静かに

通勤途中の道にある生垣に一羽のカラスがいた。完全に静止しており、瞳にさえ動きがなく、剥製と見紛う程だった。
そのカラスを僕は歩きながら一瞥したものの、動かれると怖いのですぐ目を離した。カラスは変わらずそこにいる。僕はカラスに敗北した。

僕もあのカラスのように不動を貫きたい。あんなにも不動でいられる人間はそういない。人は絶えず忙しなく動き回り、四六時中何かをしていないと気がすまないようになってしまった。
そうしていないと死の恐怖に塗りつぶされてしまうからだと思う。

何もしない。何もする必要はない。ただ黙って時間の流れを見つめていればよい。焦りも不安も必要はない。恐れても泣いてもどうせ死ぬ。

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