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古典的条件付けとオペラント条件付けの交差

Karen Pryor Academy ライブエピソード#16は、リンジー・ウッド・ブラウン(Lindsiy Wood Brown)が古典的条件付けとオペラント条件付けについて語りました。

リンジー・ウッド・ブラウン(Lindsiy Wood Brown)は、動物行動学修士号を持ち、学会認定の応用動物行動学者(ACAAB)です。カレン・プライヤー・アカデミー(KPA)のコース開発者であり、2012年からKPAの教員を務めています。リンジーの目標は、行動コンサルタントやシェルターの専門家が、応用行動学を日常の活動に応用できるようにすることです。彼女が重視しているのは、レッテルを剥がし、一般的な考えを裏返してよく見えるようにし、戦略を進めるための体系的な方法に磨きをかけることです。

リンジーは、米国で動物保護施設のコンサルティングを行うほか、行動コンサルタントに1対1のメンターシップの機会を提供しています。これまでに、バージニア州のリンチバーグ動物愛護協会の運営ディレクターや、コロラド州ボルダーのHumane Society of Boulder Valleyの動物トレーニング・行動学ディレクターを務めてきました。

古典的条件付けとは

関連付けによる学習。なんの意味も持たない中世的な刺激(第一刺激)と、なんらかの意味を持つ別の刺激(第二刺激)を関連付ける事で、第一刺激で第二刺激で起こる反射的反応を引き起こす。

例えば、食器。これはもし食べ物が入っていなければなんの意味もない物体。しかしそこに食べ物が入ることで、この食器は意味を持つ。そして本来なら食べ物に対する反射的な行動(涎が出る)が食器を目にすることで引き起こされる。これが古典的条件付けです。

もっとも有名なのは、パブロフの犬。犬に餌を与える前にベルの音を鳴らすことで、次第にベルの音を聞くだけで唾液を分泌するという条件反射を作り上げた実験です。刺激に応答(respondent)するというレスポンデント条件づけとも呼ばれています。

オペラント条件付けとは

結果によって行動の頻度が変化する学習。行動の頻度が強化されるか弱化されるかは結果による。学習者は過去の学習経験から何をするかを選ぶ。

オペラント行動とは、その行動が生じた直後の、刺激の出現もしくは消失といった環境の変化に応じて、頻度が変化する行動をいう。

オペラント条件づけは、オペラント行動が自発的に行動された直後の環境の変化に応じて、その後の自発頻度が変化する学習をいう。

古典的条件づけとは異なり、オペラント行動には行動を“誘発する”生得的な刺激(無条件誘発刺激)は存在しない。オペラント行動では、生物が自発的に行動する。

拮抗条件付けによる攻撃性修正

拮抗とは、ある現象に対して、二つの要因が互いにその効果を打ち消し合うように働く作用の事です。その作用を条件付けに使う事で、負のイメージを持つものを全く違った好意的なものに変えるのが、拮抗条件付けです。

リンジーはこの拮抗条件付けを利用して、動物保護施設で一番問題となるフードアグレッシブ(食べ物への攻撃的執着心)の治療計画を立てました。目標は負の感情を反転させ、新しくポジティブな感情を引き出すことです。

これは刺激と刺激とをペアリングすることに特化し、動物の行動には一切触れることはありません。つまり動物がどんな行動をとっていようと、例えそれが望ましくない行動であったとしても。ひたすら刺激と刺激を関連付けることだけに専念します。

犬が食器に近づこうとする
  ↓
犬に食べ物を与える
  ↓
条件性情動反応(conditioned emotional response)が観察される

拮抗条件付けで、犬は食器を見ると頭を上げる反射行動をみせるようになります。

オペラント行動を成功の指標とした拮抗的条件付け

しかし拮抗条件付けだけでフードアグレッシブを100%解消できたわけはありませんでした。そこには自主的に食器から頭を上げると行動をひき起こすように、行動を強化する必要があったのです。つまり古典的条件付けをしながらも、同時にオペラント条件付けで行動を強化していく必要があることにリンジーは気づきました。

こうして学問上では全く別のものとして学び、実践でも異なる手法として利用されているこの二つの条件付け、古典的条件付けとオペラント条件付けは、実は動物の行動をに折り重なるように関係するものであり、これらの条件付けをうまく取り入れたトレーニングは至る所に見られます。

<練習例>
①テレビに登場する犬に吠える
テレビの前で犬が登場するたびにトリーツをあげる
ハンドターゲットをする→クリック+トリーツ
テレビから目を離してハンドラーを見る→クリック+トリーツ

②棒状の物を持っている人に過剰反応する
棒を見せ(持ち上げず置いておく)とトリーツをあげる
犬が棒を見たり、棒に近づいたら→クリック+トリーツ


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