論語と算盤 34冊目

ゆえに余は青年に向かって、ひたすら人格を修養せんことを勧める。青年たるものは真摯にして率直、しかも精気内に溢れ、活力外に揚がる底のもので、いわゆる威武も屈する能わざるほどの人格を養成し、他日自己を富裕にするとともに、国家の富強をも謀ることを努めねばならぬ。

とにかく人は誠実に努力びん勉して、自ら運命を開拓するが宜い。もしそれで失敗したら、自己の智力が及ばぬためと諦め、また成功したら智恵が活用されたとして、成敗に関わらず命に託するがよい。かくて敗れても飽くまで勉強してるするならば、いつかは再び幸運に再会する時が来る。人生の行路は様々で、時に善人が悪人に敗けたごとく見えることもあるが、長い間の善悪の差別は確然とつくものである。ゆえに成敗に関する是非善悪を論ずるよりも、まず誠実に努力すれば、公平無私なる天は、必ずその人にさいわいし、運命を開拓するように仕向けてくれるのである。

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