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フリースタイルフットボール沖縄オープンを2019を終えて

こんにちは。横田陽介です。
フリースタイルフットボール沖縄オープン2019を大会実行委員会の副委員長として、企画から制作、運営までを終えてやっと落ち着いてきたので、つらつらと思ったこと、考えていたことを綴っていきたいと思います。

1. 大会開催のきっかけと今後目指していること。

そもそも何故、今までフリースタイルフットボールが盛んとは言えなかった沖縄を舞台にこのプロジェクトが始まったのか疑問に思った人も多いようです。
事の発端は、沖縄県の観光閑散期をスポーツツーリズムで内地や海外からのインバウンド市場を拡大しようという沖縄県スポーツツーリズム戦略推進事業「スポーツイベントモデル事業」に今大会の実行委員長である丸山さんが応募したことがきっかけです。
丸山さんの頑張りもあり、無事に県庁からの承認を得られる運びになり、私とINDYさん、YOSSHIといった今回の運営の核となるメンバーに声掛けして頂きました。

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この話を聞いてまず、私はチェコで毎年行われているスーパーボールという大会を思い浮かべました。チェコの片田舎であるリベレツ(現在はプラハで開催)に毎年、何百人ものフリースタイラーが海外から1週間を過ごしに来ることは、経済効果もかなりのものがあるのではないでしょうか。まさにスポーツツーリズムの成功例だと思いました。

私は、個人的な目標として(実行委員会内でもたびたびシェアしているので、ほぼ共通認識の目標です。)3年目を目処にスーパーボールに並ぶイベントに押し上げたいと思っています。
現在、フリースタイルフットボールの世界の2大イベントはこの毎年チェコで行われるスーパーボールと、レッドブルが主催するRBSSだと思っています。
この二つのイベントの性質には大きな違いがあります。
RBSSは各国で予選を行い国の代表を集め世界一を決める「大会」です。
対してスーパーボールは誰でもエントリーできて、もちろん花形のバトルも開催されるがマニア以外からはほとんど注目されないミニゲーム的なコンテンツまで、約1週間にわたり選手が交流する「お祭り」だと私は思っています。

このスーパーボールにはヨーロッパ中はもとより、世界中から数百人もの参加者がチェコに1週間滞在します。参加者だけでもこの経済効果は素晴らしいでしょう。

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私が沖縄オープンを「できる!」と思ったのはこういった成功例があったからです。
ただ、全てが同じではなく、スーパーボールがフリースタイルフットボールのうちの「競技、スポーツ」の面が強い大会なので、「エンタメ」をテーマにしようと考えました。チェコを始めとしたヨーロッパに「競技性」の土壌があるのと同様に、日本では古くは球舞の時代からエンタメを基調としたフリースタイルが、黎明期から重宝されてきた土壌があり受け入れられ易いことも理由の一つです。ここら辺については次章にて詳しく自分の想いを書きたいと思います。

沖縄オープンはスポーツツーリズムに繋がるイベントということで、今後の発展の仕方として私が目指すところは、「賞金アップ」とか「世界のトップ選手を招待」とか「競技力の向上」よりも、いかに全参加者が沖縄で良い思い出を作るかに重きを置きたいと思っています。
そこで重要になってくるのは大会のルールなどをブラッシュアップして選手の質や競技のレベルをあげることよりも、重きを置くのはホスピタリティの部分になってきます。
例えば、大会前後にオフィシャルでオーガナイズされたJAM(交流会、練習会)があったり、トップ選手による様々なワークショップを企画したり(技だけでなく、INDYさんのフリースタイルフットボールで使える英会話講座とか、YOSSHIのショーケースを作品として魅せる手法とか、私と古株数名でフリースタイルの歴史についてのトークセッションなど座学もどうですか?)、なんなら大会に集まった選手でBBQなんかがあったりもいいなと思ってます。※随時アイディア募集しているので、こんな企画あったらいいなと思ったら気軽に教えてください。

目標としては、次回は海外勢も日本勢も初回の2倍、約100人の参加者を集め、沖縄に着いてから帰るまで「フリースタイルをやっててよかった!」と思わせる事です。


2. 最近の大会を見て思うこと


本筋から大きく逸れて、ここ数年のフリースタイルフットボールのコンペティション(大会)を世界各地で見てきて、選手たちやジャッジたちの意見も色々聞いて、感じてきた違和感をやや雑ではありますが、吐露したいと思います。

