「同人作家に無記名ツールから声をかける理由」を聞いてみました(回答数129)

ある日思い立ってこんな質問をしました。

すると予想を上回る回答数があったので、@tos でどんどんツイートし、モーメントにまとめました。

https://twitter.com/i/moments/1146635655088263168

https://twitter.com/i/moments/1146770011949682688

まとめたので、このまとめを読んでいただければいいんですが、大量にあるので読むのが大変かなというのと、項目立てして記事にすることで見えてくることがあるかもと思ったので、あらためて記事を書いてみることにします。

なお、あくまで私(悠)という個人がTwitterでゆるっと募り、寄せられた回答ですので、ある種の偏りがある可能性は充分にあります。私になんらかの否定的な感情を持っていらっしゃる方は回答していない可能性が高いでしょうし。
また、私の問いかけは、ポジティブな内容・ネガティブな内容を問わず、またメッセージの種類も限定していないのですが、結果的にほとんどが「好意的な感想、応援」についての回答になりました。
この点もふまえてお読み下さい。

いただいた回答を私なりにかみ砕き、分類して、実際の回答からいくつか抜き出しています。複数の理由を挙げた回答も多く、正確に分類できていない部分、強引にまとめてしまっている部分もあると思いますが、お許し下さい。

認識されたくない

多かったのが「個人として認識されたくないんです」「たくさんいるファンの一人でいたい」という回答。
恥ずかしい、という回答も多いです。
スケートリンクに花束やプレゼントを投げ入れたり、お芝居等のプレゼントボックスを使うような感覚かな、と思いました。

しつこいと思われたくない、等

自分を認識されたくない理由として、「メッセージが多いことや内容がアツいことを相手が気にするのでは」「しつこい、気持ち悪いと思われたくない」という危惧を示した回答もたくさんありました。

自分の素性 - ①交流がないから

自分の素性を相手に知らせることで何らかのマイナスがある、という回答群です。このタイプは大きく2つに分かれていて、ひとつめは、交流がない、または少ない相手から感想が来ると驚かせてしまうのでは、失礼なのでは、という懸念からのもの。

自分の素性 - ②相手の地雷要素かも

自分の素性を相手に知らせることで何らかのマイナスがある、という回答群のふたつめ。好意的な言葉を伝えたいが、自分の活動や好みが相手の好みと合わないことで相手を不快にさせてしまったり、自分に悪感情を抱かれてしまう可能性があり、それを避けたい、という回答です。具体的には、相手と逆カプだから、自分が雑食だから、他ジャンルだから……等々、いわゆる「棲み分け」が挙がっています。

人間関係 - ①返信いりません

言葉は送りたいが、それに人間関係の諸々を付随させたくない、という回答群。大きく4つに分けられるかなと思います。1つ目は、「返信しなきゃ」という義務感を相手に持たせたくない、という回答。

人間関係 - ②社交辞令ノーサンキュー

2つ目は、「お世辞や社交辞令と思われたくない」「相手も自分を褒めなきゃという義務感を持たせたくない」といった回答。もともと交流がある相手や、同ジャンルのクリエイター同士の場合が多いようです。
人間関係を伴う場での褒め言葉の難しさですね。

人間関係 - ③交流ノーサンキュー

3つ目は、「感想は伝えたいが、相手と交流を持ちたくない」という回答。作品が好きであることと、相手と関係性を発生させたいというのは別だ、ということですね。

人間関係 - ④具体的なネガティブ経験・事例から

4つ目。記名で声をかけて残念な結果になった自分や周囲の事例、あるいは記名で声をかけると確実に良くない結果になるとわかっている場合。
(胸の痛む事例も多く、こういうのはなくなるといいなぁ……と思います)

気軽さ・字数制限などツールのメリット

メッセージをどうぞ、と枠組が設けられていることにより、挨拶や社交辞令などを省いて言いたいことだけ書いて送れる、という気軽さ、ハードルの低さを挙げている回答もたくさん。
送れる文字数の多さや、こういったツール特有の公開返信システム、通知設定に左右されず確実に届くことなどをメリットとして挙げているものもありました。


