのかもしれません」

明日奏「へぇー」
燿、ふと明日奏の横顔を見ると明日奏が笑ってることに気づく。

燿M<夜川さん、笑ってる?>

〇アリーナ 1階フロア

一原喗司(いちはら ぐんじ)(16)(女)&東照聖那(とうしょう せな)(17)(男)、前川莉奈コーチ(まえかわ りな)(26)(女)を挟んで向かい合う。

喗司「(不敵に笑いながら)へっ、新入生の前でオレにボコされたら大恥かくなぁ、聖那くぅん」

T『一原喗司 (16)スポーツ学科 2年』

聖那「(微笑を浮かべ)君がね」

T『東照聖那 (17) スポーツ学科 2年』

前川コーチ「両者、新入生の前ではりきるのは良いが程々に。これはあくまで新入生に向けた"模擬戦"であることを自覚しなさい」
前川コーチ、喗司と聖那に厳しい視線を送る。

T『前川莉奈 (26)コーチ』

喗司「へいへーい」
喗司、つまらなそうに返事をする。

平沢狼牙(ひらさわ ろうが)(17)(女)&梅津晃(うめつ あきら)(17)(男)&西牧花糸(にしまき かいと)(17)(女)、少し離れた位置から喗司と聖那を見守る。

狼牙「(呆れ顔で)あいつら、相変わらず仲が悪いな」

T『平沢狼牙 (17) スポーツ学科 2年』

晃「ははは、そういえば1年前の今日も喧嘩してたね。あの2人」

T『梅津晃 (17) 英文学科 2年』

花糸「新入生の前でかっこつけたいだろうしなー」
花糸、いたずらっ子のようにニシシと笑う。

T『西牧花糸 (17) 普通科 2年』

狼牙「なんにせよ、ヒートアップするようだったらすぐに止めに入る。一応準備しておけ」

花糸「ま、コーチもいることだし大丈夫でしょ」
花糸、頭の後ろで手を組む。

前川コーチ「両者、距離を取れ」

喗司&聖那、それぞれコートの端へ移動する。

○アリーナ2階席

燿「…いよいよ始まるみたいですね。夜川さん」

明日奏「…うん」
明日奏、立ち上がり前方に歩き出す。

燿「夜川さん?」
明日奏、テラスから身を乗り出しながら燿の方へ顔を向ける。

明日奏「ちょっと行ってくる」

燿「えっ!?行ってくるってどこに」

明日奏、テラスから飛び出す。

燿「ちょっ!?明日奏さん!?」

○アリーナ1階フロア

前川コーチ「始めッ!」

喗司「おし!」

喗司&聖那、前川コーチの開始宣言とほぼ同時に距離を一気に詰める。

そして、接近する2人の頭上に突如として現れる影。

喗司「なっ!?」
聖那「ん?」
喗司&聖那、同時に上を向く。

喗司&聖那、咄嗟に後ろに下がる。
明日奏、喗司と聖那の中間に着地する。

前川&狼牙&晃&花糸「!?」

燿「ぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
燿、テラスから身を乗り出す。

会場全体、ザワザワと喧騒に包まれる。

明日奏「こんにちは」

喗司「(怒りと笑いが混じり合ったような表情で)なぁんだぁテメェは」
喗司M<こいつ…>

聖那「(苦笑い)君、今自分が何してるかわかってる?」

明日奏「模擬戦、私もしたいです」

前川コーチ「そこの新入生ッ!何のつもりだ!今すぐにコートから出なさいッ!」

狼牙「なんだあいつ」
花糸「(嬉々として)ひゃー!何この展開、おもろ~」

燿M<夜川さん、何考えてるの~!?>

喗司「(ニヤリと笑って)模擬戦がしたいだぁ?」

明日奏「(真顔で)はい」

喗司「(鼻で笑い)はっ、正気か?やめとけよ。大怪我するぞ」

明日奏「するとしたらあなたの方」

喗司「(こめかみがピクつく)あぁ?」

明日奏「だって、きっとあなたは私より弱いから」

喗司「(堪忍袋の緒が切れる)へぇ……おもしろいな、お前…へっ!いいぜ、新入生。お望み通り叩きのめしてやる、よ!」
喗司、地を蹴り駆け出す。

前川「なっ!止まれ!一原ッ!」

聖那「あのバカ!何やってんだ」
聖那、険しい表情を浮かべる。

喗司M<『加速(アクセル)』>
喗司、一瞬で加速し明日奏の懐に入り込む。
喗司、拳を固く握り明日奏の腹部に打ち込もうとする。
喗司「テメェは寝てろ」

明日奏、不敵な笑みを浮かべる。(口元をアップに)

燿「夜川さんっ!!!!」


トン


喗司、繰り出した拳は空振り、背後に一瞬で移動した明日奏の手刀をうなじに喰らう。※この場面を大きくコマ取る
そして、(白目になり)気絶し前屈みに倒れ込む。

聖那&前川&狼牙&晃&花糸「!?」

明日奏「(倒れた喗司を見ながら)おやすみなさい」

○アリーナ2階席

燿M<(衝撃を受けて)え>

モブ生徒A「何が起こったんだ…」

会場全体、ザワザワザワザワ、喧騒が大きくなる。

???(須江田監督)(36)(男)「…フッ、さっそくやってんなー」
2階席の人気のない通路からこっそりと1階フロアを見下ろす。
※シルエットしかわからないようにする

○アリーナ1階フロア

聖那M<(唖然として)なんだ今のは…?>

明日奏「次」
明日奏、聖那に視線を向ける。

前川コーチ「……おい、お前、気は確かか!」
前川コーチ、コートの中に入ってくる。

明日奏、聖那をその目で真っ直ぐに捉える。
明日奏「(不敵に笑いながら)先輩、先輩を倒したら明日から私がトップチームのレギュラーってことになりますよね?」

聖那「(苦笑いを浮かべつつ)なるわけないでしょ」
聖那M<こいつ…イカれてる>
聖那、冷や汗をかく。

前川「おい、無視するなッ!」

明日奏「そうですか。まぁ良いです。続きを戦りましょう」

聖那「(後頭部をポリポリとかきながら)ははっ続きか……なぁ、君、いったい何者なの?」

明日奏「何者…」
明日奏、一度下を向いてから顔を上げて再び正面に向き直る。
明日奏「そうですね…」


明日奏「(真剣な表情で)私は、夜川明日奏。

世界一のインファイターになる女だ」
明日奏、人差し指を天に突き上げる。


前川コーチ「なっ!?」
前川コーチ、明日奏を捕まえようと近づく足を止める。

聖那「(呆気に取られ笑いながら)は、はは、漫画の主人公かよ」

狼牙「……」
狼牙、無表情でじっと明日奏を見つめる。

晃「フフ。世界一、と来たか」
花糸「いきなり飛び込んできてそれ言うのぶっ飛んでんね~。おもしれー女」
花糸、ニヤリ。

会場全体、ザワザワザワザワ、喧騒が最大限になる。

燿「……………」
燿M<世界一…>
燿、じっと明日奏を見つめつつ左手で胸を抑える。
燿、その瞳に明日奏の姿を焼き付ける。

燿N<きっと私が忘れることはないだろう>

明日奏「(不敵に笑い)それじゃ、続き戦ろうか」

T『夜川明日奏 (16) スポーツ学科 1年』

燿N<私の瞳に、1つの憧れが宿ったこの日のことを>

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