不思議系映画の元祖ジャン・コクトー「オルフェ」(1950)とデビッド・リンチ
映画の黎明期から現在まで、観てない傑作を観ていくライフワークを自らに課して、10年以上が経過しました。
先日やっと40年代の2周目を終えたので、今週から50年代の3周目に突入しています。
有名な本作「オルフェ」を今まで観ていなかった理由は、アカデミー賞とは無縁、かつ、10年に一度クラシック映画のベスト作品を選出しているイギリスのSight&Sound誌の上位になぜかランクインしてないからですね。
一方で、キネマ旬報の1951年のランクでは4位に入っていて、お目が高いなと思います。
前置きが長くなりましたが、「オルフェ」を観終わった今、本作は「不思議系」映画の源流となっている必見作と確信しています。
この映画、冒頭から謎掛けが始まっていて一言で言って「変」なんです。
ある有名な詩人がおパリのカフェでお茶してるんですが、目の前でケンカが起こり、その結果、当事者の男が車に轢かれます。
でも、轢かれた男の同行者は、特に焦る様子もなく遺体を車に乗せ、詩人に同行を求めます。
詩人はお屋敷に連れて行かれるのですが、そこで死んだ男の同行者は、男の遺体とともに鏡の中に入っていき、詩人は気を失います。
そこから話がどんどん変な方向へ行くのですが、要は、この映画が扱ってるテーマは「生と死の境界線」で、登場人物は生の世界と死の世界を行ったり来たりするのです。
特に教訓が得られるような映画ではないのですが、生の世界と死の世界を行き来するファンタジーというのは、この時代にしてはとても画期的で、オリジナルな発想だったと思います。
登場人物が鏡の中に入っていくシーンで思い出したのがデビッド・リンチの「ツイン・ピークス」。
「ツイン・ピークス」でも鏡のシーンが印象的で、タイルの模様も一緒です。
「インランド・エンパイア」は生と死の世界が判然としないまま話が進んでいき、高揚感を煽る音楽でエンディングを迎えるところも「オルフェ」に似ています。
「ツイン・ピークス」の登場人物ローラが1944年の映画「ローラ殺人事件」からの引用であるように、デビッド・リンチは40年代〜50年代の映画からインスピレーションを得ていると思われます。
本作「オルフェ」もそのうちの一本のような気がしています。
もう一つ、サブカルネタとしては、The Smithsの、かの有名なThis Charming Manのシングルジャケットが「オルフェ」ですね。
曲も最高なのでリンクからぜひご一聴を。
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