コロナ時代のV字戦略

天川洋介と申します。
大阪発の宿泊ベンチャー、株式会社キリンジのCEO/Founderです。

今回の新型コロナウイルス、そしてそれに伴う緊急事態宣言など今まさに各事業者さん生き残りを賭けて必死で動いていると思います。
僕らもそうです。
これまでの主力事業であった大阪市内のインバウンド向け宿泊施設は壊滅状態、今年に入って毎月赤字を積み重ねているような状況です。
そんな中4月からの4期目、僕らなりのV字回復のシナリオイメージが湧いてきたので、少しでもお困りの事業者さんを支援出来ればという気持ちで僕ら思考プロセスをnoteにまとめてみることにしました。

出し惜しみせず、最初に結論を書きます。
【今利益を出すには、今頑張っても赤字にしかならないことに、脳と時間と資金の貴重なリソースを使わないこと】
これに尽きます。
そして、その時間を使って下記に対して考えて考えて考え抜きましょう

①自分たちのコア、強みは何か、機能ベースで既存事業体や人に囚われずに考える
大切なのはこの部分をいかに残すかです。
そこを使ってどうピボットしていくかが勝負です。
逆に言うと、それ以外はバッサリ一度切り捨てるくらいの覚悟が必要です。
弊社の場合は、①宿泊施設のプロデュース力、②集客ノウハウ、③AIなどによる業務の自動化(ローコスト運営)、この3つだけを残しました。
いつ戻るかわからないインバウンド対応能力などは今は強みと考えていません。

②アフターコロナ/ウィズコロナ時代も見据えた上で、自分達のコアがどういう事業にピボットして利益を出せるか
ここでは書きませんが、弊社は完全に主力事業の切り替えを決定しました。
僕のTwitterを追っていてもられえば、完全に振り切って動いてるのはいずれ見て取れると思います。

③そのために必要な時間、資金などのリソースは何か
足りないと思うことも、どうやってやるか考え抜けば知恵が出ます。
弊社は決して資金力のある会社ではありません。
その上で、どうやって必要なリソースを捻出するか考え、すでに活路は見出しています。

④大振りの博打よりも、小さな手数の積み重ねを
背水の陣で一発逆転は、ないと思った方がいいです。
そもそも事業なんてPDCA数回してナンボです。
そうなると圧倒的なスピード感が必要です。
やってみて、当たらなければ当たるまでやり方、やること変え続ける。
出来れば並行して何本も走らせるくらいのスピードでいいと思います。
いつかコロナが収束して、という期待ではなく、「今」利益を出していける形にたどり着かないといけないのです。
ミニマムで動けばテストとしては十分。
可能性あれば思いっきり注力して振り切ればいいです。
貧すれば鈍する、という言葉があることも思い出して下さい。
余裕のあるうちに手数、とにかく手数を打ちましょう。


なにか参考になる部分はあったでしょうか?
上記で十分という方もいると思いますが、下記は上記に至るための最低限の行動です。
一度書いて消そうと思いましたが、まだ動けていない方のために僕らがやってきた動きをパンくずとして残しておきます。
下読んでなるほどってなったら、逆にヤバいです。
もっと加速してください。

①数字を直視する
赤字だ、厳しい、時期が悪い、で思考停止していませんか?
まずは会社の現金、あるいは現金化出来る試算を棚卸しして、最悪のケース(極端に言うと売上がゼロなど)の場合いつ資金ショートするのか冷静に把握しましょう。
多くの場合数ヶ月だと思いますが、おそらくコロナの影響から抜けきるまでには不十分でしょう。
僕らは2年と考えています。
でも、そこで絶望はしないで。
下記で色々やっていくので、後で再計算しましょう。
それが本当の残り時間です。

②まずは借り入れ
僕らの場合、取引のある金融機関から保証協会絡みで調達、公庫も当たって引き出しています。
さらにまだいくつか動いていますが、ここがうまく行けば大幅に延命期間がもらえると思います。
ただし、これを全部延命に使うのはもちろんNG。
キャッシュフローの収支を浮き上がらせることができる事業へのピボット、その投資に回せるかが勝負です。

