見出し画像

「徴用工の請求権資金が漢江の奇跡につながった」は本当か?

徴用工問題でテンプレのように出てくる話が「徴用工に渡すべき無償3億ドル、有償2億ドルの賠償金を韓国政府はインフラ整備等に使い、それが漢江の奇跡と呼ばれる目覚ましい経済成長に繋がった」と言うものが有る。まさに韓国政府がネコババして、しかも経済成長はすべて日本のお陰という言い方である。本当だろうか?

調べてみると、『韓国の1960~70年代の経済開発と外国資本の役割 (著:ERINA調査研究部客員研究員 李燦雨)』と言う論文がヒットした。内容を整理すると以下のようになる。

①韓国に対する各国の援助の内、請求権資金の割合は小さい
②請求権資金が提供された65〜75年で韓国のGDP成長率に変化は無い
③請求権資金はお金ではなく、日本の財やサービス
④資本財として使われる事により、その後日本の黒字に繋がる

①韓国に対する各国の援助の内、請求権資金の割合は小さい
論文中の韓国に対する各国の援助資金の内訳を表1に示す。主要な援助国は米国であり、日本の請求権資金は限定的である事が分かる。




②請求権資金が提供された65〜75年で韓国のGDP成長率に変化は無い
ここの資料はwikiによったが、この期間だけ成長率(曲線の傾き)が変化しているとは見えない。ただし、本論文では請求権資金が韓国の経済成長に一定の効果が有ったとの結論である。


1966~75年間における韓国の資本財輸入総額のうち、請求権資金による資本財輸入額の割合は3.2%として非常に低い水準である。しかし、請求権資金導入の第1次年度である1966年には28.0%、1967年には10.0%に達するなど、請求権資金は韓国の経済開発が本格化した1960年代後半には大きな役割を果たしたといえる。また、導入された資本財は韓国内では調達が不可能な機械類が大部分を占めた。資本財導入総額3.2億ドルの51.6%が国内生産が出来ない一般機械、17.0%が輸送用機械などであった。これは韓国の経済開発初期においての資本蓄積を安定的に増加させる役割を果たしたといえる。


③請求権資金はお金ではなく、日本の財やサービス
本論文の該当部分を以下に示す。日本政府は賠償する気など無い事が分かる。


一方、請求権資金には次のような使用における制約が付けられた。
購買対象は日本の生産物と日本人のサービスに限るという徹底的な対日購買原則(協定(a)項)。これは請求権資金の供与が、決して金銭によって行われるのではなく、日本の財貨とサービスによって履行されることを意味する。


④資本財として使われる事により、その後日本の黒字に繋がる
結果として日本製の資本財が韓国に導入されることにより、その後も韓国は継続的に日本製の資本財を導入し、今も続く対韓国の日本の黒字が続く事になる。請求権資金によって日本も潤っていると言う事だろう。

一方、請求権資金を始めとする日韓経済協力資金が、金銭によって行われるのではなく、日本の財貨とサービスによって供与されたことは、その後日韓経済関係において日本が資本財輸出国として位置付けられることになり、韓国の日本に対する貿易赤字が続く最大の原因となった。この条件付供与(Tied Loan)は、1960年代後半の日本経済の高成長を支えるための政策金融としての役割も果たした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?