「STAR OF TRINITY」第3話

○仙台育雄高校 女子寮 燿の部屋(朝)

燿、布団から手だけ出し鳴り響く目覚まし時計を止める。

燿、布団から顔出し大きく欠伸をする。

燿、洗面所で歯磨きをする。

燿、簡単な朝食を作る。

燿、テレビを見ながら朝食を食べる。

燿、パジャマから制服に着替える。

燿、スマホで入部テストのESに記入する。

燿、洗面所で再び歯磨きをする。

燿「行ってきます!」
燿、写真立て(妹と燿が写っている)に挨拶をする。

燿、ドアを開けて外に出る。

○仙台育雄高校 女子寮 廊下

燿、ドアを閉めて横を見ると明日奏が同じようにドアを閉めてる。

燿「あ」

明日奏、声に反応して燿の方を見る。

明日奏「あ」

○仙台育雄高校 中庭ベンチ(昼)

明日奏、燿、ベンチに並んでサンドウィッチを食べる。

燿「それにしてもまさか同じ寮、しかも隣の部屋だったとは、驚きました」

明日奏「うん。なんで気づかなかったんだろ」

燿「ふふふ、不思議ですよね」
燿、明るく微笑む。

明日奏、パクパクとサンドウィッチを食べる。

燿「あっ、そういえば明日奏さんは入部テストの案内見ました?」

明日奏「入部テスト?」
明日奏、首を傾げる。

燿、インフィクション部入部テストの案内が映ってるスマホの画面を明日奏に見せる。
燿「はい、インフィクション部の。今日の放課後から早速実施されるそうです。まずはESを書いて提出する書類選考になってます」

明日奏「今書く。燿はもう書いたんだよね?」

燿「はい、朝書いちゃいました」

明日奏、ES入力画面を開きテキパキと入力していく。

明日奏「終わった」

燿「早っ!?私はそれ書くのに30分ぐらいかかりましたよ」

明日奏「へぇ。設問5つしかないけどね」

燿「5つですか…本当に?」
燿、怪訝そうな顔をする。

明日奏「うん、5つ。ほら」
明日奏、燿に画面を見せる。

燿「ほんとですね…私のESは設問が50問あったんですけど…どういうことですかね?」

明日奏「人によって送られたESの内容が違うのかも」

燿「この前に入部届けを出した入部希望者それぞれに違う内容のESを送ってると…なんだか不安になってきました…」
燿、不安気な顔をする。

明日奏「まぁ燿は優しいから大丈夫だと思う」

燿「(ちょっと呆れつつ)優しさ関係ありますかね…?まぁしっかりESの設問には答えられたとは思うんですけど…こればっかりはお祈りですね」

明日奏「うん。あと私も昨日先輩を倒したから既に合格してると思うし大丈夫」

燿「(苦笑いで)それはどうでしょうか」
燿M<むしろそれがマイナスになるかも、とは言わないでおこう>

明日奏「まぁ、2人で一緒に合格しよう」

燿「はいっ!」

燿M<よーし、絶対に合格して明日奏さんと同じユニフォームを着るぞ!>
燿、闘志を燃やす。

○アリーナ(放課後)

約60人程の生徒が集まっている。

燿、周りをキョロキョロ見回す。
燿M<やっぱり、見学会の時に来てた生徒の数よりも遥かに少ない>

前川コーチ「それではこれより入部テストの2次審査を始める!」

燿、息を呑む。
燿M<うー緊張してきたー>

明日奏、光の隣で前川を見てげんなりした表情。
前川、それに気づく。

前川コーチ「おい、そこの新入生。なに私を見てげんなりしている。落とされたいのか?」

明日奏「すみません」
明日奏M<確実に目をつけられた>

前川コーチ「2次審査の監督官を務めるコーチの前川だ。これより、2次審査についての説明を始める。この2次審査は仮想空間における"3 on 3"(トリニティ)形式でのチーム戦を行う。そこで、まず君たちにはこの場にいる入部希望者で3人組のチームを自分たちで作ってもらう。この場にいるテスト参加者の各人の異能や基礎体力等についての情報はそれぞれ君たちのスマホから閲覧できるようにメールで送信しておいた。これを参考に制限時間30分以内にチームを作れ。そして、チームを作ったら各自今日は解散していい。説明は以上だ。それでは、2次審査を開始する!」

燿「…明日奏さ/モブ生徒A「夜川さん俺と組みましょう!」モブ生徒B「いや、私と組もう!」
燿、明日奏に声をかけようとするも押し寄せてきた生徒たちに退かされる。

開始直後、周囲の生徒たちが明日奏の周りに殺到する。

燿「え?ちょっ!え?あ」

燿、いつの間にか明日奏を囲む人混みの外に押し出され1人になる。

燿「………また、ぼっちかーい!!!!」
燿、涙を流しながら悟った表情。

狐火灯里(きつねび ともり)(16)(女)「おーおー、あちらさん随分と繁盛してはるな~」
燿、背後の声に反応して振り返る。

灯里「そんで、ここに売れ残りが2つ」
灯里、ニヤリと笑う。

T『狐火灯里 (16) 普通科 1年』

燿「……売れ残り」

灯里「そうショック受けんといてや。燿ちゃん」

燿、名前を呼ばれ驚く。
表情「え?あ、あれなんでわ、私の名前…あ、あなたは?」

灯里「ウチの名前は狐火灯里。トモちゃんって呼んでや。んで、ウチがあんたのことを知ってるのは"コレ"のおかげや」
灯里、入部テスト参加者の名簿が映っているスマホの画面を見せる。

