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Like a 矢沢永吉だよ

キャディ株式会社でプロダクトマネージャーをしている白井です。
前に書いた記事では、割とキャディという会社がやろうとしていることについて書いたのですが、今回はそれに対する開発組織の向き合い方について最近思っていることを書いてみようかなと思います。

こういう風にやるといいよね!みたいな感じより、とても戒めを込めて、っていう感じです。また、結構エンジニア目線が含まれたりしていて、僕自身はエンジニアではないので、そういう目線も含んで語ってしまうのは憚られるところもありますが、まあでもそうだよねとは思っているのでそれを前提に書きます。

今までsoftwareにeatされてきた領域

キャディの事業領域は主に金属加工を主にした製造業なんですが、to Bだし、とても専門性が高い領域なので馴染みがないんですよね。業界内でなければ外からはよく分からない。要するにドメイン知識が分厚く複雑です。

で、IT業界・インターネット業界でよく引用される有名な言葉に
Software is eating the world
っていうのがありますが、この20年ちょっとくらいでeatした領域って割とwhy/what/howがわかる人が近い領域だと思うんですよね。(もちろんそれだけが影響した要素ではないと思うんですが。)

どういうことかというと

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Why: なんでそれを作ると嬉しいの?どんな解決したい課題があるの?
What: そのためには何を作ればいいの?
How: それはどんな風にやれば作れるの?
っていうそれぞれに詳しい人が近いということです。

例えば、toCのプロダクトだと、エンジニア(=Howをよく知ってる人)が、自分が一般人のユーザーとして「これあったらいいな、でもこれそういえばこうやったら作れるやん」みたいなことが分かるので、どんどん作っちゃって、世の中変えていってみたいなことが極端な話起きるわけです。

toCでなくても、割とピュアインターネット/ピュアソフトウェアの領域だと、そのドメインエキスパート(whyとかwhatに詳しい人)とエンジニアが近いので、eatingされていくわけですよね。

翻って

翻って、結構最近だとレガシー領域 x Techみたいなトレンドとか、割とDXと言われるものも、バリューチェーンの後ろの方へのソフトウェアの活用みたいなことがコンテキストとしてあると思うんですが、そういう領域ではwhy/what/howに詳しい人って遠いんですよね。

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弊社のエンジニアでも「もともと製造業に携わってて、めちゃくちゃ詳しいんです。製造業のここがこんな風になってて、こういう課題がありますよねー」なんていう人はいないわけです。大体、関係ないバックグラウンド出身です。

で、大前提「そういう距離の遠さみたいなことを滑らかにつなぎましょうっていうのがお前(プロダクトマネージャーの)仕事だろ」って話なんですが、とはいえエンジニアもやっぱりどんどんドメイン知識に詳しくなっていくべきだし、そういう風に学んでいくスタンスの人を採用しています。

これはもちろん実利上、そうなっていった方がより前提知識が揃っていって、質の高いコミュニケーションや要件定義ができて、事業も開発も円滑に進むし、有益だよねっていう都合は多分にあります。

ただし、そうじゃない動機付けもあるもかなりあると思っていて。

やっていることの自己決定感

そういった、会社や事業の視点ではなく、ミクロの個人の視点から見たときに、仕事の満足感に大きく影響するものに自己決定感があります。

自分でやることを自分で考えて、何をやるべきだということを決めてやっている度合いが高いほど、仕事の楽しさは上がります。

また、なんでそれをやるべきか、みたいなことの納得感も、より自分で大上段から考えた方が高いですよね。レンガを積んでいるのか、城を作っているのかみたいな話です。

だから、Howに詳しいエンジニアもドメインに詳しくなってWhyまで侵食していくのが、組織や個人のモチベーションのサステナビリティからも大事です。

よく、受託開発的な文脈だと要件定義ってちょっと契約論的な考え方は強いなと感じることはあります。もちろんそういう方向に寄せていくインセンティブも大きいのはよく理解できます。

