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生まれも育ちも悪い②

「ヨーテルちゃんのパパって浮気してるの?うちのママが言ってたんだけど…」

ヨーテルの学年のとあるママさんがサービスエリアで超猫背な父ヨーテルと女性が会っている所を見たそうで、ママさんの中で話が回りに回りヨーテルの所にまできました。

家に帰るとフライパンやお玉を投げる母ヨーテルと机に隠れる父ヨーテルがいました。洗濯物干しには見慣れない黒いティーバックがありました。あとから聞くと母ヨーテルが父ヨーテルのために買ったそうです。

もうこの頃から母ヨーテルは限界でした。

よくわからない高い水を買ったり、背が伸びるという錠剤を子供に飲ませたり、亡くなっても死後の世界があるから大丈夫と言ったり、女性は月だから月の明かりを当たると危ないと言ったり…

癌はどんどん転移してリンパに行き、母ヨーテルはソファから動けません。父ヨーテルは家にいないことが多くなりました。時々顔を合わせると私達に「お前らはどちらにつくのか」という話し合いになります。私達は泣く事しかできません。

母ヨーテルは実家に帰る事になりました。

兄弟3人みんな母ヨーテルとともに行きます。

父ヨーテルは今の住まいに残っていました。

実家に帰るといってもガリガリのボロボロなので母ヨーテルはほぼ入院です。この頃には病室に入っても母ヨーテルは小さな声で少し話す程度でした。

あれだけヨーテルに呪いをかけてヒステリーを起こしてチビでぽっちゃりの母ヨーテルは大人しくて優しいガリガリの女性になっていました。他の人に話すと怒られるから言いませんでしたが、ヨーテルはこの人が誰なのか本当に母なのか分かりませんでした。

母ヨーテルは年の瀬に亡くなりました。母ヨーテルは私の中学生になった姿が見たいと言っていたそうですが、それまで持ちませんでした。病室に行くと祖父ヨーテルと父ヨーテルがいました。父ヨーテルは母ヨーテルの名前を呼んで泣きすがっているような様子でしたが、ヨーテルがいた場所から見た父ヨーテルの口元は笑っていました。

通夜をやってお葬式をやって、お葬式は人がとても来ました。みんな大人はヨーテル達を「かわいそうな子」だと言っていました。母ヨーテルの言うとおりに生きないといけないと思っていたのが、なくなってしまったのでヨーテルはどうやって生きていくのか分かりません。

ヨーテルは父ヨーテルと一緒に暮らすことになりました。半年も離れていなかったはずなのに、家に帰ると慣れないタバコと香水の匂いがしていました。

「俺の話を聞いてくれ。俺も辛いんだよ」

父ヨーテルの話を聞くことになりました。

③に続きます

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