大前提として、フリースタイルフットボールはそもそも無限の楽しみ方があるものなのに、一つのシステムに押し込めて「一番のフリースタイラー」を決めることは不可能だと私はこの数年で強く感じています。
無限の楽しみ方というのは、よく界隈で取り沙汰される「ハードコア」やら「クリエイティブ」といった話に限りません。
「その大会での一番」は、「その大会のルールの中での一番」だと思います。

最近の主だった大会後に選手間の会話でも、SNS上でも決まって巻き起こる論争の違和感は、誤解を恐れず大雑把に例えるならばこういう話です。
「世界一足が速い人を決める大会」で、「100メートル走が速い人が世界一になるべきだ」「いやいや、マラソンの方こそ真の世界一」と言い合い続けているような事です。実に馬鹿らしいと感じる反面、選手たちはこの大会に命を燃やして挑んでいるので、いつも選手たちと一緒に熱くなり、時には朝までこの話題です。
私が考える現実的な解決方法は、レギュレーションをもう少し細かく決めること。先ほどの例え話でいうところの、「100メートル走の大会」と「マラソンの大会」を別々でやることだと思いますが、この話はまた今度、機会があれば。

ちなみにRBSSのような「本当の世界一を決める」と謳う大会は、「筋肉番付」のようなもので良いと思うんですよね。
「100メートル走のチャンピオン」と「マラソンのチャンピオン」が、夢の対決!今回はこのルールで戦ってもらいます!勝つのはどっちでしょう?というエンターテイメントです。この共通理解をオーガナイズにも選手にもジャッジにも観客にも、しっかりと落とし込むことができたら理想、というのが最近の私の持論です。

以上、ざっくりと書き過ぎた感もありますが、もっと詳細に話したい人は是非とも私と話しましょう。こういう話、大好きです。
この私の考えを理解した上で(無理に共感しろとは言いません。あくまで理解。)、次章以降を読み進めて頂けるとすんなりと内容が入ってくるかもしれません。

3. 沖縄オープン2019の大会総評


今回の沖縄オープンをまず運営側の視点から振り返ると、細かい反省点はありますが80点くらいは付けて良いかなと思います。準備期間も予算も限られている中でよく頑張ったと思います。
もちろん、選手の皆さん、出演者の皆さん、スポンサーの皆さん、何より丸山さん、INDYさん、YOSSHIを始めとする運営の皆さんが頑張った結果です。ありがとうございました。次回はもっと頑張ります。

そして、ここからはいちフリースタイラーとしての、主にジャッジ観点から見る選手のプレー内容についての総括をさせてもらいます。

まず前提として今大会は過去のフリースタイルフットボールの大会に比べて、「エンターテイメント」が非常に重要になってくる審査システムでした。
まず、ジャッジの5人のうちフリースタイラーはフランスのJordanと日本のYOSSHIの2人だけです。残りはJJ(フリースタイルバスケットボール)、BBOY TAISUKE(ブレイクダンス)、後藤崇介(ビーチサッカー)と、過半数が他ジャンルからのゲストジャッジです。

審査基準の3つのうちに「スキル」とありますが、フリースタイルフットボールが専門ではない彼らには正確に判断することが難しいので、「スキルがある」よりも「スキルがあるように見える」方が大事です。
もちろん、スキルがないとスキルがあるように見せることもできないのですが、この話は長くなるのでこれまた機会があればにしておきます。

他のスポーツの大会で他ジャンルの審査員が招かれるというのは珍しいと思いますが、一方で「芸術」や「エンタメ」の分野ならば往々にして行われている事だと思います。
私の持論ではエンターテイメントにおいては全くわからない人こそが一番わかっていると思っています。
つまり、予備知識が一切ない人の方が見た物や感じた事に対して正直な反応をする、その正直な反応を得ることがエンターテイメントだと思います。

余談ですが、現在のRBSS世界大会のジャッジは5人中4人がトップフリースタイラー、1人が有名サッカー選手。予選では全員がフリースタイラーのジャッジです。
しかし2008年の第一回RBSS世界大会ではフリースタイラージャッジは5人中1人だけでした。懐かしいし、歴史とシーンの変遷を感じますね。

話を戻して、そんなジャッジ勢のもとで行われた今大会、メインの1on1部門を見ていきます。
特筆するのは海外選手・ベテラン選手の躍進の理由とKo-sukeがとったエンタメの手法についてです。

