クリエーションことはじめ
新価値が生まれる順序は、
①生み出そうと決心する
②生むための戦略を立てる
③リソースを集める
④製造し、公開する
⑤販売し、利益を回収する
ではない。
そうではないのだ。
①先駆的なものが、まず、売れる
②売れたことに、後から気付く
③提供形態を変えて、また売ってみる
④また、売れる
⑤リソースが集まってくる
⑥大きく育っていく
新価値とは、こういう順番でないと、生まれないし、育たない。そういうことではないか。
考えてみたら、プ譜が、そうだった。
ことの発端は、docomoイノベーションビレッジで無料のワークショップを募集してみたら、100名以上が集まったことだった。これが、最初の「売れた」だった。そのあと、
①慌ててフレームワークを作った
②本のオファーを頂いた
③慌てて書いた
④研修にしてみた
⑤オンライン研修にしてみた
⑥ウェブサービスにしてみた
という順番で、物事が進んできた。
この道のりは、順風満帆あっという間の大成功、とかでは一切なく、数々の失笑、無視、無理解、冷や汗、批判、産みの苦しみ、肩透かし、失敗、などなどとともにあった。
しかし、まぁ、いますぐこれが大ヒットしないと死んじゃう、キャッシュカウ、早く早くカモンカモン、ということではなかったので、地味に、地道に、4年ぐらいかけてやってきた。
ぼちぼちやっていると、捨てる神あれば拾う神で、ふとした出来事が、磨きをかける契機となってきた。ひとつひとつは小さいが、いくつかのことが積み重なった瞬間に、ギアが一段階、上がる感触もあった。
そんなこんなを続けていたら、ふと振り返ってみると、プ譜というコンテンツを通じて動く経済規模は、結構、等比級数的に育っていた。
まぁ、最初の最初が、微々たる初期値だし、のんびりやっているので、さほどのあれでは、ないけれど。
ふと、振り返ってみると、どの瞬間も必ず「すでに売れていたこと」を手掛かりにやれたから、良かったのかもしれない。
売れた、といっても、金額の多寡の問題ではない。そもそも、お金の問題ですらない。人の心が動き、行動に繋がっていた、ということである。
一番最初に売れたのは、無料ワークショップのタイトルだった。無名の2人の話を100人以上の人が、聞きにきた。
事業開発の組織化、みたいなことは、最初のドミノが、倒れてから、慌ててやれば良いのではないか。
そこから育てることは、そのあと、ゆっくりやれば、良いのではないか。
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もちろん、莫大な初期投資が必要な装置産業では、そうはいかないかもしれない。そうした産業構造における新価値創造の、日本最高の事例は、HONDAのFITじゃないかな、と、思う。
極限まで、狙って狙って狙い澄ます、限りなくカイゼンに近いイノベーション。
でも、多分、それにしたって、起きていることの本質はさほど変わらないはずである。
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大事なのは、最初の「売れた」を作るための手数と、評価、である。最初の「売れた」は、それがささやかすぎて、見過ごしがちである。しかも、最初からやんややんやの大喝采、なんてことはなく、疑念と不安のなかで、そのささやかな声を聴く必要がある。
それでも、必達条件としての「売れなければならない」の大変さに比べたら「何が売れたのだろうか?」のほうが、まだ、全然、やれる。
・続けていける、大テーマの上でやる
・生きてていく条件が許す範囲で、ぼちぼちやる
・試したいことは、試せるときに、試す
・売れたことを根拠に、売りながら試す
・リソースは、来るもの拒まず去るもの追わず
・こちらの当然とあちらの満足を出会わせる
こういうこと、ではないか。
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ここまで書いたことを改めて読んでみて、考えてみと、リーンだとかプロトタイピングだとか、MVPだ、マーケットフィット、バーニングニーズだとか、そういう言葉で言われることと、そんなに変わらないことを言っている気もする。
でも、やっぱりどこか、違う。例えばウェブサービスはそうした事業開発の御作法をお勉強して、かなりの部分をそこに当て込んで組み立てていた。振り返ってみると、ちょっと、「売りたい」先行の立ち上げだったところがある。最近は「売れた」から始める積み上げ式にシフトチェンジしているので、少しまた潮目が変わっている気がする。
同様に、多くの世間における実践は、コミットメント&バックキャスト主義で、無理があることをやろうとしていることが多いように見える。
もちろん、目標からの引き算は大事だけど、おそらくそれは、短期的な課題に対してやれば良いのではないか。
長期的には、積み上げ式で考える。できなり、で良いのだ。きっと。ギアを上げてくれる要因とは、偶然性やセレンディピティがないと、出会うことはできない。
変革だ、創造だ、とリキむと、かえって、力は出ない。全然、出ない。クリエーションとは喜びを生み出す事であり、遊び心が介在しなければ、そういうものは、舞い込んでこない。
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