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Click to Calm 過剰反応の対処方

Karen Pryor Academy ライブエピソード#37では、エマ・パーソンズが「クリック・トゥ・カーム」の方法論を通じて、刺激が多く注意が散漫になりがちな環境で犬に落ち着いた行動を教える手順を示しました。

Emma Parsons 略歴

エマ・パーソンズは20年以上にわたって犬の訓練に携わっており、反応的で攻撃的な犬の管理とリハビリを専門としています。エマはKaren Pryor Academy for Animal Training & Behavior (KPA)の教員であり、ClickerExpoの講師でもあります。世界中でClick to Calmセミナーを開催し、反応性の高い犬や攻撃的な犬を管理し、リハビリする方法を教えています。著書には「Click to Calm : Healing the Aggressive Dog」「The New Click to Calm」「Teaching the Reactive Dog Class: Leading the Journey from Reactivity to Reliability」あります。彼女はペットドッグトレーナー協会(APDT)および国際動物行動コンサルタント協会(IAABC)の会員です。

カレン・プライヤーとの出会い

アジリティーやオビディエンスに没頭していたエマは、自分の自慢のゴールデンレトリバー・ベンが、他犬に対して攻撃的であることに悩んでいました。その解決をドッグトレーナーに頼ることにしたのですが、プロングカラーを使用した嫌悪刺激を与える従来の治療法で、ベンの攻撃性は悪化してしまいます。

ベンの攻撃性の対処を探って、エマはその後たくさんのセミナーに参加ました。そのなある日、エマはカレン・プライヤーに出逢います。縋るようにカレンに助言を求めたエマが得たのは、衝撃的な答えでした。

「Just Click」クリックすればいいのです。

その言葉を理解できず、何にクリックすればいいか戸惑うエマに、カレンは続けます。「あなたの犬は呼吸してる?ならそれにクリックすればいい。」これがシェイピングの基本であり、エマはクリッカートレーニングに目を向けることになりまし。

その後エマはクリッカートレーニングを使って、ベンの攻撃的な行動を鎮め、変化させ、再構築するための革新的で効果的な方法を開発し、「Click to Calm」を執筆することになります。

新しいメソッド 「動き」と「距離」

2021年にエマは「New Click to Calm」を出版しました。手順は15年前に紹介されたものをほぼ同じですが、この本は攻撃的な犬だけでなく、全ての犬に応用できる内容になっています。

も一つの改正点は、手順に動きを加えたこと。「動き」は犬にとって強化子になり、動いて距離を取ることでその「距離」も強化子になるのです。

Click to Calm手順

手順は3ステージに分かれています。ここに記述された手順とともに、ぜひデモを動画をご覧ください(30:12~40:30)

<用意するもの>

  • トリガー(刺激)となるもの 

  • マット2枚(長いものと、小さいもの)

  • トリーツ

  • クリッカー

  • リード・ハーネス

<準備>

  • マットは移動する場所の目安になります。長いマットが用意できなくても、小さいマットを設置し、どこまで移動すればいいかを可視化しましょう

  • トリガー(刺激)となるものは、実生活では犬であったり自転車、車、スケートボード、人なのでしょうが、練習では犬が気を取られてしまうもの(食べ物)を用意します。

◆ステージ1

  1. トリガーになるものを床に置きます

  2. 犬にはリードを付け、トリガーに近づき反応したらクリックし下がります。

  3. これを繰り返し、反応が起こらない距離(ボーダーライン)を確認します。トレーニングは必ずボーダーラインの手前で行います。

◆ステージ2

  1. ボーダーラインの手前で犬と立ちます。

  2. トリガーを確認した犬がトリガーから目を離しハンドラーを見たらクリック

  3. 目安に敷いた小さいマットまで素早く下がります。

  4. マットの上でゆっくりトリーツを5つあげます。

◆ステージ3

ステージ2を繰り返し、トリガーがキューになってハンドラーを見ることができるようになったら、犬がすでに知っていて簡単にできる行動のキューを出してやってもらいます。

ステージ 1の重要性

この手順で重要になってくるのは、トリガーを確認してハンドラーを見るという「犬の自主的な行動」です。ハンドラーのキューによって犬がハンドラーとアイコンタクト取ることは容易にできるので、いきなりステージ2から練習にはいってしまう間違いを犯しがちですが、必ず犬がトリガーを確認し行動を起こすことから始めてください。

これはのちに、お散歩中に近づいてくる犬、自転車等に反応してハンドラーを見てバックアップするという犬の自主的な行動を導きます。

Click to Calm が導くもの

犬の自主的な行動を促すことによって、トリガーに対し過剰反応を示すのではなく、トリガーを確認することで考える犬にすることが目的です。ハンドラーによる制御ではなく、犬が自ら行動することで過剰反応を防げるこの方法は、ハンドラーにとってもストレスフリーになるのではないでしょうか。

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