燿「あっ、なるほど。でも…なんで私に声を?」

灯里「そらあんたの"異能"が欲しいからよ」

燿「私の異能を?」

灯里「そうや。ウチの考えるベストなチームにあんたの能力は必要なんや」

燿「(申し訳なさそうに)…そ、その申し出はありがたいんですけど…私は」

明日奏「…燿」
明日奏、燿の背後から声を掛ける。

燿「明日奏さん!」

明日奏、疲れた様子。
明日奏「なんとか抜け出してきた……で、そちらの人は?」

灯里「お~はじめましてやね巷で話題の夜川はん。ウチは狐火灯里。よろしゅうなぁ」

明日奏「夜川明日奏。よろしく…で、あなたは燿と組みたいの?」

灯里「せやな」

明日奏「そう。そうなると私とも組むことになるけど大丈夫?」

燿「…明日奏さん」
燿、明日奏の方を見る。

灯里「おぉ大丈夫に決まってるやん!あんたの実力は見学会で見させてもらったで。あんたと組めれば2次審査突破は決まったようなもんや。よろしゅーな!」
灯里、満面の笑みを浮かべる。

明日奏「じゃあよろしく」
明日奏、灯里と握手をする。

燿M<すごい…トントン拍子でチームが出来ちゃった>

灯里、パチンと音を立てて手を合わせる。

灯里「ほな。これからの作戦会議を兼ねた親睦会をやるとして…セイゼでも行かん?」

明日奏、無言で目を輝かせながらサムズアップ。

燿「い、いいですね!時間もありますし、ぜひ」

灯里「おーし、ほな行くかぁ!」

明日奏「メリーゴーランドパフェ…じゅるり」

灯里、明日奏と燿に見えないように不気味に笑う。

〇セイゼリア(夕方)

灯里「アッハッハッハッハッ!いやーマジでトップチームの先輩ボコッてた時は度肝抜かれたで」
灯里、腹抱えて大笑いする。

明日奏「どうも」

灯里「背番号が『44』の方は一原喗司で『67』の方は東照聖那。最近全国的な知名度も上がってきた2年生や。あんたはそんな2人をボコしたんや。このことが広まったらしくて、今や学校全体であんたが話題になってるらしいで」

明日奏「へぇ」

灯里「なんや自分、あんま興味なさそうやな」
灯里、怪訝そうな顔をする。

明日奏「まぁ」

燿「………」
燿M<やばい。会話に入れない>
燿、あせあせ。

ピロン。

燿、自身のスマホに通知が来たことに気づく。

燿「あ、入部希望者宛のメールが来たみたいです」
明日奏&灯里、スマホを開いてメールを見る。

灯里「おっ、これはチーム戦に関する情報みたいやな」

燿「…舞台はM県T市の市中心部」

灯里「使える武器(ウェポン)はソード(短距離)、ハンドガン(中距離)、ライフル(長距離)か…なるほどな、これらの情報を基にチームとしての戦術を考えろっちゅーわけや」

明日奏「……」
明日奏、じっとスマホの画面を見る。

灯里「ほな、とりあえず改めて明日奏たんと燿ちゃんの希望ウェポンとポジション教えてくれや」

明日奏「…私はソード。ポジションはアタッカー、いろんな人と戦りたいからCF(センターフォワード)がいい」

灯里「ほうほう。燿ちゃんは?」

燿「あっ、私はライフルが…良いです。ポジションはバックのサポーターで」

灯里「なるほどな~。じゃあウチは消去法でミドルポジションでウェポンはポジション適正のあるハンドガン使った方が良さそうやな~」

燿「…い、いいんですか?」

灯里「いいもなにも実はミドルがウチの希望ポジションやねん。だから構成についてはこれで決まりや。もしかしてウチら、相性良いんちゃう?」
灯里、嬉しそうに笑う。

それにつられて燿も笑う。
燿「そ、そうかもしれないですね」

灯里「そうやそうや!…で、ウチ一つ作戦思いついてるねん」

明日奏&燿「作戦?」

〇仙台育雄高校 監督室(夜)

前川コーチ「はぁ!?夜川明日奏は須江田さんが非公式にスカウトしてきたぁ!?」
前川、回転イスに座り背中を向けている男に驚きの声をあげる。

須江田語(すえだ かたる)(36)(男)「そうだ。俺がここに来て力を証明してみせろと言ったら入学してきた」

須江田、イスごと前川の方を向く。

須江田「そ、そしたらあいつ、いきなり一原と東照をボコしやがった。フハハハ傑作」
須江田、大笑いする。

T『須江田語 (36) インフィクション部 監督』

前川「笑ってる場合じゃないですよ!ウチではスカウトはしないってことになってるんですよ!?」
前川、机に両手を叩きつけ前のめりになる。

須江田「まぁまぁ。スカウトってほど大したことはしてねぇよ。現に何ら金銭的な授与はしてないし。ただ俺は育雄(ここ)をおすすめしてやっただけだ」

前川コーチ「それでもこのことが漏れたら」

須江田「漏れたとしたらお前の責任だ。この話はお前にしかしてないからな」
須江田、イスの回転させ前川に背を向ける。

須江田「さて、次のステップで夜川の奴は何を見せてくれるのかな」
須江田、口角を上げる。

〇セイゼリアの外(夜)

明日奏「くしゅん!」
明日奏、くしゃみをする。
明日奏「?」


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