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行列計算を使わない線形代数

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2022年4月の記事一覧

行列計算を使わない線形代数 #8 〜 線形写像(その3) 線形写像の共役

■定義8.1 $${V}$$を有限次元のベクトル空間とし、$${X}$$を$${V}$$の部分空間であるとする。このとき、$${X}$$の直行空間(annihilator)$${X^\perp}$$を $$ X^\perp := \{ f \in V^* \,\,|\,\, f(x)=0, \,\, \forall x \in X \} $$ で定義する。$${X^\perp}$$は$${V^*}$$の部分空間になる。 ■命題8.2 定義8.1の仮定のもとで、$${

行列計算を使わない線形代数 #9 〜 おまけ:質点系の数理

物理学、とくに古典力学における質点系を考えます。質点とは、体積は持たないが質量は持つという仮想的な力学的な対象をいいます。実際の物体は体積(大きさ・広がり)を持つため、その形状が変化したり、形状が変化しなくてもその物体自体が自転します。そのため、形状の変化や回転も考慮に入れる必要があるのですが、質点系ではそれらを無視して、質点自体の運動のみを考えることができます。 さて、質点系では一般に質点は複数であると仮定します。いま、質点の数を$${N}$$とし、その質点に$${1}$

行列計算を使わない線形代数 #10 〜 線形写像(その3) 固有値・固有空間・最小多項式

■定義10.1 ベクトル空間$${V}$$上の線形写像$${A:V\to V}$$に対して、部分空間$${W}$$が$${A(W)\subset W}$$を満たすとき、$${W}$$を$${A}$$の不変部分空間であるという。 ■命題10.2 $${A:V\to V}$$を$${n}$$次元ベクトル空間$${V}$$上の線形写像とし、$${W}$$を$${A}$$の$${r}$$次元の不変部分空間であるとする。このとき、$${V}$$の基底$${\{e_1,\cdots

行列計算を使わない線形代数 #11 〜 おまけ:線形常微分方程式の解(行列の指数関数とLie群の視点から)

$${n}$$次元ユークリッド空間$${\mathbb{R}^n}$$上の微分方程式 $$ \displaystyle \frac{d\bm{x}}{dt} = A(t) \bm{x}, \quad \bm{x}(0)=\bm{x}_0, \quad \quad \quad (1) $$ を考えます。ここで、$${A(t) \in \mathbb{R}^{n\times n},t\in\mathbb{R}, }$$は$${n}$$次正方行列の1径数族(one-param

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