まずは海外選手・ベテラン選手の躍進について。
今回、有名な海外選手たちが多く来てくれましたが、現状でRBSSやスーパーボールのバトル部門で表彰台を狙えるポジションの選手はいませんでした。一か月前のRBSSで各国の代表として出ていた選手はKo-sukeを外せば韓国のTaeheeだけで、Taeheeは決勝トーナメントに上がったこともありません。
大会前のフリースタイラー同士の会話でも、「これだけ海外勢来てるけど、日本人で表彰台独占もありえるかもね」という会話もありました。

しかし、終わってみればTOP4のうちKo-sukeを除く3人は海外勢。
しかも若手の台頭が日本でも世界でも著しいフリースタイルフットボールシーンの中で若、ベテランというべき世代の選手たちの活躍が顕著でした。

日本勢と海外勢の違いとして、やはり海外勢の方がフリースタイルフットボールで生きていきたいという意識が強く、お客さんに見せる機会も多いので、見せる意識において貪欲でした。
若手とベテランの違いは、もちろん場数もありますが、「バトル主流」でバトルの練習がメインの若い世代と違い、現在はバトルがメインだったとしても始めた頃はまだエンタメが主流だった時代に始めていたことは大きいのではないでしょうか。

次に、Ko-sukeがとったエンタメの手法について解説します。
エンタメ重視と聞いて、多くのフリースタイラーは拍手を煽ってとにかく盛り上げたもん勝ち、というイメージをしたかもしれません。
実際にステージで、慣れてなさそうな動作で拍手を煽るフリースタイラーをたくさん見ました。
もちろん堂に入った所作で、パフォーマンスも拍手に値するものだとしたら非常に効果的なやり方です。王道のひとつだと思います。

しかし、今回のKo-sukeは観客を煽るような動作はほぼしませんでした。
私の記憶では、決勝戦で自分の納得いくムーブができたときに多少大げさなガッツポーズが出たくらいです。
大会後、何人かのフリースタイラーから、「エンタメしてないのに優勝しちゃ、エンタメ重視の大会として機能してないんじゃない?」との声が聞こえてきました。

私は断じてそんなことはないと思っています。Ko-sukeのガッツポーズで観客は興奮したでしょう。決勝の相手だったRowdyがお客さんに近寄って味方につけていくスタイルに対して、Ko-sukeはひたすらシリアスに自分のムーブにこだわって、お客さんを自分の世界に引き込んでいく手法をとり、成功したと思っています。
盛り上げるだけじゃなく、引き込んでいくエンタメの手法です。

それについて、大会後に審査員の一人であるTAISUKEとじっくり話す機会がありました。
彼もそこについては同じことを思っていて、多くのフリースタイラーが笑顔を見せ観客にアピールして会場を盛り上げていくことに専念する中、Ko-sukeは真剣な表情でひたすらに自分を自分のムーブで盛り上げることによって観客を引き込んでいたよね。と。
興味深いのは、ブレイクダンスの最高峰、Red Bull BC ONEについても、ブレイクダンスのバトルを使ったエンタメ興行だと言っていました。確かにBC ONEの臨場感やドキドキハラハラとした緊迫感はダンスを知らない人でも引き込まれますよね。

沖縄オープンには出たくない!と言われる未来へ

以上つらつらと書き連ねましたが、この大会をきっかけに多くのフリースタイラーがエンタメとは何なのか、考えを深めるきっかけになってくれていれば嬉しいです。

ただ、最初のほうで書きましたがフリースタイルフットボールの根底にあるのは自由です。
ですので、全てのフリースタイラーにエンタメを強制するつもりは全くありません。
ただ、エンタメに興味があっても発表する機会がない、高める術がない、などといったフリースタイラーに選択肢を与えたかったのが、今大会開催の理由の一つです。

好き嫌いがあっていいと思います。むしろ、なきゃダメだと思います。
世界中に「スーパーボールに来ないなんてフリースタイラーなのにあり得ない!」というフリースタイラーがいる陰で、「スーパーボールは俺の色じゃないから行かない」というフリースタイラーはたくさんいます。
同じように、「沖縄はエンタメ重視だから出ない」と言うフリースタイラーがたくさんいていいと思います。でも、いつか「沖縄に来ないなんてフリースタイラーなのにあり得ない!」と言ってくれる人がたくさん出てくれば、最高だな。と思います。

横田陽介

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