鍵アカウントだから

自分が鍵つきのアカウントで、相手が自分をフォローしておらず、DMも開放していない場合、Twitter上で声をかける手段がないから、という理由。


相手の気持ちにそぐわない内容かもしれないから

自分では相手や相手の作品への好感のみを伝えたつもりでも、うまく伝えられていなかったり、なんらかの価値観の相違から、相手が嫌な気持ちになる可能性を考えてしまうと、記名では送りにくい、といった回答がいくつかありました。
言葉を送った相手がどのような感情を抱くかは送信者がコントロール可能な範囲ではないので、どんな内容でも絶対に大丈夫とは言いがたい。無記名メッセージであれば万一相手が嫌な思いをしたとしても人間関係の悪化につながらないため、記名時に比べて送信の勇気が出る、といった内容です。

終わりに

たくさんの回答から見えてきたのは、「素敵な作品の作者へ、感動や応援をぜひ伝えたい。だけど顔の見えない相手とのコミュニケーションはしんどいし、自分の気持ちがうまく伝わらないのは辛い」という率直な気持ちです。

そういったしんどさを軽減し、言葉を届けたいという気持ちの後押しをしてくれる無記名メッセージツールという道具は、うまく使えば人と人とのほどよい距離を保ちつつ嬉しい言葉を相手に届けられる、便利なものです。
現代の同人文化においてこうした道具が必要になる背景も、今回の質問に寄せられたたくさんの回答が示してくれています。

一方で、気軽であるがゆえの厄介さもはらむのが、無記名メッセージツールというものだと思います。
人と人とのコミュニケーションが伴う諸々のわずらわしさを取り払うことで届けられる「本音の言葉」は、素敵な花束にも、刃物にもなり得るものです。

回答にも「悪意ある言葉を送ることはしない」「指摘などは記名でする」といった言葉を添えて下さった方が少なからずいました。
使用者のそういった意識を信じて設置するしかないのが、無記名メッセージツールの難しいところです。(この点で悪口をAIで弾いてくれる「マシュマロ」は便利ですが、残念ながら万能ではありません)

「匿名」について

マシュマロなどのサービスで「匿名」という表現を使用していることから、しばしばこれらのサービスで送られるメッセージは「匿名のメッセージ」と呼ばれます。

しかし、本名で同人活動をしているかたは、特に二次創作界隈においてはほぼ皆無でしょうし、その点では我々は皆「匿名」の存在ではあります。
そのことから、「匿名のメッセージについてあれこれ言うが、そもそもみんな匿名で活動しているじゃないか」という発言も見られます。

ですが、Twitterやpixivのアカウント名、同人誌の筆名などとして使用し、過去・未来の作品や日常の言動と紐付けられ、人間関係を構築している「名義」に紐付けた発言と、そうした活動と一切切り離された「名無しの言葉」は、同じものではないと私は考えます。
今回寄せられた多くの回答からも、その二つが「どのように、どの程度」違うか、が読み取れるのではと思いました。

今回の回答まとめが、送る人、受け取る人に何らかのヒントになればいいなと思います。

なお、この記事では「無記名で送る人」の回答のみ取り上げましたが、「使わない人」「設置している人」「設置していない人」それぞれについても質問し、回答を(件数は多くないですが)モーメントでまとめてあるので、ご参照下さい。

https://twitter.com/i/moments/1148038754197618688

https://twitter.com/i/moments/1146769244589191169

https://twitter.com/i/moments/1148026555794255872

お詫びというか言い訳というか

この記事の「分類しコメントをして例示する」というやり方自体や、私の行った分類自体に恣意性を感じる人もいらっしゃるかと思います。(私自身、ある程度明確な意図を持って分類しています)

いただいた回答自体は記事の最初に紹介したモーメントにほぼ全件(「悠さんの胸にしまって下さい」と書かれていた一件以外)、届いた順でまとめていますので、ぜひそちらもどうぞ。(マシュマロのフィルタは標準にしていますので、食われたものもあるかもしれませんが)