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私は走った。
昨日、大切な人と大事な話し合いをした。私たちは一つの結論を出した。ひとまず据えたそのマイルストーンに向かって、これから私たちは生きる。

翌朝。私は走った。渡ろうとした信号が点滅し始めたから。走って渡り切った。渡り切ったが、私は走ることをやめなかった。やめたくなかった。突き抜けたくなった。

私は走る。速度を上げる。私は確かめたかった。走って、走って、そのあとに残るものは何なのかを。私のスピードについていけずに、私から落ちていく思いや身体や言葉を置き去りにして、最後に残ったものが、私なんだと、確かめたかった。

通り過ぎていく、見慣れた景色や人々。抽象絵画の世界を私は走り抜ける。
よりたくさんの空気を吸うために、大きく口を開けて世界にかぶりつく。

走り切って、終に残ったものは何だったのか。

動悸、息切れ、疲労感、高揚感、多幸感。

私は満ち満ちた。カーブミラーに映る私が笑っている。そうか、私は笑っているのか。残ったものに満足しているのか。

走ることを嫌って、ひたすら歩くことに執着していた私。いつのまにか、小さく動く身体にあわせて気持ちも縮こまっていた気がする。
走って、身体を大きく動かして、私も知らない行きたいところへ近づいていく。嬉しそうに全身が弾ける。気持ちも弾む。

雨が降ってきた。濡れながら、私は肩で息をする。久しぶりの解放感に身体が今も喜んでいる。落ち着く様子はない。 

私とあなたが一緒にいられる日は限られている。残る日にちを指折り数えてため息をつくのではなく。前を向いて、終着点で私たちが笑っていられるように、そのためにまた私は一生懸命走らなくては。

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