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アマチュア演芸No.1決定戦 『ブンブンチャンプ2021決勝』講評

6/27に行われたアマチュア演芸No.1決定戦 『ブンブンチャンプ2021決勝』決勝の講評となります。

当ライブor配信をご覧いただいた方のみ伝わる内容となっておりますのでご了承ください。
見たいよ!の方はこちらから。ギリギリ7/11 23:59まで視聴可能です。
https://twitcasting.tv/butaisode_katoh/shopcart/72449

ただただオススメするので見て欲しい。ギリギリになったのは申し訳ないんですけど。

審査員という立場でこのブンブンチャンプ参加させていただき強く思いました。

私にとっての「お笑い」という存在は
なにより胸を踊され、なにより様々な感情を揺すぶられ、なにより求めても求めても果ての見えない
ただ一つのマジ最高の文化ってことでした。だーいすき!


…じゃあ講評いきますね。


はじめに


今回の審査、一番重きを置いたのは「我を通す」でした。

この、伝統的な、ネタが終わる度に点数を出す形の審査員を務めるのは作家人生では初めてのことで
直前までどういうスタンスで臨めばいいのかとふらふら悩んでおりました。

そして当日、他の審査員方に挨拶し審査員席に座った時にバチッと決まりました。

我を通して私は私の審査をしなければ5人いる意味がない。

笑いの量で決まるなら耳鼻科お墨付きの聴力自慢が一名ないし機械が一台でええのやから。

結果、他の審査員方と違う傾向となった組がいくつかありましたが、
これはこれで惑わされず私なりの理屈と根拠をもって採点できた結果だと思ってます。

理屈と根拠があってあの審査コメントかよ! はマジでそう!!!ちゃんとすごい反省してます!!!
次回ご依頼いただけるなら絶対ダイエットなぞせずにコメント力修行して挑みます。

審査コメントで全然伝えられなかったことを中心に採点基準となったポイントなど。

一本目

グリエルシャーベット 

88点

フリ、ベストファーザーの服装・しゃべり方・顔つき。
あの面白い設定を伝えるまでの道筋が完璧でしたね。

予選と同じネタだったのですが、2回目の方がより細かいところに気づいて笑ってしまえるこだわりの多さ。

24の項目インパクトは最高だけど他のコメントにもあったように気が散ってしまうので
触り終えたら片付けて良かったかも。

あとから讃岐さんに教えてもらったのですが、項目自体もあの人物の表のオマージュらしく
検索してみたら確かにこんな項目あったあった!と二度も三度も美味しかったです笑

エピソードが周りや自分・夫婦のことだけだったので我が子との関わりが出ればもっと厚みが出たんじゃないか。(by一児の母)

「1つの質問で喋りすぎ」のツッコミ、とても笑ったのですが
それまでと比べてあまりにも鋭すぎてキャラとしても流れを見ても浮いていたのが気になった。

いくつかのツッコミをまとめてボルテージ高めた最後に放つなど、
そのツッコミが活きるためのルートを作ってあげてるとより盛り上がったか。

基準点として85点にしようかと思っていたけれど、この出来に対しては低すぎる気がしたので加点。


じゃがいもタルト

86点

審査コメントで悪い言い方をしてしまったのですが

序盤に無駄かと思った間が後半見え方が変わって驚かされた、
=良い意味で裏切られた、というニュアンスで褒めようとした結果
とても変な感じになってしまって申し訳なかったです。。

絵本を考えてきた、という題材で文章を読み上げる漫才はよくあるけれど
加えて描かれている絵を表現し、絵本という枠組みを活かしたギミックがふんだんに使われていて
漫才が進むと同時に絵本のページをめくる時のワクワクみたいな感情も湧いてきてとても楽しかった。

ただ角度で見える絵が違う、飛び出すなど使った後に見開きは弱く感じるので
順番のバランスが難しさを感じるネタ。

これはわたしの知識不足によるものですが藤岡藤巻のことを全く知りませんでした。。
なんとなく流れでそういう人なんだと飲み込んだけれど、
そもそも大橋のぞみちゃんのソロだと思ってたので全く絵が描けず終い。

こういう時に思い出す
「いやそれ●●が●●した時の●●な奴!誰が覚えてんねん!」
などの、どんな人でも包み込む補完ツッコミの温かさ。

新たな形の漫才を描ききった表現力や掛け合いの巧みさは圧巻。

勢いを保ち続けていたら一組目を超えるかと思っていたのですが
わたしの知識があったとしても、やはり間延びや尻つぼみ感は感じずにはいられなかった。

基準の一組目より印象は劣ってしまい形の採点をしました。

フルスイングバンド

92点

導入が抜群に良い。
限られた時間でのコントにおいて
二人のキャラをいかに登場で印象的に見せるかはとても重要なんですが、もうお手本のような緩急。

職業柄、ネタ中に不足している情報も補完しながら見る癖があるので
ハクションさんに言われて設定の伝わりづらさに気づいた。

ご本人にも伝えたのですが「前の人が落札される→この外道共!」ではなく
「前の人が落札される→「次はこの女だ」的なナレーション→この外道共!」
という流れだとスッと入れそうだと思いました。
多くても追加時間は3秒。3秒分追加するだけで理解度が全然変わるはず。

