パセリ病

妻が舞台真ん中で上手をみて笑顔で立っている。手を腰の前で組み、にこにこしている。
上手から夫がやってくる。
夫「ただいまー」
妻、笑顔でうなずく。
夫、笑顔で返す。
夫「今日の夕飯は?」
妻「パセリ」
夫、怪訝な表情。妻、驚愕の表情。
少し間を空ける。
夫「……お風呂は」
妻「パセリ」
夫、怪訝な表情を深める。妻、驚愕の表情で口を押さえる。妻、口を抑えつつも、勝手に口が動きだす。
「パセリパセリパセリパセリパセリパセリパセリパセリパセリパセリパセリパセリパセリ……」
夫、目を見開き恐怖の表情。

(効果音)(低音)どぅーーーーん

暗転。

場面転換。夫と医者が舞台で椅子に座っている。
医者「パセリ病ですね」
夫「やっぱり」
医者、怪訝な表情。
医者「……ご存知で?」
夫「ええ、まぁ」
夫、ふてぶてしい態度。
医者「最近、奥様におかしなところはなかったですか?」
夫「そういえば……」
医者、前のめりになって聞く。
夫「妻は言葉を間違って覚えることが多くて、パワハラ、のことをパワフルなセクハラだと思ってる節があるんですよ」
医者、怪訝な表情。
夫「うちの職場の上司にパワハラされてるって話したときのリアクションがおかしかったんですよ。え?上司は女?って聞いてくるんですよ。なんで今それ聞くん?って思いながらも、いや、男だけどって答えたんですよ。そしたら今はジェンダーレスの時代や。LGBTや。って言ってなんか興奮してましてね」
医者、うなずく。
夫「僕に、どんなことされたか事細かに聞いてくるんですけど、ものすごい怒鳴ってくるとか細かいことにうるさいとか答えたらね、キョトンとしてるんですよ。つまらなそうに」
医者、深くうなずく。
夫「おかしくないですか?」
医者「おかしいですね。なんというか……全体的に」
医者「でも、そういうのではないです」
医者「パセリ病は珍しい病気でね。めったにかかるもんじゃない。」
夫、医者が喋っている間にズボンからパセリを取り出す。
医者「罹患するからには特殊な状況が生まれているはず……」
夫、医者の口にパセリをつっこむ。
医者、驚愕の表情。
医者、立ち上がる。
医者「パセリパセリパセリパセリパセリパセリパセリ……」リピート
夫、満足そうにニッコリ笑って立ち上がる。
夫「パセリパセリパセリパセリパセリパセリパセリパセリパセリ……」リピート
妻が上手からやってくる。
妻「パセリパセリパセリパセリパセリパセリパセリパセリ……」リピート


暗転




最後まで読んでくれてありがとー