偉大なる一発屋たち 〜 ONE HIT WONDER

中1から洋楽の世界にドップリ浸って来た私にとって、音楽はずっと空気に等しい存在だ。もっとも長く深いお付き合い?はQUEENだが、2年前の映画の大ヒットのおかげで一般の方々や若い方々にまでフレディちゃん(勝手にそう呼んでます。)が認識されるようになるなんて、長く生きてると嬉しいこともあるな〜としみじみ感じています。

さてそんな私の音楽人生の中で忘れられないのが、偉大なる一発屋達の存在だ。「一発屋」という呼び方は一あまり良い意味では使われないかもしれないが、あえてここではリスペクトを込めてそう呼ばせてもらいたい。

まず最初の曲は私の洋楽史初の一発屋、1978年に全米1位になったPLAYERの"BABY COME BACK"だ。当時ディスコサウンド全盛期に、無名の新人バンドのしっとりとしたロックバラードが1位を獲るというのは驚きだったらしい。

それから10年以上経ち、大人になってからアメリカやハワイのショッピングモールを歩いていると、BGMでしばしばこの曲を耳にした。おー〜っ、と声に出そうなのを抑え、買い物をやめて聞き入ったものだ。当時は今のように簡単に音源が手に入る時代ではなかったから、そんな偶然にすら感動ものだった。

たまにお邪魔するAORのバーのマスターに聞いたら、今でも定期的にリクエストが入るという。一発屋ではあるが珠玉の名曲。ここ数年、聴いた瞬間に「これは絶対大ヒットするけど、後世に残る名曲ではないな〜」と思う曲があるが、その真逆と言える存在だ。

そして2曲目は1984年、THE ROMANTICSのデビューアルバムからのスマッシュヒット、"TALKING IN YOUR SLEEP"。この曲はリリース当初から一発屋感満載だったが、予想に違わず彼らはほぼこの曲だけで消えて行ってしまった。

しかしロックでありながら当時流行りのディスコとテクノを見事に融合させたキャッチーでカッコいいナンバーで、個人的に大好きな曲である。
改めてこの曲の入ったアルバムのジャケットを見ると、4人共結構良い顔をしているのだが、なにしろリーゼントに黒の革ジャンといういでたちが全く垢抜けず、結果男子にも女子にもウケないまま終わってしまった。残念なことである。

そして最後は言うまでもなく、1979年THE KNACKのデビューシングル、"MY SHARONA"。これを語らずして一発屋は語れないだろう。当時は日本でも盛り上がり、歌番組に出演したり、来日コンサートも大人気だった。

この曲は今でもCMやバラエティ番組に使われているので、若い方も耳にしたことがあると思う。初期のTHE BEATLESを彷彿させる一度聴いたら忘れないメロディーとシンプルな演奏。不滅の王道であり、何というか「完成した」曲だ。この曲の入ったデビューアルバムには他にも良い曲があったが、この曲のインパクトが強過ぎて、アルバムとして成立していなかった気がする。

そう、一発屋のヒット曲というのはそれほどインパクトが強い。そのため子役で一世風靡した役者さんのように、その曲以降は何となく「過去のスター」的な捉え方をされてしまう。いっとき大ヒットに浮かれた後、アーティストとして思いがけない苦労をしたに違いない。

PLAYERは根強いファンがいて、数年前までライブ活動をしていたらしい。現在はコロナの影響もあってか、不明である。
THE ROMANTICSはデビューアルバムの後、1枚アルバムを出して解散。
THE KNACKはリードヴォーカルのダグ・フィーガーの死により2010年に解散している。

逆にあの大ヒット曲がなかったら彼らのアーティスト人生はどうなっていただろう?もしかしてバンドとして安定した地位を築いていただろうか?いや、彼らのその後の苦しかったであろう道のりを考えてもなお、これらの曲は素晴らし過ぎる。そしてそれと共に沢山の思い出を与えてくれたことにただただ感謝しかない。

やはり一発屋は偉大なのだ。


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