ペット・ショップ・ボーイズ「Nonetheless」のクセになるポップと叙情性の帰還
こんにちは。お盆休みに久々に落ち着いて今年出た新譜を聞くことができたのですが、今日は、そのうちの一枚、ペット・ショップ・ボーイズ(以下PSB)の「Nonetheless」について書いてみたいと思います。
結論から言うと、今回のPSBの新譜はポップとセンチメンタルな繊細さがクセになる作風が復活しており、久々に繰り返し聴いています。
繰り返し聴ける点では2013年の「Electric」以来、久々。アルバム全体の完成度としては、なんと、1999年に遡って「Nightlife」以来の感触を得ています。
前々作の「Super」や前作の2021年作「Hotspot」が個人的には全く引っ掛からず、とうとうPSBもダメかなと思ってただけに、嬉しい復活作となりました。
アルバムは、1曲目のファーストシングルになった「Loneliness」から2曲目の「Feel」の繊細なオーケストラル・エレクトロポップの「揺らぎ」が最高で、この時点ですでにアルバムのハイライトになっています。
この2曲でツカミはオッケー。筆者がPSB最高傑作と疑わない1990年の「Behaviour」の再来か?!という期待が膨らみます。
その後は聞き覚えのあるPSB節が続くのですが、繰り返し聞いていくうちになんとも気持ちよくなっていくが不思議です。
例えば4曲目の「New London Boy」は、ロンドンに出てきた若者のアイデンティティを問うような曲です。
「みんなロキシー(ミュージック)や(デビッド)ボウイで踊っている」「スキンヘッドがオカマと呼んで、からかってくる」などの歌詞があり、ニール・テナントの個人的な生い立ちに基づいていると思われます。
曲調的には「West End Girls」のようなラップが途中に入ってきて、往年のファンならニヤッとしてしまう名曲になっています。
5曲目「Dancing Star」には「It's a Sin」で使われていたシンセの音色が使われていて、古株ファンのノスタルジアを誘います。
6曲目の「A New Bohemia」も何度も聴いていると「Being Boring」のような歌詞世界であることが分かり、だんだん体に染み込んできます。
7曲目「The Schlager hit parade」はショッピング・モールで流れてそうなクリスマスソングですね。
「It Doesn't Often Snow at Christmas」を彷彿とさせる曲です。考えたら「クリスマスにはあまり雪は降らない」って、なんて皮肉なPSBらしいタイトルなんでしょう・・笑
8曲目「The Secret of Happiness」はバート・バカラック風味のメロウなオーケストラル・ポップで、「Bilingual」期を思い出します。
考えたら90年代のPSBはアルバムごとにサウンドのコンセプトがあって、アルバムごとの違いが際立っていたんですよね。最近はそのような実験的なコンセプトはやめてしまったように思います。
9曲目「Bullet for Narcissus」は耳に残るダンスポップ。
ラストの物悲しい「Love is a Law」は、残念ながらアルバムのクロージングとしては弱いトラックになりました。
ということで、個人的には手放しで傑作とまでは呼べないのですが、久々にリピートして聞ける新作に喜んでいます。
また、彼らはストリーミング上でシングルを連発しているのですが、収録されているアルバム未収録曲やリミックスが、どれも素晴らしい。
筆者は現物をUKのサイトから取り寄せようかと思っています。
ニール・テナントも70歳を迎えたということで、いつまで作品を発表し、ツアーをしてくれるか、不安がつきまとう年齢に達しています。
ここ数作のアルバムはあまり楽しめなかったものの、2013年のElectric発表前後のサマソニのステージは非常に素晴らしいものでした。
もう一度だけ彼らのステージを、できるだけ大きなステージで観てみたいと思っています。
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