③不採算事業から撤退する
僕らの場合は主力事業であった大阪の宿泊施設を大幅に手放しました。
サンクコストは一切考えないこと。
あわよくば譲渡なども考えないこと。
そんなことをしている間に与えられた残り時間はどんどん減っていきます。
単一事業の方でも、停滞時期の累積赤字額を計算して再調達コストと比較すれば、一旦手放すことも視野に入れて下さい。
いくら思い入れある事業でも、いくら今まで投資していようと、心中したくなければ計算に基づいて動くべきです。
そして、僕の場合はこれが一番大きなメリットだったのですが、
【自分の脳と身体が空く】
これはWebミーティング時代に移行したことも相まって、かなり効果ありました。

④固定費を徹底的にコストダウンする
月次で出費が出ている全ての経費項目を洗い出し、細かいものも粛々とカットしていきます。
数ヶ月前と状況が変わっています。
今、そしてこれから数ヶ月のスパンで考えて必要なければカット。
必要になれば再契約するなりも可能です。
特にここでは賃料の圧縮が大きな効果を生むと思います。
家主への交渉でいくら下がったり、あるいはリモートワークに切り替えて事務所経費を圧縮したり、店舗を閉鎖したり。
ここも冷静に再調達コストと比較。
諦めも肝心。

⑤業務の再設計
売上が落ちている以上、スタッフの手も空きがちになっていると思います。
今の全体業務に沿って業務を再設計してみましょう。
業種にもよりますが、おそらく今より少ない人数で回るよう設計しなおせると思います。
今は必要ないと判断したスタッフについては、厳しい局面を乗り切って再度同等クラスのスタッフを雇用することが難しいかどうかで判断するのが、損得で言えば妥当です。
損得だけでなく感情面ももちろんあると思いますが、最後給料払えなくなってしまうくらいならその方がいいです。
他者に推薦してあげることも含めて、
業務量に沿う形で休んでもらって雇用調整助成金を使って雇用を維持する方法もありますので、制度についてしっかり調べましょう。
ここも支出を売上になるべく沿わせましょう。

⑥ポイントオブノーリターンを設定する
ここでは最悪のシミュレーションも一度しておきましょう。
僕もここを通って、腹が決まった覚えがあります。

コロナと同じで、そうなったらどうなるのかわからないから闇雲に怖いという人間の心理もとても大きいと思います。
ピボットするための必要資金を割り込んで、どうあがいても黒字転換が不可能になり、後は資金がなくなってショートするのを待つのみ。
まずはそうなってしまう時期を明確にしておきましょう。
そこまでに勝負しないといけないということを強く自分自身に刻んで、とにかく考える、とにかく動く。
不幸なことにその時が来たら、もうどうにもならないのです。
事業がバイアウト出来れば一番ハッピーですが、多くの場合は難しいと思います。
可能性のある業種であればもう少し線引きを早めに考える方が良いかもしれません。
最低限、スタッフの給料は確保しておきましょうね。

ポイントオブノーリターンを割り込んで残された時間は、バンザイした後自分やスタッフがどう身を振ることが出来るか考える時間に使った方が健全です。
幸い日本の法律では命は取られません。
ポジティブに覚悟を決めましょう。
最後まで戦ったあなたなら、次の職場への道は残っていると思います。
本当に困ったら僕も相談に乗ります。
僕らが有言実行、V字で回復出来た暁には、ですが。


最後に。
近い未来は全く見通せない時代ですが、少し先に大きく動いていく方向はしっかり考えれば見えてくると思います。
やることやって見えてくることもあります。
希望は脳と身体を動かしてくれます。
とにかく、ポジティブに乗り切りましょう!
少しだけでも気持ちだけでも、あなたの応援になれば幸いです。

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