コント中コント

舞台やや下手より、観客がパイプ椅子に座っている。上手側を向いている。時間を気にしているマイム。
観客「もうそろそろか……」

暗転。場面そのままで時間経過。

観客に加え、舞台やや上手よりに芸人Aと芸人Bが立っている。

コント「雪山」を始める。

芸人A「寒い。寒いよ……」
芸人A「もう無理だ……。眠い……」
芸人B「しっかりしろ!朝になれば必ず救助隊がくる!それまで持ちこたえるんだ!」
観客、身を乗り出してコントに集中している。
芸人A「眠い……」
芸人B「目を覚ませ!!」
芸人B、芸人Aにビンタする。
少し間をとる。
芸人A、怒りの形相で芸人Bにつかみかかる。
芸人A「何すんだこの野郎!!」
芸人B、ビビる。
芸人B「す、すす、すみません」
観客、過剰に笑いまくる。あまりに大きな声で笑うので芸人ABの動きもとまり、観客の方を気にする素振りをみせる。
芸人A、芸人Bの首元をつかんで揺する。
芸人A「やんのか、ああ?」
芸人B、観客の方を見る。
芸人B「……えー?こういうときのビンタってノーカンのやつじゃん。絶対そうだよ。おかしいよ」
芸人A「なにブツブツいってんだこらぁ!!」
観客、椅子から転げ落ちて笑いまくる。
芸人AB、観客の様子をみて少し笑ってしまう。
芸人B「すみません……」
芸人A「気をつけろ!!」
観客、変わらず食い入るようにコントを見ている。口もとを押さえて笑いをこらえている様子。
少し間をおく。
芸人A「眠い……」
芸人B「えー」
芸人B、ビンタをする場面だけどまたキレられたら嫌だなぁ、の演技。
芸人A「あー、眠い眠い」
芸人A「あー、眠いなあ!!」
芸人B、躊躇いがちにビンタ。
芸人A「何すんだこらぁ!!」
芸人B、また首元を掴まれる。
観客、笑いまくる。笑いすぎて苦しそう。
芸人AB、観客の反応に気を良くしてにやけてしまう。以降、にやけっぱなし。
芸人B「絶対誘ってたじゃーん。もー」
芸人A「うるせーんだよ」
芸人A、芸人Bを突き飛ばす。
少し間をおく。
芸人A「あー」
観客、爆笑。
芸人A「眠い」
観客、大爆笑。
芸人AB、観客をかなり意識している。
セリフごとに観客を気にする素振りをみせる。
コントが雑になる。
以降、観客は笑いっぱなし。
芸人B、ビンタする。
芸人A「いてぇ!!」
芸人A、芸人Bを突き飛ばす。
芸人B「なんでだよ!」
芸人A「うるせぇ!!」
芸人A「眠たい!!」
芸人B、ビンタする。
芸人A「いてぇ!」
芸人A、芸人Bを突き飛ばす。
芸人A「眠たい!!……あ、救助隊の人ですか?」
芸人A、後ろを振り向いて言う。

暗転。場面転換。楽屋での一幕。

舞台中央に芸人AB。
芸人A「いやぁ、めちゃめちゃウケたな」
芸人A「ここまでウケるとはな」
芸人B「ほんとにな。まぁ、お客さんは一人しかおらんかったけどな」
芸人A「今回ので自信ついたなー。そろそろ俺ら売れるんじゃね?」
芸人B「あ、スタッフの人からアンケートもらってきたんよ。読んだるわ」
芸人B『脚本が単調。演技力ない。ギャーギャーうるさい。コントなめてんのか』
少し間をあける。
芸人A「えー……。辛辣ぅー」

暗転


最後まで読んでくれてありがとー