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「部屋の中の象」

「部屋の中の象」(Elephant in the Room)

「『全員が知っている大きな問題であるにもかかわらず、誰も口にすることができないこと』を、部屋の中に象がいるのに誰も何も言わない状態の比喩として『部屋の中の象』という。」

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女子プロレス「アイスリボン」のお話です。

2020年7月12日、大阪・豊中市の「176BOX」で実に8か月振りにアイスリボン大阪大会が開催されました。

席数は限定されているとはいえ、満員のお客さんです。

そのセミファイナルで、

藤本つかさ・つくし・鈴季すず vs. 宮城もち・藤田あかね・Yappy 

という6人タッグが行われましたが、その試合後、取締役選手代表である藤本つかさ選手が、大要以下の通りのマイクをしました(週プロモバイルに逐語的にアップされています)。

藤本「何年か前からくるみとつくしの間に大きな溝があるのは知ってる。周りにいる選手も知ってるし、お客さんの中にも分かってる人はいる。カード組む身としては、団体内NG(組んだり当てたりできない)が一番辛い。私はこのカードでタッグベルトを争うのを観たい。」

ここでいう「大きな溝」というのは、ご承知の方も多いでしょうが今から3年前に起きた「事件」に起因するものです。当時未成年だったつくしさんは処分期間中に成人したことから氏名が公表されました。

業界内でも大きな騒ぎとなりましたし、多くの関係先に心配や迷惑をかけたことは想像に難くありません。つくしさんは謹慎となり、その後、大晦日にキャリアリセットという形で選手として復帰しました。

大阪大会での藤本さんのマイクに対してくるみさんは「つくしと試合するのは正直イヤ。つくしはこっちから言わないと分かってくれないし、正直これから当たることもないと思ってた。でも周りに迷惑をかけてるのは知ってるし・・・。」とはっきり確約することはできませんでした。

これに対しつくしさんはマイクを取り「2年前に横浜文体で対戦した時に、これが終わればまた元通りの関係に戻れるかと思ったけど、逆に気持ちが離れるばかりだった。でも、タッグベルトを賭けて戦えば関係が変わるのなら、自分はくるみさんと戦いたいです。」と、関係修復に意欲を見せました。

確かに2年前の2018年8月26日に横浜文体で柊くるみ vs. つくしのシングルが行われ、試合後にくるみさんは「自分の思いが伝わったのか分からないけど、このシングルがなかったらずっと話をすることもなかったから、やって良かったと思う。」というコメントを残し、つくしさんが「大舞台で気持ちが伝わって欲しいなって人からこのカードやりたいって言ってくれて。自分にプロレスがあって良かった。これが無かったらもう良い関係には戻れなかった。」とコメントすると、くるみさんも「なんか機会があればまた組んでもいいかなって思いはしますね。」と応え、関係修復へ向けた兆しはあったように思えました。

実際、この横浜文体後につくし・柊くるみ組でタッグベルトに挑戦したこともあり(2018年10月8日後楽園)、組んだり当たったりも幾度かありましたが、いつの間にかそれも途絶えがちになっていきました。

そういういきさつの中、行われた先日の大阪大会。

くるみさんは7月15日になって、ツイッター上で

「遅くなりましたが大阪大会ありがとうございました。やっぱりなにも分かっていないんだな。今の時点では挑戦したくない。でもそれがダメなことは分かってる。だから、もう少しだけ一人で考えさせてください。」

とつぶやいてます。

やはりくるみさんは本当の意味でつくしさん(が犯してしまった過ち)を赦すことができてなかったのかなという感じです。くるみさんが二人の間の溝について公の場で話しているのを見た記憶はありませんが、10年前に10歳と12歳でデビューして、ずっと盟友関係にあったつくしさんに思うことは山ほどあったのでしょう。

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アイスリボンのモットーは「プロレスでハッピー」

これは単に楽しい試合を見せるということではなく、「喜怒哀楽の感情を全てリングで表現する。」「カッコいいところだけでなく、みじめでカッコ悪い姿も全部お客さんに観てもらおう。」という「人間の生身の感情をリングでさらけ出す」ということだと思ってます。

藤本さんは「二人に信頼関係が無いのなら、敢えて組むことはしない。」と仰ってましたから、横浜文体でカードが組まれるかは分かりません。

ただ、アイスリボンを観ることの多い客の一人としては、これこそ「プロレスでハッピー」の精神が発揮される機会なんじゃないかと思ってます。これまでも、お客が思わずドン引きするようなヒリヒリした生の感情のぶつかり合いが沢山ありましたが、それをプロレスに昇華してきたからこそ、今の魅力的なコンテンツに繋がっていると思うからです。

これは只の観客の無責任な希望でしかありませんが、わたしは今度こそ二人の関係が修復されるチャンスだと思うので、是非とも二人の対決を観たいなと強く思います。

「くるみさんとつくしさんのギクシャクした関係」というのはまさに上で触れた「部屋の中の象」そのもの。

これを追い払えれば、二人の関係はより深いものになるのではと思います。

二人のタッグタイトル戦は、是非実現して欲しい。

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