ぼんやり見つめる回転盆の人

車のデザインを生業にして31年目。未だに会社では最前線の兵士?なので、少なからず美しいものを見極める目は持っていると自負している。
タメとヌケを描く放物線の美しいカーブ。光と影を計算したサーフェス。心の琴線に触れる様な、魅せられ惹かれる造形とはどんなものなのか?いつまでも見ていたくなる形。思わず触りたくなる形。言葉を尽くしても表現しきれない奥の深い世界。そんな、答えがあるのか無いのか分からない世界が、やけに魅力的に思えた。だからこの仕事、続けられているのかも知れない。

流行り廃りはある。しかし1+1が2みたいに、確実な答えは無い。昨日まで良かったものが、今日は古くなっている事もある。そんな移り変わりのあるデザインの世界だけれど、絶対的な美しさというものはあると思っている。誰に聞いても、誰に見せても、どんな時代でも、みんなが美しいと思うもの。ただし、1+1が2みたいな説明は難しい。どうして美しいのかは…複雑過ぎる。

まさご座の盆が回るようになった。
僕はぼんやりとその場所を見つめている。
その中心に、美しい人が居た。
彼女の表情がそう見せるのか、彼女の動きがそう見せるのか、経験値がそう見せるのか、分からない。ただ彼女が美しいという事実だけはそこにあった。

やはり何度見ても、何故惹かれるのか、何故美しいと感じるのかを、理解し説明するのは難しい。ただ、そんなことはどうでもいいじゃないと、ぼんやり見つめる盆の上の人は言っているようにも見えた。

盆の中心に居た踊り子の名は、牧瀬茜さん。

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