改めて見てみると悪く言うくだりで彼女に対してさすがに酷すぎるので笑
「お前の為に心を鬼にして言うてるんやぞ」みたいなのを表情なり仕草なりでも見せると飲み込みやすい。

心を鬼にして言ってたはずが言うにつれて当初の目的を見失って度を超えてくる、
みたいな流れにも作れてさらに厚みが増してくるはず。

ドラゴンのシャツが偶然だったのは驚きました笑
あれが私服なのが今になっても面白い。


Xe

94点

審査を忘れて腹抱えて笑いました。こんなん笑いますやん!!

こういったライブを見たことあるお客さんにとっても当然面白いと思うのですが、
我々審査員はこのMCをする側だったり、袖でMCに指示を出す側なのでどれだけリアルに演じてるか凄く分かってしまうんですよ。

袖への目線の送り方、台本うろ覚えだからとりあえず喋りで間埋めて今の台本どこか探してる感じ、
ただ盛り上がってる感じ出せれば良いだけのループBGM、細かい一つ一つが全部見たことあるそれ。

かつ政治との絡め方も抜群に上手い。
お決まりの文言が政治批判みたいになってるのも最高。

リアルすぎるこそギャグやグランド花月という言葉に引っかかってしまった。
国会という舞台設定は徹底して欲しく少し減点。


橋本インフィニティ直也

82点

こちらは本当にコメントのままなんですが
平井堅の親戚エピソードにしては薄かったので(予選の方が興味そそるものが多かった)
もう少し欲しいぞ、と思っているところで方向転換して肩透かしを食らってしまった。

方向転換の先も、男の子同士って普通苗字で呼び合ってないか?とか
家族以外は大抵サザエさんのことサザエさんて呼んでるよな???
となってまいまして入り込めなかった。
偏見にはそれなりの言葉の重みや理屈が伴わないと飲み込みづらい。
その上、平井堅の親戚という武器があまりに強くそれに並ぶ題材でないと引っ張り続けるのは難しそう。

親近感の湧く橋本さん自身の雰囲気はとても良い。
ただマイクの前に立っているだけでなんかこちらも前のめりになる。
決勝に選出されたのも自然と納得してしまう。
どんな題材でもこの人にしかできない漫談になる手法が見つかれば無双しそう。

どくさいスイッチ企画 

87点

人物のディテールの仕上げ方が完璧という他ない。
この人がこのシチュエーションにいるから言える言葉だけを放っている。
ホテルのロビーの広さ、人々のざわめきまではっきり見える。

大好きな系統のコントですが、1対大勢という設定にしてはこじんまりとした印象を受けてしまった。

設定を大事に描くからこそ、逸脱するような急な展開が起こりづらいジレンマ。
探偵という設定で描かなければならないことを描ききっての4分ではあるので
もっと長いともっと様々なやりとりを描けるんだろうなぁ。

期待値を上げすぎた結果、低い点数になってしまった。
ほぼ同じ設定で小森園ひろしさんの満員の東京ドームが舞台のコントがあって
そのインパクトがちらついてしまった。
もう少し点数高くしても良かったんじゃないかと、採点に関しては唯一反省点。

良いコントって登場人物の背景も勝手に想像膨らんじゃうので
助手のいない探偵人生に思いを馳せながら見てました。


鉄腕打線

78点

同じボケを繰り返す漫才・コントって有名なものもいくつかあるんですけど、
それらがなぜ面白いかを紐解くと、ボケあるいはツッコミが毎回アプローチを変えてるんですよね。

例えば千鳥さんなら、大悟さんが「次はこうしてみぃ」とノブさんにやり方を説くし、
ジャルジャルさんならツッコむ方がとにかく打開策を求めて色んな方法を試してみる。

そして観客は同じボケがくることを頭の隅で分かりながらも
「もしかしたらこのやり方なら何かが変わるんじゃないか…?」と期待し
実は求めていた裏切りが気持ち良くて笑ってしまう。
実は裏でツッコミが代弁者として観客が全員そういう気持ちになるように上手く誘導していていたり。

今回の場合は、多少言い方は変えていても二人とも同じことしか言ってないので
何度やっても期待も裏切りも感じにくい構造でした。
二人とも表現力が素晴らしいので引き込まれそうになるけれど
中身があまりにも伴わなかったのでより残念さを感じてしまった。
既存のシステムを使うなら相当な分析が欲しいところ。

オルモス

84点

わたしが面白みを感じる要素の一つに「行動原理」があるのですが、
どくさいスイッチ企画さんのコントがとても分かりやすく良い例で
言葉の一つ一つにその人なりの理由なり性質が伴ってるものが好きなのです。

じゃあシュールレアリズムはだめじゃーん!ではなくて、
シュールで面白いコントって、シュールな思考・行動をする登場人物なりの筋を感じません?

