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めくらの獣

爪の先がそれを二つにして
いくつの秘密を見つけたの

赤い夢を見るほど 糸の巣を編めるなら
わるい糖蜜のような月でさえ飼い慣らそう

りんりんと鐘の鳴るほうへ
見慣れた檻の奥で
命の音がきこえた

爪の先がそれを二つにして
おとした鍵は青金石
夜の底で誰がわたしを呼ぶ
「気の毒に。きみも同じでしょう」

刺せども青
まるで 獣ではありませんか

きみの末路に 刺繍を穿つの
九想図にひとつ足すように

芥子の咲く春の四肢 喉に絡む味
立ち並ぶ石塔は まるで摩天楼

りんりんと鐘の鳴るほうへ
見慣れた道の外で
誰かのしたたる音がきこえた

爪の先でそれを二つにして
見つけた秘密は見ないふり
出ておいで

夜の底を覗くきみを誘う
水面に割れる月のように
対の獣がそれを一つにして
続きは内緒のおはなし

また次の夜まで
これにて終演でございます。