愛情は傘の大きさ


<○:編集点、1秒間以上間を空ける>

私 :雨が降ると、私は憂鬱だ。
湿気で髪の毛がくるくるになってしまうし、
ズボンの裾が濡れてしまって具合が悪い。

何より、、、
傘を使わないといけなくなる。

私の傘は、特別製だ。
子供4人くらいは楽々と入れるくらい大きくて、
軽くて丈夫な金属と、
ライオンが噛みついても破れない合成布で作られている。

そして、見た目がとてもいかつい。

こんな傘を12才の女の子に持たせるなんて、
どうかしている。
そう、私のお父さんはどうかしているんだ。
何かにつけて、
おかしな発明品を私に押しつけてくる。

私のパンパンに膨れ上がっているランドセルには、
通常の20倍の音が鳴る防犯ブザーや、
護身用のスマホ型スタンガンなんかが
たくさん詰まっている。

「はぁ」

ため息をついているうちに、バス停に到着した。
バス停には、クラスメイトの男子が一人、
雨に濡れながら立っている。

「ねぇ」

男子は反応しない。

「ねぇ、傘持ってないんだったら、入りなよ」

男子小学生 :「別に、いい」

私 :「いいから入りなよ。視界の隅にびしょびしょなのがいると、
うっとうしいから」

男子小学生: 「、、、そんな言い方しなくても、よくない?」

私 :私は、半ば強引に男子を傘に入れてあげた。

男子小学生: 「随分、大きい傘なのな」

私 :「有名だから、知ってるでしょ?
○うちのお父さんは、自称発明家だから、
変なものばかり持たされるの」

男子小学生: 「へぇ!この傘、手作りなのかよ!
すげぇなあ。
作るの、大変だったろうな」

私: 「え?」

男子小学生: 「ほら、このつなぎ目のところとか、
結構、複雑なつくりしてるし、、、。
っていうか、フツー、
傘を手作りしないし」

私: 「そっか」

男子小学生: 「お前、大事にされてるんだな」

私: 「、、、私が?」

男子小学生 :「うん」

私 :バスが来て、男子は去っていき、
入れ違いに、白いワゴンが停車する。
お父さんの車だ。


後部座席に乗り込んでから、いつものように、
私は頬を膨らませる。

「別に、迎えに来なくてもよかったのに、
傘もちゃんと持ってるし、
バスの定期もあるし、、、」

まだまだ文句は言えるんだけど、
これくらいにしておこう。

「でも、ありがとう」

○バックミラー越しに、お父さんが笑ってるのが見えた。



最後まで読んでくれてありがとー