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迎え入れたばかりの動物のトレーニング

Karen Pryor Academy ライブエピソード#26では、ケン・ラミレスが、牧場に来て6日目のキンダーゴート、ロディとドビー(生後3ヶ月半)を使って、新しい動物をどのようにトレーニングしているのか、その様子をご紹介しました。ケンは4回のトレーニングセッションを行い、彼らが数日のうちにどれほど成長したかを説明しました。ケンは、新入りの動物を訓練する際のアプローチについて、訓練計画を立てること、小さな見積もりを立てること、そして何よりも動物が快適で、成功するための準備が整っていることの重要性を語りました。

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トレーニングの順序

基本行動 実用的な視点
1. 接近と食べること
2. 後追い
3. ターゲット
4. クリッカー
5. ステーション
6. ターゲットを追う
7. 触る
8. 管理とハズバンダリー
9. キャプチャリング(動物が自然に行う行動をマークし、それを強化していくプロセスのことを言う。)

ケンは自身の本「Eye of Trainer」で上記の順番でトレーニングを始め進めていく事を推奨しています。

最初は快適に食べる事から

トレーニングはまず動物に快適に食べてもらう事、そして動物との距離を縮める事から始まります。クリッカーを教えるのはずっと先、行動を覚えてからとなります。とにかく、食べる、トレーナーと過ごす、後追いすることが楽しく快適に出来る様になるまでクリッカーを使いません。

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この2匹のヤギは人間慣れしておらず、もちろんトレーニングを受けたこともありません。カレン・プライヤー牧場(The Ranch)に到着して45分後最初のトレーニングセッションは、ヤギ用のパレットをカップに入れて手に持ち、ヤギに見せルところからです。しかし彼らは微動だりしません。

ケンはこの後、パレットをプラットフォームに少し撒き、この場を立ち去ります。まずは動物から距離を取り、果たしてどれほど離れる事で心地よく食べ物を食べてくれるのかを観察します。時には完全に動物の視界から外れる必要もあります。同じ空間にいる事が出来る様に、それから徐々に距離を縮めていきます。

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同じ空間にいて食べ物を食べてくれる様になると、少しづつ距離を縮め、最終的には手から、または手に持った器から食べてもらいます。

この時、腕を出来るだけ伸ばし、体は低姿勢で存在をできるだけ威嚇的でないようにし、ヤギが自ら近寄ってきて食べてくれるようにします。

それでも食べに来ない時は、そっと容器をプラットフォームの上に置いて様子を見ます。

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この2匹の生後3ヶ月半のヤギをトレーニングした時は、トレーナーの手から食べれるようになるまで1日半でしたが、非常に警戒心の強いアルパカは1ヶ月以上かかっています。少しでも驚かしてしまうと大きなステップダウンとなってしまうので、焦らず根気よく、少しずつ進めていくのが成功の秘訣です。

トレーニングセッションの長さ

トレーニングセッションの長さはだいたい1〜2分です。食べ物を食べてもらう練習では時間をかけて快適であるレベルを上げて行くので、長い時は15分ほどにもなる事がありすが、これは特別です。

ヤギの集中力は犬の集中力より短いですが4〜5分持続します。それでも1〜2分に収める様にします。10分のセッションを1回するより、2分のセッションを10回するほうが失敗なく集中してできるからです。

ソーシャルラーニング

牧場の新顔の2匹の山羊は一緒にトレーニングを受けます。臆病な動物は個別にトレーニングするより、自信をもって行動出来る個体を先頭にし行動の伝播を利用したソーシャルラーニングを利用ます。

では自信のある個体の方がどんどん積極的にトレーニングに参加し、臆病な方が遅れをとってしまうことにはどう対処したらいいのでしょうか。レベル差を解消するために、個別にトレーニングをする必要が生じるのでしょうか。

ケンは、たとえ個々のできる事に差が生じても、臆病な動物のためにはグループでトレーニングをするのが良いと言っています。これは遅れている方が進んでいる方の行動を模倣したり、一緒にいる事の安心感を確保するソーシャルラーニングの手法です。

積極的な個体の方が、ある特定の行動ができるとうになり次のレベルに移行できるで達成したとしても、積極的な方の練習を同じでベルで繰り返したり、持続時間を長くして待つ練習を加えてみたりして、遅れている個体がキャッチアップするのを待ちます。

トレーニングにネガティブな印象を入れない

キンダーゴートのロディとドビーが到着して4日目。ロディが咳をしていたので、急遽獣医の診察を受けることになりました。もちろんハズバンダリートレーニングなどしている時間はありません。こんな時は、トレーニングセッションと医療行為を完全に切り離す事です。場所も人も、動物がネガティブなイメージを持ってしまわない様に、医療行為はトレーニングをしている場所以外のところに移動して行います。

ケンはこの診療の30分後にトレーニングセッションを再開しています。そして診察はトレーニングに影響しなかったことを確認しています。

次のステップに行く進む判断基準

トレーニングで次のステップに進むかどうかを決めるのは、動物がどれほど快適にセッションに参加し行動していくかで判断します。つまり回数や時間ではなく、個々の快適なさによるので、トレーナーは動物をよく観察し判断することになります。

兎角、新しく迎え入れた動物のトレーニングは、その動物がどれほど新しい家で快適に過ごせるかにかかってきます。それが臆病な動物の場合、快適さはトレーニングをスムーズに進める大きな鍵となってきます。

環境に馴染む事がどれほど生き物にとってどれほど大切か。動物に関わる人には真摯に受け止めていただきたい重要な点でなのです。

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