「STAR OF TRINITY」第2話

N<『異能』──今や世界総人口の約6割の人間が生まれつき持つ特殊な能力>
(F:
手から風を出す異能者、猫に変身する異能者、透明になる異能者のイメージ)

N<『インフィクション』のプレイヤーである『インファイター』は、必ず何らかの異能を有している──>

○アリーナ1階フロア

聖那M<夜川明日奏…彼女の"異能"は何だ…>
聖那、正面の明日奏に警戒を払いつつ明日奏の異能を分析すべく思考を巡らせる。

明日奏、笑みを浮かべる。

聖那M<先程、彼女は喗司の背後に"瞬間移動"した。素直に受け取れば彼女の異能は「瞬間移動」ということになるが…>
(F:
明日奏が喗司の背後に回って手刀を食らわせた場面の回想)

聖那M<それだとどうにも引っ掛かる。能力が「瞬間移動」ならばわざわざあそこまで喗司を引きつけた意図は何だ?先手を取った方が遥かにリスクは低いはず」
(F:
喗司が明日奏に迫る場面の回想)

前川コーチ「おい!お前たちいい加減にしろ!」

聖那「うるさい!ちょっと黙っててください!今良いとこなんです!」
聖那、前川を睨んで怒鳴る。

前川「…う、うるさい?」
前川コーチ、生徒に怒鳴られ鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。

狼牙「…すごいな、あいつ。」
晃「こういうとこあるよね。彼」
花糸「アハハハハ」
花糸、腹抱えて笑う。

聖那M<まぁいずれにせよ、今は夜川の「瞬間移動」は「相手と肉薄した時」に発動すると仮定して一定の距離を保つことを意識した方が良さそうだな>

明日奏「私の異能、わかりました?」

聖那「(苦笑いで)いーや、まだわからないね。でも、これから探らせてもらうよ」

明日奏「そうですか。じゃあ、こっちから行きますね」
明日奏、左足で地面を蹴り一気に聖那までの距離を詰める。

聖那「ッ!」
聖那M<速い!>

明日奏、正面に左足の蹴りを入れる体勢へ移行する。

聖那、瞬時に体勢を後ろに預けて後方へ回避する。

明日奏の蹴り、聖那に当たらず。しかし──。
※大コマ割り

聖那「ぐはッ」
聖那M<何…!?>
聖那、明日奏の蹴りを避けたはずも腹部に衝撃を受けコートの端まで吹っ飛ばされる。

花糸「あ、当たった!」
晃「避けたように見えたけど」
狼牙「たしかに聖那は避けた。だが、事実として奴の蹴りは入ってるようだ」
狼牙、明日奏を厳しい目で見る。
狼牙M<夜川明日奏…どこかで…>

(前川コーチ、狼牙たちにコートの外に退かされており無気力化している)

聖那、地面に腹部を抑えてかがむ。

聖那「はぁはぁ」
聖那M<避けたはずだぞ…>

明日奏「射程範囲内です」

聖那「はぁ…クソッ」
聖那M<いったい何の能力だよ>
聖那、痛みに顔を歪めながらも笑う。

聖那、下を向く。
聖那M<…!>
聖那、なにかに気づく。

明日奏「……」
明日奏、ふと2階席の人気のない通路の方へ視線を向ける。

聖那「…そうか。そういうことか」
明日奏、聖那の声に反応して聖那に視線を向ける。

明日奏「…気づいたみたいですね」
明日奏、少し口角を上げる。

聖那「(立ち上がりながら)ああ。僕の認識が正しければ、もう君の能力には対処できる」

明日奏「へぇ」
明日奏、ニヤリ。

聖那「これ以上先輩として恥をかくわけにはいかない。さぁ、第2ラウンドだ」
聖那、ニヤリ。

明日奏「それでも、私からは逃げられない」
聖那「それは、どうかな!」

明日奏&聖那、正面から衝突しようとする。

○セイゼリア(午後6時)

明日奏「……」
明日奏、ムスッとしながらテーブルに突っ伏す。

燿「…まぁまぁ、元気出してください」
燿、子供を慰めるような眼差しで明日奏を見つめる。

明日奏「消化不良…」

燿「あはは」

○[回想]

狼牙、明日奏&聖那が正面衝突する直前に間に割り込み、明日奏と聖那の拳をそれぞれ両手で止める。

明日奏&聖那「!?」

狼牙、明日奏と聖那それぞれの腕を内側に引く。
明日奏&聖那、互いの頭をぶつける。

ゴツン。
明日奏&聖那「ッ~~~!」

明日奏&聖那、頭を抱えて転がる。

狼牙「そろそろいい加減にしろお前たち。暴れるなら他所でやれ!」

狼牙、2階席の方を見る。

狼牙「来てくれた新入生には悪いが今日の見学会はもう中止だ!」

○[現在に戻る]

