A new life for me

竹箒で路地を掃く
シャッ シャッ
という微かな音で
目を覚ます。

夜明け前の薄明かりの中で
布団を畳み
歯を磨き
髭を剃る。

窓辺にならんだ鉢に霧吹きで水をやり
作業着をきて白いタオルを首に巻き
靴箱の上にキチンと並べた
鍵や小銭やガラケーを
順にポケットに入れる。

古びた二階建てアパートのドアを開け
白みはじめた空を仰いで一瞬
嬉しそうに微笑む。

アパート前の自販機で
甘いコーヒーを買い
掃除道具でいっぱいの青いバンに乗って
一気に飲み干す。

狭い路地をでて高速に乗るころには
朝日がスカイツリーやビルを染めはじめ
お気に入りのカセットテープをいれる。

今朝選んだのは
The Animalsの
“House of the Rising Sun♪”だ。

渋谷の公園につき
公衆トイレの掃除をはじめる。
手鏡で便器の裏までも確認しながら
拭くのではなく磨く。

お昼は神社の境内のベンチで
三角サンドとコーヒー。

大きな楓の木漏れ日を見あげて
年季の入ったフィルムカメラで
一枚写真を撮る。

楓の根本に実生を見つけ
通りかかった住職に目で許可をとり
新聞紙で使った小さな箱に入れて持ち帰る。

トイレの壁にはさんであった紙に
ユーモアたっぷりのメモを残して
仕事を終える。

自転車で銭湯にいき
飲み屋に立ちよれば
「おつかれ!」の声とともに
焼酎と漬物が出てくる。

古本屋で
100円均一のワゴンから
一冊を選ぶ。
今日は幸田文の『木』だ。
昨日はパトリシア・ハイスミスの
『11の物語』だった。

アパートに戻り
ギシギシいう階段を上って
寝室に布団を敷き
老眼鏡をかけて文庫本を読む。

眠気が襲ってくると眼鏡をとり
布団に仰向けになり天井を仰ぐ。
昼間見た木漏れ日が
瞼の裏でゆらゆらと動き
眠りにつく。

竹箒で路地を掃く
シャッ シャッ
という微かな音で
目を覚ます……

こんなふうに
穏やかにくりかえす日々。

変わらないルーティンの中で
役所広司演じる主人公・平山は
決して寂しくもなく退屈でもなく

壁際に几帳面に並べられた
たくさんの文庫本とカセットテープのように

押入れに積まれたたくさんの缶の中の
1枚として同じものがない
モノクロの木漏れ日の写真のように

かけがえのない時間を優しく確かに受けとめて
彼の環世界を豊かに満たしているのです。

その無口な男の佇まいの
なんと美しく清々しいこと。。。

またまたヴィム・ヴェンダース監督に
やられましたわ(^◇^;)

劇場から出たあとも耳に残る
ニーナ・シモンの“Feeling Good”

“It’s a new dawn
It’s a new day
It’s a new life for me
And I’m feelin’ good”

新しい夜明け
新しい1日
新しい私の人生
ああ、なんていい気分🎵

こんなふうに
生きていけたなら

こんなふうに
生きていきたい

そんなキモチに包まれる映画に
年の初めに出逢えたことに感謝。

どうぞステキなa perfect dayを
お過ごしくださいね💕
#perfectdays #wimwenders #役所広司さん #インストラクショナルデザイナーよしりんの海街日記

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