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2021年おすすめ図書

 新月を迎える日に毎月開催している『新月のKIRTAN』は今年で10年目。2022年初回は1月3日、zoomのみの開催にしました。前年が緊急事態宣言の只中で、年末年始に帰省できない人も多かったといいます。今回いつものように会場での集まりもできたと思いますが、お正月三ヶ日は家族や友人とゆっくり過ごしてもらえたほうがいいかな〜と。当日は予想していた以上に帰省先からの参加が多く、あらためてオンラインのメリットを感じたのでした。なんでもかんでも画面の中では寂しいですが、必要な時には、このようにお互いのため役立てていけたらと考えています。

 で、終了後はいきなり第二部として、昨年読んだおすすめしたい数冊を本棚から抜き出し紹介させてもらいました(こうしたゆるい展開もオンラインならではでしょうか)。

 この日に限らず、おすすめ図書はたびたびお伝えしている気がします。家族の影響で子どもの頃から本が好きでした。僕が考える読書のいいところをいくつか上げると、自分のペースで進めること、想像力を刺激してくれること、国、歴史を問わず多様な知見やアイディアに触れられること、世界の広さを教えてくれること、そして、立ち止まらないと読めないこと。

 スマホ時代、望みもしない速さや量の波に巻き込まれそうになる時があります。家に帰り、丁寧にコーヒーを淹れて、好きなレコードなぞかけて、ページをゆっくりめくるひと時は、僕にとってご褒美のようなチルアウトタイムです。

 大人になり、出版に携わる友人たちとの出会いから、一冊が書店に並ぶまでのプロセスについて少しだけ知ることができました。ほとんどが、立案、企画から数年をかけて上梓され、その裏では実現できなかったものも少なくないといいます。そうまでして分かち合いたい作者の想い。特に名作、名著と呼ばれるものは、文字以上に迫る「何か」が感じられるという意味で共通しています。 

 一例を上げましょう。『人生論ノート/三木清・著』は第二次大戦中に書かれたもので、治安維持法を犯したという罪で不当に投獄されながらも、表現を出来うる極限まで工夫し、人はいかに生きるべきかを言葉として残しました。三木の最期は獄中で病死、人生論ノートがベストセラーになったのは死後のことです。僕の爺さんと同世代、歴史でいえば今からほんの少し前。日本をよき国にするため生命をかけた人がいて、その言葉を今日も受け取ることができる。本にはそのような力があるんです。

 ここでは新月に紹介したものと、終了後、紹介しておけばよかったと思ったもの、10冊をセレクトしました。タイトルをクリックすると商品ページに飛べるのでご参考に。よかったらページをめくる旅にお役立て下さい。 

① エレガント・シンプリシティ/サティシュ・クマール  
多大なる影響を受けているサティシュの最新刊。翻訳は敬愛する辻信一さん。各ページ、詩のように美しいことばが語りかけてくる。

② 土偶を読む/竹倉史人
  
ご本人と一昨年お話しする機会があり刊行を楽しみにしていた一冊。出版後じわじわと注目を集め、年末にはサントリー学芸賞、みうらじゅん賞を受賞。帯は養老孟司さん。凄い。

③ Humankind 希望の歴史(上・下)/ルトガー・ブレグマン  
性善説(人の本性は善である)を徹底的に検証。上下巻を前に若干ひるむも、最後のページを閉じたときは短く感じられたほど。読後に胸を包む希望感、半端ないって。

④ ポストコロナ期を生きるきみたちへ/内田樹・編  
タイトルの通り、コロナ以降を生き抜くために。主に中高生に向けられたメッセージだが、大人の心にも響く。どう生きたいか。自分の頭で考えるヒントに。

⑤ 「読む」って、どんなこと?/高橋源一郎    
特に強力におすすめしたいのは「学校では教えない文章を読む」の章。NHK出版でこの内容、素晴らしい。タブーってなんだろう。どこから来るんだろう。

⑥ 日本語とにらめっこ/モハメド・オマル・アブディン  
スーダンから来日した全盲の青年の語学習得記。努力しだい、自分しだいで何でもできそうな気がしてくる。アブディン氏は駄洒落のレベルもネイティブ並み。

⑦ 心と身体を癒やすための7つの方法/EIKO(渡辺 英子)  
キールタン仲間、翻訳のサポートもしてくれている英子さん満身の一冊。壮絶な生い立ちを愛に変えていく実践と、人生訓の側面も。

⑧ 菌の声を聴け/渡邊格・渡邊麻里子  
自家製酵母と国産小麦のパン屋さん「タルマーリー」社長ご夫婦によるチャレンジの旅。そこらのファッションパンクロッカーよりずっとパンクだと思う。

⑨ 料理と利他/土井善晴・中島岳志  
友人サトケンに薦められた一冊で、政治学者、歴史学者の中島さんと料理研究家土井さんの対談。自分の中にもあるやさしさに、やさしく気づかせてくれる。

➉ 日本人のための大麻の教科書/大麻博物館  
古から日本人の暮らし、神事と密接に結びついていた植物は、敗戦後GHQの政策により自由を奪われた。一方、米国では合法化が進み今や巨大産業に。歴史は何を語るのか。

 トップ画像はある日の自宅トイレ窓際本棚。ここは新刊、読み返したい本を入れ替えつつ。「RELAXなラインナップじゃないよね…」とは友人の便。じゃなくて弁。

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