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映画「エンパイア・オブ・ライト」の押し寄せる詩情に打ちのめされて

今この記事を大晦日のバンコクで書いているのですが、日本を出る前日にサム・メンデス監督の最新作「エンパイア・オブ・ライト」を観て、ローリング・ストーンズとピーター・ガブリエルの新作をレコードで聴きました。
これが、今年を締めくくる最高のチョイスとなりました。日本を出る当日まで本業の仕事に追い詰められ、神経が参っていたので、本当に救われました。

どんな映画か、できるだけネタバレせずに言うと、1980年代初頭、サッチャー政権下で人種排斥運動が吹き荒れています。そんな状況で、大学進学を諦めかけていた黒人青年と、心を病んでいる中年女性が映画館の従業員として出会い、恋に落ちます。その設定だけでも結構面白いのですが、簡単なハッピーエンドでは終わらないのですよね、これが。
人間はいくつになっても、何があっても、イチからやり直せる。やはりこれに尽きるのではないでしょうか。

あまりにも深い終わり方と詩情に打ちのめされ、最近大作に引っ張りダコなトレント・レズナー&アッティカ・ロスのスコアが流れる中、しばらく立ち上がることができませんでした・・なんという詩情なんだ、これは。

監督は1999年の「アメリカン・ビューティ」で一躍有名になったサム・メンデス。彼のオリジナル脚本のようなのですが、意外なことにオスカーレースでは無視されてしまったんですよね。自分も、それが理由で劇場公開をスルーしましたし、軽視してしまったのですが、危うく年間ベスト級の傑作を見逃すところでした。wikiで調べても評論家ウケが良くありません。これはどうしてか考えると複雑で、白人と黒人の融和がテーマの映画って意外と嫌われるパターンが多いんですよね。正論を突きつけられる白々しさがそうさせるのかもしれません。これは90年代のオスカー作品「クラッシュ」や2018年のオスカー作品「グリーンブック」のときも同様で、一定数の評論家に嫌われてました。アカデミー賞は基本リベラルなのに、どうしてなのか、イマイチ自分には理解できません。

本作に戻ると、サム・メンデス監督は「アメリカン・ビューティ」以降、本作と同様の人情味溢れる映画を数本撮った後、2010年代になんと007シリーズに進出しています。おかげで007シリーズは救われたし、監督も大金を手にしたと思うのですが、その資金を元手にこの人情路線に回帰してるのだとしたら納得です。監督としてのキャリアを考えるとブレブレになってしまったと思うのですが。

また、中年女性を演じる主演オリビア・コールマンはどんな映画でも外しませんね。出る映画全てが最高です。

今日の大晦日、紅白歌合戦を観るヒマがあったらこれを観て癒されてください。ディズニープラスで見放題です。ディズニーは一応マーベル映画やスターウォーズ関連作を観るために加入したりヤメたりしてます。
子供向けから大人向けまでラインナップしてて、経営陣はわかってますね。株価は低迷してますが・・笑



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