この場合、ボケの言うこと、動きには延々と脈絡がなく、
ツッコミもボケの言うことを理解できないみたいなスタンスでありながら
言われてないことまでボケと全く同じ動きをしてしまう。
ツッコミの方が変な人になってしまっている。

小川があるからってなんで往復するんだろう?飛び越えるほどの幅でもないのに?
小川の前でダンスしようとは聞いたけど渡る時と渡ったあとにダンスするルールは聞いてないぞ!
ツッコミ側も聞いてないのにどうなってんねや!

みたいなことを処理しきれないうちに漫才が全然入ってこなくなる。
漫才なのにこの人たちだけにしか理解されてないルールがあまりに多い。

最後の形にもっていきたい漫才だ、というのは伝わったし
それまでのフリが丁寧にできればとても良くなりそうと思ったので点数は少し高めになりました。

ガーベラガーデン

93点

圧巻。M-1決勝に立つ姿が見える完成度。
プロでも難しい、初見のお客さんにも自分のキャラクターを理解させて笑わせる、が完璧にできている。
立場を活かす設定、演技力、構成、パワーワードの多さ、それを出すタイミング。
どこを取っても最高なので最高としか言えない。
テンポ抜群の掛け合いに慣れてきた最高のタイミングで力関係が入れ替わってゾクゾクしました。
こちらのフラストレーションもカタルシスも全て手の上で操られている快感。

しかもこの漫才、アマチュアだからこそできるんですよね。
芸人が想像で描くコント漫才では及ばない研鑽された言葉の重み。
知らない世界のはずなのに全部映像が浮かぶんです。
ブンブンチャンプという大会のある意味頂点であるような漫才でした。

Xeさんより自分の笑いの量を比べて一つ落ちたので点数もそうなりました。


イーストシティ

76点

周りの評価は高いんじゃないかなと思いつつ、
我を通すという意味で正直に思った点数に。

こちらも同じく行動原理が見えない、が理由の一つでもあり、
審査コメントの際は上手い言葉が見つからなかったのですが
自分がモヤモヤとした点を冷静に考えてみると「なんでもっと逸脱せぇへんねん」でした。

変なこと言うてるやつのようでモンゴルという狭いジャンルに縛られている。
チンギス→チンギス・ハンは当然想像がつくのでそこを裏切ってくれることを期待していたけれど、そうではなかった。

こちらが「はいはいモンゴルでしょ」となってきた頃に
全く違う武器をぶん回されたら最高に笑ってもうたと思う。
一生懸命頑張って変なことをしようとしている感じで飲み込みづらさを感じました。

予選で共に同じネタを見ていた讃岐さんの繰りに繰ったであろうコメントが最高でした。


最終決戦
ガーベラガーデン

二本目の難しさを一番感じさせられた組。
あいかわらずの台本力なんですが一本目の迫力を浴びた直後なので
スローテンポ、ボケツッコミほぼ固定という形によりボケ数が少なくなる。単純にボケの面白さ×ボケの数を総合力とするなら
確実に物足りなく感じてしまうのでそれを補うほどの何かが欲しかった。
オチレベルの深いパンチももっと欲しかったですね。


Xe

さっきあんなに裏笑いやってた人がこんな革新ぶつけてくるなんて…。
新しいお笑いの形見せられて感激やら悔しいやらでグチャグチャになりますよね。

リハーサルで少し音声が漏れ聞こえてきた時に
「このネタは絶対面白いぞ!」と審査員みんなで耳を塞いでいたのですが
そのハードルをあっさり超えられてしまいました。鳥肌。

仕組みが分かった後、想像したその先をあっさり乗り越えていく。
その先も、その先も。見たことないお笑いの扉がまだまだあるんだなぁ。


どくさいスイッチ企画

いわゆるご都合主義というか、面白くするためにむりやり展開を起こすことをせず
セリフ全てがこの医者自身の言葉であり、セリフ全てが面白い。
一本目と同じ感想ではありますが、対大勢より対個の方がより響く。

あまりに言葉の説得力が強くてメモに内容ではなく「そらそう」って書いてました。ホンマに。
別の引き出しを見せてきた他二組と違ってストロングスタイルでの二本。
R-1にうっすらですが関わり続けてた私にとって胸が熱くなる時間でした。


最終投票

どくさいスイッチ企画さんのfunnyかXeさんのinteresting、
別軸の面白さを比べてどちらにするか頭抱えて悩みました。

かなり葛藤した結果、Xeさんに投票したい気持ちの中に、
おそらくほぼ全員どくさいスイッチ企画さんに投票するだろう、この出来で3位はどうなのか、私の一票で2位になるんじゃない?
みたいな審査とはまた別の感情の混ざりを感じたので、どくさいスイッチ企画さんに決めました。
点数制とはまた違う苦しい審査。

昨年のリモートよりさらに自分のお笑い観と向き合えた素晴らしい大会でした。
審査員紹介文に中山の紹介挟まる隙間ないぐらい経歴こさえてコメント力も鍛えるから来年も呼ばれたい!

ぜひ見て欲しい!もう時間がないんだ!

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