でも僕らのようなユーザー企業において、「要件を明確に決めてください。それを私たちはやります。」というスタンスだと、リスクヘッジはされている反面、ある意味で自己決定する権利を徐々に失っていく側面はあるなと。また、自分たちで「判断して決定する」能力自体が衰退していく。

天下り的に、「これを作ってね」みたいなのを粛々と作るって退屈ですよね。

なんでこんなことを考えたかというと

結構前に読んだんですが、この記事を最近思い出したからです。

【矢沢】
一緒なのよ。
だからぼくも、ただ歌うだけじゃダメなの。
歌うためには、いろんなものが必要になる。
それを自分以外の人に全部任せて、
誰かのいいようにされることはイヤだったんだね。
だから、自分の中に全部取り込んでいく。
自分の目で見て、自分で感じられるようにする。
わかるよね?

【糸井】
うん。わかる。

【矢沢】
そういうなかで歌を歌ってるから、
「歌手も、やってる」なのかもしれない、
でもね、ぼくは、こうも思うんだよ。
「歌手も、やってる」って、
矢沢の歌が好きなファンからしたら、
ちょっと待ってよ、と。
「歌手も、やってる」って、それさ、舐めてない? 
と、思う人も少なからず、いると思う。
でもね、違うんだよ。

【糸井】
違う、違う。

【矢沢】
歌をうたうためには、
花だけじゃなく、幹や茎や根の部分もいる。
スタジオも、会社もうまくいってるからこそ、
歌がちゃんとうたえるんだよ。
だからね、ぼくは思うんだけど、
たとえば、サッカー選手でも、
ちゃんとお金や契約のこともやって、
「ぼくの足、いくらで買ってくれますか?」
ってやってる人のほうがいい記録出すと思う。
と、ぼくは信じてるの。わかります?

まあ、ちょっと文脈とか意味が、僕が言ってることと完全には一緒じゃないことはわかってるんですが、でも芯としては似ているなあと。

【矢沢】
そうなの。あの、昨日ね、
ホイットニー・ヒューストンのライブ、
しかもデビューしたばかりのころの
ライブ映像を観てたんだけど、
もう、ほんと、ヤバいんだ。
この世のものとは思えないほどすごい。
やっぱり、世界ナンバーワンのボーカリストですよ。
でもね、彼女、晩年は麻薬で不幸な死を遂げるよね。
これ、いま、なんで急に、
ホイットニーの話するかっていったら、
彼女が歌だけじゃなく、ほかのこともやって、
「歌手も、やってます」っていうことだったら、
あんな死に方しなかったんじゃないかなぁ‥‥。

【糸井】
あぁーー‥‥。

【矢沢】
いや、わかんないよ? 本人じゃないから。
そんな簡単なことじゃないのかもしれない。
でも、ぼくはね、
あのすごい歌を聞いて、悔しかったんだよ。
こんなすごい人が
なんて終わり方したんだ。と思ったんです。
だから、ホイットニーに
「歌手も、やってます」っていう感覚があったらさ。
もっと長く、いい歌をうたえたと思う。


そんなこんなで

技術のことを学んでいくだけでも大変なので、ドメイン知識をこれだけ歴史ある領域で学んでいくのって簡単じゃないんですよね。
でも、これだけ優秀な開発組織を集めておいて、その力は120%に生かしたい。

社会にインパクトを作るには、どうやって集団の力も生かして、Howの部分だけでなくWhyやWhatの部分もその知識や知恵を高めていけるか、そういう仕組みづくりについて最近はとても考えて、トライしています。

「こういうものが欲しいというけれど、もっと真因をたどるとこういうことが課題であって、それを解決するにはこういうものをこういう順番で作って攻略していく方がいいよね。だからそれをやろうと思いますがどうでしょ」ってできた方が楽しいし、絶対にインパクトも大きい。っていうわけです。

ちなみにタイトルはフリースタイルダンジョンの名試合の一つ、ご存知Simon Jap vs 般若のSimon Japのパンチラインですね。

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