燿M<あの後結局、止められちゃったもんなぁ>

明日奏「……」

燿「で、でも、すごかったですよ!夜川さん!トップチームの先輩2人をあそこまで一方的に追い込んでしまうなんて」
燿、必死に明日奏の気分を盛り上げようとする。

燿M<まさかこんなにすごい選手だったなんて>

明日奏「……うん」
燿「………」
燿M<んー…>

微妙な空気の中、店員が商品をテーブルに運ぶ。

店員「お待たせ致しました。いちごティラミスとメリーゴーランドパフェのトッピングチョコミントでございます」

燿「あっ!来ましたよ夜川さん!」
明日奏、一瞬で目を輝かせる。

明日奏「メリーゴーランドパフェ」
明日奏、メリーゴーランドパフェを一口食べて幸福感に満ち溢れた顔になる。

燿M<そんなに好きなんだ…>
燿、いちごティラミスを口に運びながら微笑ましそうに明日奏の食べる様子を見る。

燿「そういえば…夜川さんはなんで私を助けてくれたんですか?」

明日奏「気分」
明日奏、パフェを食べながら答える。

燿「気分!?」

明日奏「うん。理由とかない。なんとなく」

燿「そうなんですね…あ、あの、先輩方の模擬戦に乱入したのももしかして気分…ですか?」

明日奏「違う。あれは証明するため」

燿「しょ、証明?」

明日奏「そう。手っ取り早く私の実力を証明したかった。トップチームのあの2人を倒せば必然的に私がトップチームに値するとわかる。あなた…そういえばあなたの名前何だっけ?」

燿「あ、そういえば自己紹介まだでしたね。私は星燿といいます。スポーツ学科A組です。よ、よろしくお願いします!」

明日奏「夜川明日奏、スポーツ学科B組。よろしく。…それで、燿があの2人がトップチームだって教えてくれたから証明にあの2人を利用することにした。まぁ、そのせいで前川って人にかなり怒られたけど」

燿「そ、それはそうですよ。むしろ説教で済んだだけマシかもです」
燿M<てか、夜川さんの乱入、私のせいでもあった~>
燿、冷や汗をかく。

明日奏「うん。教えてくれてありがとう」

燿「あ、いえ…それで、明日奏さんは1年生でトップチームを目指してるんですか?」

明日奏「うん。できるだけ早くから高校のトップクラスの人達と戦りたい」

燿「へぇ…すごいですね…」
燿、止めていた手を動かしティラミスを口に運ぶ。

燿「……そういえば夜川さんの異能ってなんだったんだろ?」
燿、心の中で呟いたつもりが声に出てる。

明日奏「知りたいの?」

燿「へっ!?は、あ、声に出ちゃってました!す、すみませんっ!今日知り合ったばかりの私なんかに聞かせられないですよね、そんなこと」

明日奏「別にいいよ」

燿「え?いいんですか?」

明日奏「うん。私の異能は…」

燿M<トップチームの先輩を圧倒した夜川さんの異能、気になる…!>
燿、息を呑む。

明日奏「……やっぱりやめた」

燿「えっ!?えぇ!なんでですか?」

明日奏「うーん、まぁ言わなくてもどうせそのうちわかるかなって」

燿「わ、わかりませんよ~」

明日奏「いや、わかる。だってこれから同じチームの仲間になるでしょ?」

燿「…えっ」
燿M<夜川さんと同じチーム>

明日奏「どうしたの?」
明日奏、燿の反応に首を傾げる。

燿「…あ、いえ、そうですね」
燿、明日奏に笑顔を向ける。

燿M<そうか…このまま入部できれば夜川さんと同じチームで戦えるかもしれないんだ>

○セイゼリア外(午後7時)

明日奏「メリーゴーランドパフェ、さすがという他ない。燿、ごちそうさまでした」
明日奏、満足気な表情で燿にサムズアップ。

燿「いえいえ。満足していただけたようで何よりです!」

明日奏「うん……それじゃ。また明日」
明日奏、燿に小さく手を振る。

燿「…あ、はい!ま、また明日」
明日奏、燿の返事に頷いてから背を向けて歩き出す。

燿、どんどん小さくなる明日奏の背中を見つめる。

燿M<なんだか今日はあっという間に時間が過ぎた気がする……夜川さん、すごく話やすかったな…それに、かっこよかった……もっと、仲良くなりたいな…>

燿の口元のアップ(口を少し開く→唇を結ぶ)

燿、明日奏の背中めがけて走り出す。

明日奏「わっ」
明日奏、後ろから燿に手を掴まれる。
明日奏、燿の方へと振り向く。

明日奏「燿、どうしたの?」

燿、声を振り絞る。燿、明日奏の顔を真っ直ぐに見る。
燿「……あ、あの!夜川さんっ!…わ、私と………友達になってくれませんかっ!」

明日奏「やだ」

燿「…………え?」
燿、呆気に取られる。

明日奏、不敵に笑いながら燿の両手を取って真っ直ぐに燿の顔を見る。

明日奏「だって、私たちはもう友達、でしょ?」

燿「ッ!……は、はい!友達ですっ!」
燿、涙目になりながら喜ぶ。

明日奏「うん…あ、そういえば、夜川じゃなくて明日奏でいい」

燿「は、はい!明日奏さん!よろしくお願いします!」

明日奏「あれ?燿、泣いてるの?」
燿「な、泣いてません!ぐすっ」





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