子犬の社会化
ここでは、Karen Pryor Academy ライブエピソード#3でデビー・マーティンが語った子犬の社会化についてまとめました。
デビー・マーティン(RVT、CPDT-KA、KPA CTP、VTS(行動学)
オハイオ州立大学で人間生態学の理学士号を、コロンバス州立コミュニティカレッジで獣医学技術の応用科学修士号を取得しています。1996年からフルタイムの獣医技術者として活躍しており、動物行動学の分野にも積極的に取り組んでいます。マーティンは、テキサス州オースティンにある移動式獣医療サービス「Veterinary Behavior Consultations」の動物行動学技術者であり、動物行動障害の予防と治療に限定して業務を行っています。また、夫である獣医行動学者のケネス・マーティン博士を補佐して、家庭での行動相談を行っています。
マーティンは、カレン・プライヤー・アカデミー認定のトレーニングパートナーであり、2009年から2016年まで、ドッグトレーナー・プロフェッショナル・プログラムのKPA教員を務めています。
2009年、マーティンと彼女の夫は、犬の発達とトレーニングに関する書籍『Puppy Start Right: Foundation Training for the Companion Dog』を出版しました。また、カレン・プライヤー・アカデミーのコース「Puppy Start Right for Instructors」の著者でもあります。マーティンは、教科書「Canine and Feline Behavior for Veterinary Technicians and Nurses」の共同編集者であり、寄稿者でもあります。
コロナ下でもできること
コロナが蔓延し、外出自粛が続く中、迎えた子犬の社会化をどのように進めればいいのか。リアルで他の犬に会うことができない、人に会うことができない。これでは子犬の社会化は進まないと飼い主を心配させています。
他の犬と遊ぶこと、沢山の人と出会うこと、これは子犬の社会化においてほんの一部分であり、すべてではありません。社会化とは何か?社会化とはさまざまな刺激を経験し、生活上で起こりうることを学んでいくことです。
例え外出ができなくても、家庭内でも様々な新しい刺激を経験することができます。物だけでなく、音、そして匂い、飼い主が選んで触れさせることができる状態である故、新しい刺激にポジティブに触れ合う調整が可能です。
様々な刺激を経験するには
新しい刺激に触れるのは近距離である必要はありません。例えば、車に乗って出かけ、スーパーマーケットの駐車場に車を停め、その車中からでも様々な人の動きを見ることは出来るし、音や匂いも把握しきれないほどの刺激が流れ込んできます。
そんな刺激に触れながら、犬と車中で「ロックオン・オフ Engage and Disengage Game」の練習をしてみるのは、これをいきなり路上を歩きながら練習するよりはるかに管理しやすく、トレーニングのとてもいいスタートとなるはずです。
自宅でのトレーニングは、飼い主自身が、服装や付ける化粧品を変えて犬に接してみるだけでも様々な経験を与えることができます。またごっこゲームにように、家族で役割を決め、来客を装って玄関から入り、来客へのアプローチの仕方を練習することも可能です。これらの練習はいきなり本番を迎えネガティブな経験をすること避けることにも有効です。
ポジティブな経験を積み重ねる大切さ
子犬の社会化でとても重要なのは、ポジティブな経験を少しづつ積み上げる事です。そうすることで、犬が自信を付けこれから起こる様々な未知の経験に落ち着いて対処できるようになっていきます。これはネガティブな経験を修正するトレーニングよりはるかに簡単で楽しいトレーニングです。
飼い主が経験を積み練習する機会
子犬の社会化では子犬ばかりに焦点を当てがちですが、実はオーナーが犬のボディランゲージを理解し、管理や設定の学習をする事も大切な課題なのです。コロナ下でなくても、クラスルームでは個別にレッスンをしています。例えば、水遊びの準備をし子犬を迎え入れたとして、その時例え子犬が水に入らなかったとしても、そこにいるだけで数々の経験を積むことになり、子犬が水遊びをしたかどうかがそれほど重要ではありません。大切なのは、子犬が新しい環境で確実にポジティブな経験を得る事と、そのための飼い主の配慮です。
フィギュアを使っての練習
「実際に犬に会えないのに、どうやって犬と接触する練習をすればよいのか?」コロナで外出が出来なくなった今、一番多く寄せられる質問かもしれません。しかしデビー・マーティンはこれも子犬の社会化の第一歩にはとても有利だと語っています。
彼女はぬいぐるみを使っての練習をすすめています。ある程度の距離から見知らぬ犬と仮定したぬいぐるみに近づいていきます。その時、どのくらいのスピードで近づけば良いのか、どの地点で子犬の集中を犬(ぬいぐるみ)から離し自分に向けるか、リードをどのように使うか、犬(ぬいぐるみ)へのアプローチの仕方など、さまざまな練習が落ちついてできるのが利点です。このような練習を十分自宅で繰り返してからの実践でも決して遅くはありません。
子犬の社会化に社交力はそれほど重要なものではありません。ポジティブな経験を積み重ね、自信を築く事で社交のセンスは自ずと磨かれるはずです。
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